statements
静物といえば私たちは16-17世紀のフランドルやオランダの絵画を
真っ先に思い起こします。その精密な描写によって、それは
「写真的な絵画」とよばれます。一方、レンズとは異なり、ぼんやりした
描写が身上の針穴写真は「絵画的な写真」といわれます。
果たして針穴写真の静物は絵画のように見えるのだろうか、
静物はモノクロではどうだろうか?といった好奇心から静物を制作しました。
数十分間の静寂を経て、静物は微小の穴を通して暗箱の中に甦りました。
静物はまた、アトリエの閉じられた空間にだけ成り立つものでは
ありません。例えば、街のショーウィンドーの中の陳列物を
静物として見做すこともできます。
とはいっても「正統的」な室内の静物と比べると、この「フレーミングされた」静物は、私たちが直接手で触れたり、相応しい背景やちょうど良い光を、
よりよい演出のために選んだりする自由を奪っています。
そればかりか、現像したフィルムは驚きに満ちた映像を写しだします。
陳列物の実際の背景とは全く関係のない、私の背後に広がる都会の景色です。
ファインダーのないカメラではなおさらのこと、結果はつねに予測不能です。
一時的に置かれた陳列物の実像と、堅固で持続的な建物を反射する虚像による
継ぎ目のない組合せは無限にあります。視点を定めて切り取られた
ショーウィンドーの中の静物はこのように、写真が拠って立つところの
遠近法を完璧に示しています。
美食と映像の都、リヨンに敬意を表し、食にまつわる画像を選んで展示します。
田所美惠子針穴写真展 『ヴィ・シランスューズ』静物 "Vie Silencieuse" |
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May.21-Jul.4 2015 | |
GALERIE 48, Lyon (France) | |