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 針穴写真との出会いから10年、この間パリの名所旧跡やショーウィンドーを撮影するかたわら、パリのマルシェで見つけた野菜や果物を少しずつ室内で撮りためてきました。

 屋外での撮影と違い、一枚の撮影に約30分を要する長時間露光で、
* 17世紀に「カメラ・オブスキュラ」を使って描かれたという静物画が放つ光を再現できないか?
* 人間の眼でもカメラのレンズでもない、針穴でモノを黙視することで表現されるものは何か?
といった関心を抱きつつ制作しました。

 なお、より良い画質を得るため、暗箱は8x10インチの中古の大判カメラを改造し使用しました。暗箱も館内に展示していますのでご覧ください。

 今回の展覧会も社団法人日本写真文化協会にご後援をいただきました。
心よりお礼申し上げます。

                                                        田所美惠子


カメラ・オブスキュラとは、本来ラテン語で暗い(オブスキュラ)部屋(カメラ)という意味ですが、今では転じて暗箱と訳されます。
小穴から暗い部屋に入った光が、壁に倒立した像を描き出す現象(針穴の原理)を利用すると、正確な透視図を描けることから、ルネッサンス期以降、画家たちはこの暗い部屋を小さな装置-カメラ・オブスキュラ-にし、スケッチの補助道具として活用しました。
ただし、実用上は明るくするためにレンズが取り付けられていたといわれます。まさに19世紀に誕生した写真の暗箱の前身ともいえるものです。英語で写真機をカメラと呼ぶのは、カメラ・オブスキュラに由来しているためです。
針穴(ピンホール)写真は、暗箱からレンズを取り去り、限りなくカメラ・オブスキュラの原点に近づけたものです。開口部が極めて小さいため露出に長い時間を要し、また光が集中されていないことからピントが甘くなりますが、逆に一般のレンズ付きカメラには無い「無限遠の被写界深度」や「無収差」という特徴が得られます。

パリのマルシェから
凝視するカメラ・オブスキュラ
2000年5月10日(水)〜5月16日(火)
コダックコダックフォトサロン銀座
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY