04外遊帳 05 冬 05 春 05夏 05秋 06冬 06春 06夏 06秋 07冬 07春 07夏 07秋 08冬 08春 08夏 08秋 09冬 09春 09夏 09秋 10冬 10春 10秋 11冬
9月某日 キノコこのひと月更新をさぼっている間に、記録的な猛暑に襲われた北海道も、随分と涼しくなった。キノコはラクヨウを探しに2度ほど、林を見てきたが、出だしたばかりであったのか、ほんの少ししか手に入れることができなかった。 キノコは、何か存在感がある。 ラクヨウはいまいちだったが、知り合いからハタケシメジを何度か貰ったり、ボリボリの大群を発見したりと、秋の味覚を楽しんだ。 ボリボリの味噌汁は最高だ。いい出汁がでるのだろう。 けれど、たくさん食べすぎるとよくないらしい。私もちょっと腹の調子が悪くなった。消化が悪いのだろう。 柄の部分をとるとよいとも言うが、なんともないという人もいる。 まつさんとキノコを採りに行ったついでに、ニジマスを釣った。 9月12日 娘と魚とり妻が休日出勤だというので、私は子守り。娘と一緒に、魚を捕りに出かけた。 3歳の娘は、初めての魚釣り。 テラピアやウグイを釣って遊んだ後は、水槽で飼うグッピーに似た魚をすくって持ち帰った。 スジエビも入れたが、いつまで生き残ることやら。 ちなみに、数年前に大量に捕ってきた魚たちの中で、最後まで生き残ったのはテラピア。 そのテラピアの稚魚が一匹だけ紛れ込んでいたが、こいつがでかくなれば、グッピーも水草も全て食べてしまう。 数日たった現在、すでに6匹の魚が死亡。エビは勝手に脱走して残り1匹。 生き残りレースのスタートだ。 9月5日と、11日 山女を釣りに2週にわたって山女を釣りに行った。5日は夕方2:30から4:30までの2時間で60尾ほど釣れた。細い枝川で次々と釣れたがサイズが小さかった。河原の砂地にクマの足跡を発見した。小さい足跡だった。 家に帰って、てんぷらと塩焼き、唐揚げにし、唐揚げの余った分を南蛮漬けにした。 こんな細い流れから、次々と魚が出た。 11日はまつさんと。 先週いい思いをしたと誘ったが、前半は魚影が薄く苦戦。後半入れ食いとなったが、餌がなくなり終了。 2時間くらいやって、その後は昼飯を食べて、キノコを探して、家で宴会だ、とプランを立てていたのだが、計画が狂ってしまった。結局3時半ごろまで4時間以上釣って40尾ほどという貧果であった。それでも、前回とは違って少し大きいサイズの魚も釣れたし、ニジマスも何本か釣れたので面白かった。 夜は予定通り宴会だ。大きな山女とニジマスは塩焼きにその他はてんぷらにした。 スペアリブの煮込みやら、ツブの酒蒸しやらと釣りに関係のないものも出したが、まつさんは、なすのてんぷらと、モズクの味噌汁という釣りに関係のないものにはまっていた。 23pぐらいの山女。このサイズは珍しい。 先週より広い流れの川で釣った。 カヤックで下る人に何人も会ったが、水が少ないので大変だろうな。 ヤマメはまつさんが全部捌いてくれた。 8月30日(月) 魚を貰いに 知床へYさん、Nさんと一緒に知床へ行った。数日前にHiroshiさんから電話があり、あまりいい状況でないと教えてくれた。 一緒に呑んだくれていたHigeさんが電話に出て 「お前には釣れない」だとか「あと数日すれば、もっと黒い魚ばかりになるから、それを釣れ」だとか、ヒドイことを言っていたが、そういうのはいつものことだ。過度の期待を与えないための彼なりの優しさなのだろう。伝わりにくいけど、きっとそうに違いない。 いつも泊る羅臼の宿は、今年、民宿をやめてしまったと聞いていた。 けれど、付き合いは続いていたので、十勝の野菜を山盛りで届けたら、ふくちゃん(女将)が「泊っていけと」言うので、ありがたく泊っていった。外遊帳を見ると、初めてこの宿にとまったのが2005年。今回で4回目の宿泊となる。 まずはいつものように、温泉に入る。 「何もないんだわ」と言って出される食べ物はどれも最高だった。 娘にと、羆の本や、ガラスの浮玉を使った置物や、クジラのひげを貰ったり、熊の胆を呑ませてもらったりとなんだか、いたれりつくせりだった。 立派なボタンエビも何匹も出してくれた。 初めて食べたが、苦かったなあ。これだけで、数十万だと言っていた。 ふくちゃんとの話ももちろん楽しかった。 「今年はカラフトマスいないんだわ。まあ、釣れないわ。とっといてあるから、明日帰りに寄ってって。」 というふくちゃんに、 「いやいやいや。不吉なことを言わないでください。」 と我々一同。 例によって、「もう、旅の目的は達成ですね。」と、私も私で言ってはいけないセリフをまたもや口にしてしまった。 翌朝、相泊の港には、車も人もまばらであった。 そこで、今回の旅のもうひとつの楽しみであった、釣り友達との対面を果たした。 一号さんという京都の方で、日本国内はおろか、ニュージーランドにも毎年行かれるほどの釣りキチ○イだ。北海道にもほぼ毎年、この時期になると釣りにきている。 彼と会ったのは初めてだが、付き合いは古く、まつさんやキンゾーさんたちと同じぐらいのはずだから、10年来の知り合いだ。電話で声を聞いたことは何度もあったが、初対面の彼の風貌は、何か想像していた彼とぴったりと一致していておかしかった。奥さんも一緒に来て釣りをされているということで、羨ましく思った。釣り場でフライを美しいループでキャストしている奥さん、かっこよかったなあ。 帰りもわざわざ、挨拶をしに来てくれたが、連れがいたので、あまりじっくりお話をすることもできなかった。昼飯ぐらいは一緒にしたかったが、そういうのは、次回の楽しみにしよう。会えてうれしかった。 釣りの方は、メインじゃないので簡単に。 @到着したら、クマがいた。釣り場にはクマが食べ散らかしたマスの残骸もあった。無視して釣りをした。どっかに行った。 A一匹目のスレと最後のスレで腕がパンパンになった。口を使ってちゃんと釣りあげたのは1尾のみ。 Bじゃあ魚がいないかというと、隣のルアーマンは16匹釣った。上手に口を使わせていた。釣り方やポイントの問題だろう。つまり、腕の差ってこと。 5:30に釣れた。もう少し、尾数が伸びると思ったら、これ1本で終わってしまった。 昼に漁港に帰り、ふくちゃんのところに寄って釣果を話すと大爆笑していた。 巨大な冷凍庫から、お土産だとくれる海産物は、巨大なクーラー2杯でもおさまらず、入らない分はRVボックスから釣り具を出して、その中に入れた。マス、クジラ、ツブ、タコ、タラ、カスベ、カニの外子、なんだか聞いたことのない魚などなど、裏の川で釣れたというオショロコマやヤマベまでくれた。たぶん、普通の家なら1年分以上あると思う。少なくとも、まあきち家なら、2〜3年分はある。 とても食べ切れないので、知り合いや、知り合いの寿司屋などに配った。 釣り自体はひどいものだったが、旅としては面白かった。 今度は、ふくちゃんに会うのを目的にして、羅臼に行こう。 外子を醤油逗けにした。 文字で、魚の絵が描いてある。 8月22日(日) 家の前の川を下った。先週のカラフトマスは数々の料理になって、家族および友だちの胃袋におさまった。月末にもう一度行く予定だ。今度はコンディションの良い魚は期待できないので、メスを釣ってきてマスコの醤油漬けを山ほど作ろうと思う。奥は塩焼き、手前は白子のガーリックバターソテー と言うわけで、今週は魚釣りを諦めて、娘をカヤックに誘った。 遡上アメマスが呼んでいる気がしたが、ここらで少し、ポイントを稼いでおかなきゃマズイことになりかねない。いつものコースだが、今年は水量が多いので下りやすい。 途中の河原で、流されたり、綺麗な石を探したりして遊んだ。 ニジマスのいいポイントでも発見できればいいと、シュノーケルとマスクも持って行ったが、透明度が低く、あまりよく見えなかった。 カヤックじゃないとこれない中州で遊んだ。その後、ゆったりとした流れで怠惰に下る。 初めて鳥を握り、柔らかさと温かさを感じている。 家でカヤックを片づけている時に、遊びに来た雀を捕獲した。娘たちが可愛いと言うので、食べるのは止めた。 8月15日(日) カラフトマスを釣りに昨年熊にマスを奪われてから、1年がたった。あの釣行はひどかった。今年はマスが少ないようで、前日に渡ったHiroshiさんやshinyaさんが散々だったと言うから困ったものだ。あの達人たちがそうなら、私に釣れるはずがない。 それでも、前日出発までシングルフックを巻くなどしっかり準備をして、まつさんの家に向かった。 まつさんと行って、途中で美味いもんでも食ってというのは楽しみだ。けれど、だいぶ前にまつさんとカラフトマス釣りに行く途中で、有名な焼肉屋に寄り、「もう満足だね、帰っか?」などと冗談を言ったら、ボウズを喰らったことがあるので、その言葉だけは禁句にしよう。 夜に羅臼につき、居酒屋を探した。何件か見てまわり、決めた店の料理は高くて不味かった。驚いたのは、ホッケの塩焼きを頼んだら、お土産屋で売っている真空パックを客の目の前で開いて焼き始めたことだ。 しかし、酔いがまわり、女将さんと話がはずむにつれ、気分は良くなり、つい「もう満足だね。帰っか?」という言葉を吐いてしまった。不吉だ。 サンマの刺身はぐずぐず。ガサエビ(土産物屋でカブトエビと売られている)は、まあ、昨年自分が冷凍を買った味と変わらない。すくいは、女将さんとの話が楽しかったこと。 漁港でワームを投げたら、いくらでも釣れた。ソイとガヤだ。すぐ寝ればいいのに。 朝定刻を少し回ったくらいに舟は出て、ポイントに着いた。 釣り人は、我々のグループが18人、後から来た人を数えたらざっと30人ほどだ。 広い場所なので、30人いても釣りにはなるが、やはり流れ込みの一等地は混んでいた。マスは、盛んに目の前でバシャバシャやっていて、こりゃ貰ったなとルアーを投げた。 しかし、来ない。 ルアーを変えても来ない。 まわりの人にも来ない。 しばらくすると、周りのうきルアーの人や餌釣りの人に魚が掛り始めた。その後、まつさんに釣れ、やっと私に釣れたのは釣れ始めてから1時間30分たった5時半ごろだった。 コンディション抜群のメスが一尾めだった。 その後は、まわりもピタッととまり、どうやら私の魚で打ち止めになってしまったようだ。 けれど、私はこの日は粘ればまだ釣れるような気がしていた。普段の私なら、岩場で休んで誰かが釣るまで待っていたり、場所を色々と変えてみるのだが、この日はそういうことはしなかった。通常の魚の濃さならそうしたかもしれないが、どう見ても魚が少ないのだ。ならば、人が釣れてからルアーを投げ込んでも、もう魚はいない。散発で泳いでいる小さな群れが通りかかったその瞬間だけがチャンスなのだ。 釣れないのと疲れとで、さっさと寝るまつさん。 最初の魚が1時間30分過ぎた頃だったから、次の魚はさらに1時間半だなと言いつつ投げていたら、ホントに7時に2匹目の魚が掛った。しかし、少しファイトした後に魚はばれてしまった。なかなかの引きだったので1尾目より大きいはずだ。せっかく狙い通りだったのに、バラシてははじまらない。 次は8時半かなあ。とキャストを続ける。 殆ど休ます、ずっとロッドを振り続けた。飽きずにロッドを振り続けることができたのは、前回のイトウ遠征の影響があるかもしれない。あの時も、数時間アタリがないなんてことは当たり前にあった。 予定の8:30を少しまわったころに、3尾目の魚が掛った。その魚はドラグを出し、すごいスピードで突っ走って竿をブン曲げた。でかいオスが掛ったのだ。今回のドラグの調整はうまくいった。固めにドラグ設定しておいてアワセ、アワセた後は緩めて走らせる。そうして体力を奪っておいて取り込みは少しきつめに戻す。そうするとうまく取り込める。きつすぎたら暴れるし、ゆるすぎたら魚にプレッシャーが与えられない。その操作はリアドラグのリールだと楽なのだが、今回使っているのはドラグが前に付いているリールなので、とっさのドラグ調整が難しい。実は2匹目はドラグ調整が固すぎ、緩めようとドラグに手を伸ばした瞬間にばれてしまったのだ。 無事取り込んだ魚は、58cmの立派なオスだった。この引きを味わいたかったのだ。このやり取りをしようとこの地までこの時期にやってきたのだ。1尾で腕をしびれさせる、この魚とファイトを楽しみたかったのだ。 こういうオスとのやり取りを楽しめれば満足度はあがる 9時ごろから海が荒れ始め、波が立ち始めた。 時折、霧雨も振った。波はかなり大きくなり、魚に動きがあるような予感がした。 波が立ち始めてから30分、魚がさっきよりは短い間隔で入ってきた。まつさんも私もバラシたりもしたので、本数は伸びず、1尾を追加したのみだったが、楽しいひと時を過ごすことができた。 手前は波の影響で少し濁りが入っていたが、その少し向こうの澄んだ駆け上がりを魚はいつも通過した。 エラの後ろが膨らんでいる。反対側の同じ場所も同じように膨らんでいた。 捌いたら中が黒くなっていた。何かの病気だろうか。 船長に帰る時間は11時だと言われていた。それまでにもう1尾釣れたらいいなあと思っていた。直前に1尾いい魚を波打ち際でばらしているのだ。波が大きいので波打ち際が難しいのだが、バラシたのはじっくりととりこまなかった私のミスである。11時まであと10分。あと1尾釣れたら、最高のエンディングだなあと思って投げたルアーに大きな魚が掛った。 これは絶対に捕る。と慎重にファイトをしようと心がけたが、相手の引きはすさまじかった。20m先で掛ったその魚は、岸際を左側にチーッとラインを出し全く止まらない。左にはテトラや岩や海藻があるので、それに絡まないか心配だ。スプールが透けて見えるので、7、80mほど出されたのではないだろうか。それ以上出されるとラインもなくなるし、何より遠くで釣りをしている人にも迷惑がかかりそうだったので、無理にドラグを閉めると、その魚は今度は沖に向かって走り出した。弱らないが、これは本当にカラフトマスなのだろうか? やっとのことで弱り始めた魚は今度は右に走り、まつさんの前を通過する。 「まあきちさん、すれです。」 そうだろうと薄々気づいていたが、やっぱりそうか。右には釣り人が近くに何人もいたので、邪魔にならないよう強引に寄せに入った。少しずつ少しずつ寄せる。魚は弱っているが、何せ重い。ラインには海藻がたくさん垂れ下ってたわんでいる。物干しざおに洗濯物状態だ。 針は大きな魚の背びれに掛っていた。波に乗せ、なんとか取り込んで計測すると65cm。 このサイズがきちんと口にくわえてくれれば、もっと楽しいファイトだったのになとは思ったが、キャッチできたことが嬉しかった。筋肉質で色もいい。おいしそうな魚だった。 巨大なオスのスレ掛りというオチは私の腕を破壊した。 釣果は4キャッチ3バラシというわずかなものだったけれど、本当に楽しい釣りだった。帰りの船はまるでジェットコースターのように揺れ、跳びはねたが、私はそれも面白かった。 家に夜帰ってから、魚を捌くのは疲れたが、最後に釣れた魚はすごい上物だった。まず、魚の上に左手を添えた時点で張りが違った。そして包丁を入れて身を引く時の感触が全く違った。捌いて見た身の弾力としっとり感が違った。これは魚自体が良い魚だったというよりも、保存状態も大きいのだろう。鱗が剥げるほどの銀ピカも今日釣りあげているが、それよりずっと身のコンディションが良かった。他の魚だって釣り場で血抜きをし、流れる川の水につけておいた。しかし、最後の魚は、帰る間際に釣れ、帰港後すぐにクーラーボックスに入れらのだ。それでここまで差がつくのだ。 釣り場にクーラーボックスを持ち込むというのはフットワークが重くなり嫌だったのでやったことがなかったが、ちょっと考えさせられるぐらいの魚の違いだった。もちろん、味も良かった。 写真では分かりづらいが、キメの細かい素晴らしい肉であった。 8月10日(火) まつ家とキャンプに行った。子どもたちを引き連れ、川を流れに行く。 右は岩から飛び込むまつさんの子ども 毎年上の娘と泳ぎに行く川に、今年は妻と下の子、それからまつさんとまつさんの息子二人でキャンプに行った。まつさんの上の子は、ウチの上の娘、下の子はウチの下の娘を口説いていた。なかなか我が娘たちはもてる。 天気が悪くなるということだったが、初日はいい天気で川遊びには丁度よかった。 ひとしきり泳いだ後は、ヤマメを釣った。ピンコばかりだが、娘も5匹くらい釣ってよろこんでいた。 ヤマメは小さかったが、塩を振って焼いて食べた。 次の日は雨に降られたので、別の日にテントと寝袋と梅干(笑)を干した。半日仕事だ。 8月4日 またここで釣りがしたい 最終日暗いうちから起き出し、テントをたたみ、ウエーダーを履く。釣り場までが近くても遠くても、キャンプ場ですぐにウエーダーを履くことにしているのは、アブがすごいからだ。 釣り場近くの橋の上や林道に車を止めると、無数のアブが一気に襲ってくる。そんな場所で、悠長にウエーダーを履いたりこまごまとした準備をしようものなら、奴らの格好の餌食となってしまうので、できる準備はキャンプ場でしておくに限るのだ。 最終日に選んだのは、初日の最初に入った川だ。 あの時には濁りがあったが、そろそろおさまってきてるはずだと思ったのだ。 案の定、底が見えるほどに濁りは回復していたので、初日に入った区間よりももう少し上流を攻めてみることにした。 ロッドは、意を決して、2番ガイドから上を折り切り、2番ガイドをトップガイドとして使った。昨日よりは随分釣りやすくなった。これなら、釣りになる。 登るにつれて透明度も上がってきた。あまり深くない場所が続くので、底が見えて遡行しやすい。 6時に最初の魚が掛った。 少し強い流れの中をダウンに流したミノーに食いついてきたその魚は大きくなかったが、かなり慎重にやり取りをしたと思う。浅瀬に誘導したイトウは47cm。昨日よりは大きくなったが、これまた小さいサイズだ。本当に今回の釣りは、少しずつしか前進しない。 それでも、この一尾で随分楽になった。時間はまだたっぷりある。この川からはまだ魚が出そうだし、きっともう少し大きいサイズを捕ることもできるだろう。 サイズは小さいけれど、とても綺麗なイトウだった。 上がるにつれ渓流の様相になってきた川からは、その後短い時間に3度ほど魚の追いがあった。 魚は昨日までとはちょっと違い、やる気に満ちていた。倒木陰から猛ダッシュでルアーに襲いかかるもの、落ち込みの白泡の下から飛び出してくるものなど、どれも針掛りこそしなかったが、ルアーの様子を見に来て引き返すというような昨日までの出方ではなかった。 イトウの出方だけでなはい。これまで姿が見えなかった山女があちらこちらに見られる。蚊やアブもこれまでより多い。なにか川全体が生命感に溢れているような感じだ。増水がおさまり生き物たちが川に帰って来たのだ。期待が大きくなる。 そのまま釣りあがっていくと、これまで渓流のような流れだったのが、再び湿地帯のような雰囲気になった。釣り上っているのに、渓相がそういう風に変わるとは、不思議な川だ。 流れの緩やかな広いプールのようなところに放射状にルアーを打ち込んでいると、数投目にイトウが掛った。 70cmぐらいのなかなかのサイズだ。念のため、もう一度アワセを入れ、ファイトに持ち込む。イトウは首を振っている。最初の首振りをしのいだら、弱らせるまで持久戦にしようと考えた。ずりあげられるような岸はないが、障害物は少なく、流れも緩やかなので、それほど難しいシチュエーションではない。これはとれると思った瞬間。無情にもフックは外れ、イトウは深みに帰って行ってしまった。きちんとフッキングしていなかったのか、それとも掛りどころが悪かったのか、わからない。ずっと首振りを止めなかったところを見ると、テールフックがえらあたりにでもかかってしまっていたのかもしれない。非常に残念だが、まだ時間は7時30分。チャンスはまだ数度は訪れるに違いない。 しかし結局、そううまくはいかなかった。 先ほどの魚を逃したポイントの少し上流で熊の足跡を見つけてしまったのだ。いつつけた足跡かはわからないけれど、古いものではない。今回の釣行は熊の巣のようなところでずっと釣っているのだが、熊スプレーもナタも、武器になるようなものは全く持ってきていない。すると、今まで何の気なしに釣っていた川の周りの森が急に恐ろしいものに思えてきた。河畔の笹藪からガサガサと大きな音が聞こえた。鹿かもしれないが、熊かもしれない。まだまだ釣り上りたかったが、そこで諦めて、元来た道を引き返した。 この地で釣りをする以上、羆との出会いは必然だ。 この日最後になるであろう区間に、大きく流れが屈曲している開けた場所があったので、その流れが一望できる小さい丘の上で腰をおろしてお茶を飲んだ。 そこは見事に美しい場所だった。空は晴れ、川に日光が降り注いでいる。流れ込む小川は限りなく澄んでいて、美しい底石の上には10cmほどの山女が数匹遊んでいた。キアゲハとミヤマカラスアゲハが何頭も舞っていた。少し離れた枝にカワセミがとまった。 その後、イトウが再び竿を曲げることはなかった。 2日半の釣りで、小さいイトウ2尾というのは思い描いた釣果よりも随分と少ないものだったけれど、気持ちは満ち足りていた。 最後にかけたイトウを釣りあげていれば、なお素晴らしい釣行であったのだろうけれど、また、来ればよい。最初からあまりいい思いをしすぎてしまうのはもったいない。少しこの地に思いを残しておくくらいの方が丁度よい。 帰りの長いドライブの間、なんどもこの数日の釣りを思い出し、そして、幸せな気分に浸ることができた。 良い釣りだった。また、すぐにでもこの地で釣りをしたい。 イトウの稚魚かなと調べたら、やはりそうらしい。ある意味大きな魚を見つけるより嬉しい。 8月3日 泣き面に蜂 二日目まだ薄暗い中、目的の川へ通じるはずの細流をたどっていた。場所によっては両手を広げたくらいしか川幅のない小さな流れだが、時には背が届かないくらい深く、時にはたまった泥にずぶりと足をとられる。かといって、岸にあがればひどいブッシュでかき分けながら進むのは不可能に近い。「本当にここをたどれば川に出るのか?」地図で見た感覚よりも、川までがずっと遠くに感じて不安になる。昨日魚を見たポイントに入ろうかとも思ったのだが、今回の釣行のテーマは「開拓」であるので、結局別の河川を選んだ。そこにイトウがいるのかもわからないし、どんな流れなのかもわからないというリスクはあるが、それが楽しかった。昨日のように、自分で発見した場所でイトウに出会えれば喜びは大きい。 15分ほどで小さな流れの終着点に出ることができた。 そこには原始の流れがあった。 木が何本も沈み、川は蛇行していた。水の色は丁度よく濁っているように見えた。 入渓点がわからなくなれば、帰ることができなくなるので、周りの地形を注意深く確認し、覚えようと努めたがいささか不安であった。岸際のイタドリを数本手折ったが、こんなに密生していれば意味はないかもしれない。 上流に向かって釣り始めたが、川岸を歩くことも川の中を歩くことも困難な場所がずっと続く。それなりの準備をしていなければ、数十メートル移動することすらできないような川だ。 どこにルアーを投げてもイトウが潜んでいそうなポイントが続き、期待が高まる。 1時間ほど移動しただろうか、水面すれすれに倒れている朽木の下に強い流れが吸い込まれている場所に、ミノーを送り込み、すっーっと引っ張ってくると、不意にイトウが現れた。不意をつかれてうまく合わせることができなかった。コツンした手ごたえだけ残した魚は、50cmほどの魚だった。この地に来て初めてルアーに当たったイトウだ。 その後、3時間ほど魚が出なかったので、遡行を止めて、引き返した。 しばらく引き返して、ふと、周りの景色に見覚えがないような気がした。入渓点を見落とさないように注意しながら川を下ってきたはずなのだが、どうも、今釣っているこの場所に見覚えがない。見覚えがないと言っても、どこを見ても同じように見える川である。そのまましばらく慎重に川岸の形跡を探しながら移動を続けた。釣り人の足跡が全くないので、自分の着けてきた足跡はすぐにわかる。そして、この川は、移動できるルートが限られているから、必ず同じ場所に足跡がつくはずなのだが、その足跡がない。どうやら入渓点を見落としたのは確実なようだ。 問題は、どこで見落としたかだ。知らない川、それも密林のような川でこれは結構危ない話ではあるのだが、私は根が楽天的なので、「まあ、それほど前ではないはずだ。どうせだから、このまま少し下流まで釣り下ってから帰ろう。」とそのまま少し釣りを続けた。 川の中も、陸上も、歩くことは非常に困難だ 車が結構近くを走っている音が聞こえた。「その音をたよりに、藪こぎをするっていうのは命取りだよなあ」などと考えながら、ルアーを引いていると魚がヒットした。それほど大きくはないが、首を振り上流下流に走り抵抗するなかなかのファイターだった。「やっとキャッチできる」と足元まで寄せてくると、急に抵抗が極端に少なくなった。引き上げると、うまい棒ぐらいの大きさの木がついて上がってきた。「変わり身の術?さすが、イトウだけあるな」などと、悠長なことを言っている場合ではない。昨日今日とまだ1尾のイトウも手にしていないのであるから。 その後なんとか入渓点を探し出し、車まで戻ることができた。 ハードな釣りだったし、おまけに釣果がなかったので、だいぶ疲れたが、もっと大きなダメージがあった。帰りの藪こぎ時にロッドの先を折ってしまったのだ。 これには、落ち込んだ。買ったばかりのロッドだということもあるが、何より、この先の釣りに大きく支障をきたす。車に積んでいるもう一本は11フィートもあり、このあたりの川で使うには長すぎる。 どうしようかまよったが、折れたままの竿を使って別河川で釣りを続けた。昨日最後に入った川を今度は釣り下ってみた。気をつけないとすぐに竿先にラインが巻きついてしまうので、慎重に釣りをした。 それほど深さのない瀬にミノーを投げ込むと、小さな魚が掛った。それは小さなイトウだった。 30センチにも満たない子イトウだった。なんとも少しずつの前進である。昨日は追いが2尾、今日の1尾目はコツンとしたあたり、2尾目はファイト後バラシてしまう。この流れなら次はキャッチだと思ったら、その魚が30cm以下とは。 結局その後、ウグイを1尾と、カラス貝を釣っただけで終わってしまった。 やっと釣れた子イトウ。なんとも1歩1歩の進歩である。 しかし、この河川で、メーター級の魚も見た。 