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 大股で、急速に進歩を遂げることを「巨人の歩み」と表現するが、映像の世界では1839年の写真誕生をきっかけに、映像記録技術が巨人の歩みを記したことは周知の通りである。

 デジタルカメラまでの写真の足取りが巨人の歩みなら、ピンホールカメラはまさしく「小人の歩み」である。暗い部屋で外の景色をさかさまに見ることができたとしても、それを手でなぞる以外は記録することなどかなわぬ夢でしかなかった紀元前からあまり進歩が無い。ピンホールカメラの、のろのろと、遅々として進まない技術。そして小さな開口部から少しずつゆっくりと取り込まれる光。スローなローテクである。

 ガリバーは巨人の代名詞のように使われるが、スウィフトの「ガリバー旅行記」では小人となったガリバーも登場する。小人のガリバーは、ピンホールカメラの暗箱の中に自ら入って撮影できるほど十分小さい。自分の身の丈に相応しい、1ミリの何分の一という微小の穴から覗いた世界。急がなくてもいい。小人の歩みで矮小な世界を眺めるのも、そう悪くは無い。

 展示の作品は、1995年にパリ近郊のサンカンタン・アン・イヴリーヌにあるミニチュアパーク「フランス・ミニアチュールFrance miniature」と2002年に鬼怒川の「東武ワールドスクウェア」で取材したものである。

                                                   田所美惠子

小人の歩み
2つのミニチュアパークより
2003年5月7日(水)〜13日(火)
コダックフォトサロン(銀座)
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY