平成18年度の医療保険制度の改正で、認知症に対するデイケア制度が見直され、妻が通っていたIクリニックの運営するデイケアセンターの経営が成り立たなくなって閉院となった。このため月、木、土の3日間を介護保険制度のデイサービスに切替え、やっと落ち着いたのが、8月初めである。8月に入ると今度はケアマネージャーが交替し、持ち込んで来た難題はヘルパー派遣ができなくなると言うことである。よく話を聞いていくと「同居者がいる場合、食事や掃除などの家事支援では、介護保険の適用ができなくなった。」とのことである。
介護保険の利用で利用者にとって、融通性があり最も利用しやすいのはヘルパー派遣であるが、年々制度が改正され、その度毎に利用に対する制限が加わり、利用範囲がどんどん狭められてきている。例えば17年度は1回の利用時間の制限が厳しくなったり、利用者にとって最も価値のある散歩が保険の適用外になった。また18年度は同居者がいる場合の家事支援(掃除、洗濯、炊事など)が保険適用外となった。
 |
保険制度の適用は利用者本人に対するものであることは間違いないが、その裏側の目的は家族(介護者)に一時の手代わりがなされることによって、その間、家族が介護から解放されることである。即ち、介護保険の申請をするのも、またその利用を申し出るのも一般的に本人が行うのでなく、その家族が必要とする介護の一部を手助けして貰うために、行っているのである。
介護保険制度によって得られるサービスには「ヘルパー派遣サービス」「デイサービス」及び「ショートステイサービス」などがある。「ショートステイサービス」は宿泊を伴うものであり、利用するとしても一般に1年に1度利用するかしないかのサービスである。デイサービスは通所型のサービスで、決められた時間内のサービスを受けることができるが、曜日を決めて半固定的(期間単位)に利用する必要がある。それに対して、ヘルパー派遣は勿論曜日を決めて、半固定的な利用もできるが、基本的に利用日及び時間帯を指定して利用できる、柔軟性のあるサービスである。また継続して利用する場合には、ヘルパーを固定することができ、手慣れた人からマンツーマンのサービスを受けることができので、利用者にとっては最も利用価値のあるサービスである。
妻がヘルパー派遣サービスを受けるようになったのは平成15年度からであるが、週2日間(火、金)基本的に4時間の派遣をお願いし、買い物を兼ねた散歩、掃除、炊事及び歌(童謡)、ぬりえ、字を書くこと等のケアをお願いしていた。また月の内、第1金曜日及び第2火曜日には同好会の集まりに出掛けるので、1時間多くお願いすることで、5時までの会合に問題なく参加することができていた。しかし、平成16年度になり、1回当たりの時間制約を受け、5時間のサービスは受けられなくなり、そのため会合も最後までおられず、4時で途中退席して来なければならなくなった。また平成17年になると、散歩が保険対象から外されたため、散歩のための1時間は自費払いとして対応して貰うことになった。
ヘルパー派遣の作業項目は大別して、「身体介護」と「家事支援」があるが、平成18年度から同居家族がいる場合、家事支援は保険の適用外となってしまった。これによって従来、火、金曜日の午後はヘルパー派遣で、支援を受けていたが、これの代替えとしてはデイサービスしかなく、金曜日はデイサービスに変更し、火曜日については月2回の自費ヘルパー派遣に変更した。費用としては従来ヘルパー派遣の際、散歩のために1時間(月8時間)を自費で支払っていたので、この分を当てることにした。
この結果、何とか従来と同様に月4回の同好会活動への参加は可能となったが、サービスという点からすると大きな変化が起きている。基本的に火曜日の月当たり4回が、月2回に減ってしまった。被保険者である妻からすると月8回、ヘルパー派遣による在宅で受けられていたマンツーマンでのサービスが月2回と1/4に縮小されたことである。その代わりに今まで週3回であったデイサービス通いが週4回に増える結果となった。
一方、介護者が受ける恩恵の低下も大きい。従来、ヘルパー派遣の際、夕食も作って貰っていたので、月8回は夕食作りに頭を悩ますことはなかったが、月2回(自費によるもの)となり、殆ど毎日食事の心配をせねばならなくなった。また、掃除についても週2回の割合で行って貰っていたので、普段は殆ど掃除をしなくて済んでいたが、2週間に1度の掃除では済ますわけにはいかず定期的に掃除をせねばならなくなった。
費用面でも3時間の派遣費用とデイサービス1日の費用を比較するとデイサービスの方が高くなる。更に細かく言うとデイサービスでは昼食代やその他個人負担費用が掛かるようになった。恩恵面では可成り低下にもかかわらず、費用面では負担増となった。
介護保険はその介護度によって利用できる点数枠が、決められている。当初はその枠内での利用者側にサービスの選択権があったが、現在は殆ど選択権がなく、色々と利用面での制約から点数枠があっても無用なものとなっている。また、介護度が上がれば、点数枠は増えるが、利用領域が増えるのでなく、利用範囲がシフトしてくるので、結果的に点数枠の増加は余り意味のないもののように思われる。
介護保険制度の毎年の改正は利用者に,、よりよいサービスを提供するためのものでなく、利用に色々と制約をつけて利用を如何に少なくし、保険料の支払いを少なくすることを目的としている。利用できる点数枠を与えておきながら、利用し過ぎであるとか、サービスの魅力を無くして、利用したがらないようにしようとする発想そのものがおかしいのである。利用できる点数枠を見直す。しかし、サービス内容の選択は利用者に選ばせる。このようにした方が利用者は利用枠の中で、よりよいサービスを求めて選択ができ、制度の有難味を感じるのではないだろうか。 |