一度釣り下った時には何の反応もなかった大淵を帰りにもう一度攻めると、底から、とんでもない大きさの魚がフワーッとミノーめがけて浮上し、そのまま潜っていったのだ。経験がないから本当にメーター級だったのかもわからない。90cmと言われれば、そうなのかもしれないし、1mをはるかに超えたサイズだと言われればそのようにも思える。わかるのは、昨日今日で数回見た70cm級の3倍、4倍の大きさだということだ。 あらゆるルアーを投げてみたが、その魚が再び浮上することはなかった。 この日、1日釣り歩いて釣れた魚は小さいイトウ1尾だけであった。道に迷った先で竿も折ってしまった。もう少し釣れると思っていたのでがっかりだ。それでも6〜7匹のイトウを見たし、特大の魚も見た。満足せねばならないのかもしれない。 「さ、ビールを飲んで明日のために寝よう」とプルを押し上げた後に、釣りの帰りに寄った温泉にウエーダーを忘れてきたことに気付き、1時間かけて取りに行った。うーむ。泣きっ面に蜂だ。 毎日朝日と夕日を眺めることができた。 8月2日 増水・濁流 初日日の出前に起き、いくつかの河川を廻るが、どこも濁っていた。比較的濁りの少ない川で2時間ほど竿を振ったが、反応は全くなかった。 ある場所で、透き通った水が流れ込む場所があり、そこで5〜60cmのイトウを見つけた。ゴミの下に頭を突っ込んでじーっとしていた。頭隠して尻隠さず。私が近づいても、逃げなかったが、ルアーにも反応しなかった。増水時は、こういうところに避難しているのだろう。 その後、思い切って少し遠くの河川まで足を伸ばしたが、着いてみると、そのあたりはさらに濃い茶色の水が流れていた。次回釣行のための下調べだと割り切って、河川の中上流、支流など付近の川を見て回った。 どの川も濁っていた。 半日を費やし、午後3時30分、とうとう濁りの少ない河川を見つけた。 ここにイトウが生息するのかは全くわからなかったが、とりあえず入渓点から釣りあがる。 1時間ほど釣っただろうか、上流のカーブの深みに放り込んだミノーに突然イトウが浮かび出た。 サイズは70cmに満たないほどだろうか。スーッとミノーを追い、また、スーッと沈んでいった。 「この川にも、イトウはいる!」 その後は1投1投緊張しながら、ていねいに、ポイントを攻めた。いかにもという場所があったので、森の中を通ってポイントを迂回し、上流からダウンクロスにミノーを流すと、ゴッと魚が掛った。あまり大きくはないが、今日初の魚だったので、慎重に寄せた。40cmほどの子イトウだと思った魚は、途中から抵抗を止め、スーッと寄ってきた。寄ってきたその魚を見ると、なんと、ウグイだった。渓の一等地、しかもこんな上流にウグイがいるということに驚いた。そして落胆した。 でかいミノーに、ヒットするなよ。 鬱蒼とした森の中の川なので、5時ごろには薄暗くなってきてしまった。その後一度だけ、50cmほどのイトウがルアーを追ってきたのが見えたが、それっきりであった。暗くなってくると熊が怖くなってくる。このあたり一帯は羆のテリトリーだ。5時半まで釣りをし、そこから車まで引き返すと6時になっていた。 テントに帰って、ビールを飲みつつ、今日の釣りを振り返り、明日の釣りに思いを馳せた。 明日は濁りも少しはとれるだろう。とれずとも、今日の区間を歩けば数匹のイトウとは出会えるだろう。 今日だって、たった2時間で2匹のイトウと出会えているのだから。 「明日は、必ず釣れる。もしかすると複数のイトウをキャッチできるかもしれない。」 期待はどんどん膨らみ、鼓動が速くなった。 それでも、前日の寝不足と今日の疲れで、ほどなく深い眠りに落ちていった。 8月1日 イトウ釣行 前日一つの釣行にこれだけ準備するということの経験はなかった。5月の釣行以来ずっと、道北が頭から離れなかった。「あの自然濃い川の中で1日中竿を振りたい。」 6月になんとか時間が作れれば行っていただろう。7月には時間が作れるはずだった。しかし、結局2日以上の休みが取れるのが8月に入ってからということになってしまった。「真夏にイトウは釣れるのか?」そんな疑問もチラリと頭をよぎる。 準備には金が掛った。竿を買った。9f以下の強い竿が必要だった。少し大きめのリールも必要だった。ルアーを何個か買った。新品のラインも買った。ウエーダーや防水デジカメも買った。5月から、少しずつ少しずつ買いためていった。妻には秘密だ。最後に買った、オーシャングリップというものが宅配便で到着した1日の昼すぎに、家を出発した。 ツインパワーが欲しかったが、バイオマスターで我慢。後ろは旧式リアドラグ。前は08モデル。 サイバーショットの防水デジカメ。何機種か迷った。Hiroshiさんにも相談に乗ってもらった。 しかし、前日までの雨で、道中の川は全て濁流であった。しかも、途中から強い雨が降り始めた。 現地に近づくと雨は止んでいたが、こちらも結構まとまった雨が降ったようだ。 数日間テントを張ることになるキャンプ場の近くの川も、随分と濁って増水していた。果たして明日釣りになるのだろうか。 早めに寝袋に入ったが、興奮して寝られず、ねむるのを諦めテントから出て酒を飲んだ。 風の強い夜だった。満点の星。天頂近くにははくちょう座が見える。天の川をはさんで、雲がすごい速さで流れていく。はくちょう座が飛んでいるように見えた。 「どこか澄んでいる川もあるさ。明日がダメでもまだ日にちはある。」 7月18、19日 何もしないでゴロゴロしているよりはずっとマシだけれど18日、少し予定時間より遅くなったが、道東の海に着く。竿を新調したので、その具合も試したい。 Hiroshiさんやshinyaさんに会って話を聞くが、あまりパッとしないとのこと。 ようやく1尾だけ釣って、昼にあがった。 40cmに満たないであろうその魚では、竿の具合などわかるわけもない。 ちなみに、その1尾は、Hiroshiさんに頂いたミノーだ。 私が釣れないのを見かねてくれたのだ。 ちなみに前回会った時には、スプーンと2尾のサクラマスを頂いた。 Hiroshiさんには感謝感謝だが、遠慮のない、私も私だ。 Hiroshiさんは、流石だ。 19日、前日のリベンジに家をAM2:00に出発した。やっぱり、ウミアメは早く起きなくちゃね。 今日の釣りはキンゾーさんと一緒だ。 昨日よりもずーっと西のポイントで、私にとっては初めての場所だった。 人ごみの河口を避け、一人浜を歩いた。 5時前に、ヒットした最初の魚が、この日一番のクライマックスとなった。 ズンッというアタリからあきらかに大物であった。 アワセも強く入り、次の抵抗に備える。 すぐに大きな飛沫があがり、巨大な尾びれが見えた。 「でかい!」 持久戦に持ち込むべく、ドラグを緩めた。 大物の割に、意外と冷静に対応できていたと思う。 ドラグを緩めた直後、魚は再び大きく暴れ、 「プッ」 という感触を残してラインは切れてしまった。 私のミノーを外したいのか、数秒後、もう一度水面で大暴れした後、魚は海の底へ潜っていった。 間違いなく大物だった。 今回は(珍しく)釣り始めにラインチェックをしている。結束も確認した。 何がいけなかったのかはわからないが、この間はサクラをばらしているし、その前はイトウをばらしている。ここぞというとき、ことごとくバラしているというのは、単に腕が悪い以上の何か、「厄」のようなものさえ感じる。海で掛ったアメマスの中では、最も大きいサイズだった。ばらした後は、しばし膝が震えていた。悔しい。 その後、40cm弱を5匹(?)釣ったが、比較的大きいのを連続で捕り損なった。カバンからカメラを出すのが億劫で、携帯で撮影した。「まあ、またそのうち釣れるべ」という楽観的な気持ちもその時にはあった。 しかし、7時過ぎからは全く反応がなくなってしまい、結局大物はおろか、中型さえも釣りあげることができなかった。 10時過ぎには釣りを止め、帰るか、次の釣り場に行くかということになった。 キンゾーさんは、東の港に行くという。 某港の管理人さんの情報によると、昨日の港は調子が良かったそうだ。時代が来たそうだ。 しかし、それを聞いても、それほど港に興味を持つことができなかった。帰るか、別の浜に行くか考えていた。 しかし、キンゾーさんの次の一言が、私のこの日の運命を決めた。 「ビールでも買っていくか!」 「防波堤でビール!」 この言葉は甘美である。色あせたコンクリートの巨大人工物が、とたんにパラダイスに思えてくる。 早速、エビスの350mlとスーパードライの500mlをコンビニで買い込み、東に向かった。 コレ付きなら、港も悪くない。 昼前につき、ロッドも振らずに、まずはビールだ。飲みながら他の釣り人を見ていたが、殆ど釣れていないようだ。 その後、夕方まで釣りをした。 しかし、私のロッドにも、キンゾーさんのロッドにも、魚が掛ることはなかった。 それは、きっと、コイツのせいだ。 ↓ 港内に2頭でクルージングしていた。 喰っちまうぞ! |