エッフェル塔三十六景といえば、フランス人画家アンリ・リヴィエールが
日本の浮世絵に心酔し、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に倣って
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世紀末に制作した版画がよく知られています。

今の時代、被写体としてのエッフェル塔は少々見飽きられた感もありますが、
パリにはいまだにエッフェル塔を覆い隠すほどの高い建物もなく
リヴィエールの時代と同じように街の中にその存在感を示し続けています。

針穴写真を撮る私にとって、エッフェル塔は出発点であると同時に
その後の作品制作の指標となるモニュメントでもあります。
針穴カメラは缶に穴を開けただけの簡素な作りでファインダーがなく
どのように写っているのかは現像してみなければわかりません。
試行錯誤が要求されるため暗室の近くで同じ被写体を相手に撮影を繰り返します。

針穴写真を撮り始めた頃、私が住んでいたのはエッフェル塔に程近い場所。
被写体としてとくにエッフェル塔が好都合だったのはその高さです。
どこからでも見えるからという理由だけでなく、至近距離から狙って
天辺まで写るようにするにはどのようにしたらよいかと工夫を重ねられたからです。
針穴写真は橋の手すりの落書きやショーウィンドーの土産物を凝視しながら
グローバル時代のランドマークを近くも遠くも同じピントで映し出します。

今展では1990年初頭から現在まで約四半世紀にわたり撮りためた
エッフェル塔の針穴写真36点を展示いたします。
また、リヴィエールの時代の雰囲気を色濃く残す、隠れたパリの観光名所
「パサージュ」を撮影した針穴写真も同時に展示いたします。

田所美惠子針穴写真展
針穴的エッフェル塔三十六景
2016年4月2日(土)~4月24日(日)
JIKE STUDIO 横浜
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY

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