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針穴写真を長年撮り続ける中で、「針穴写真にしかできないこと」を探し求めてきた私は、縮小された世界に早くから着目してきました。1995年にはフランスのミニチュアパークを撮り始め、4年前に作品として発表しました。では、私はなぜ縮小世界に興味を持つのでしょうか? それは、縮小世界が、針穴写真の魅力を余すところなく伝えることができる、絶好の被写体だと考えるからです。

一年余り前に三浦宏氏のすばらしい作品と出合い、私は再び縮小世界に取り組むことになりました。しかも今回は、三浦氏の特別な計らいで、作品の内部にまで入れていただいて撮り下ろすことができました。一葉の小説の舞台と、もはや失われてしまった明治の時間と空間を、匠の技と豊かな想像力で甦らせた三浦氏の小宇宙。それは、縮尺20分の1の精巧な造作だけでなく、そこに宿る光と影、そして一葉の人生や明治の女たちの息遣いまでも内包しています。

そのような三浦氏の作品は、それだけで三次元の芸術作品です。しかし、三浦氏の木を愛でる心、そして一葉に対する想いの深さを知れば知るほど、私はこの作品を縮小世界ではなく、等身大の世界として二次元に置き換えてみたいという気持ちをますます強く抱くようになりました。それを実現するには、針穴写真だけに許されたパンフォーカスとソフトフォーカス的な描写という特徴と、小さな部屋に入ることができる手作りの缶カメラが不可欠だったのです。

一葉に会いたくて、、、三浦宏氏が拵えた一葉の世界を、針穴写真を介して、より一層身近に感じていただけたら嬉しく思います。撮り下ろしにあたり、貴重な作品を長期間にわたりお貸し出しくださった三浦宏氏と、全面的なご協力をいただきましたポーラ ミュージアム アネックスの皆様に、心よりお礼申し上げます。

                                                                                                  田所美惠子
田所美惠子針穴写真展
一葉に会いたくて
檜細工 三浦宏が造った物語
一葉に会いたくて チラシ
2007年5月2日(水)〜5月29日(火)
ポーラ ミュージアムアネックス 銀座
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY