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かつてザールブルグで・・・ Vol.3


<過去>−4

ヘーベル湖から戻ったイングリド、ヘルミーナ、アイオロスの3人は、さっそく次の日、ザールブルグを出て北へ向かった。
「あんまり危ないところへは、行かないでね!」
というリリーの注意など、どこ吹く風だ。
畑の中をまっすぐに伸び、北方のカリエル王国へつながるザールブルグ街道を進み、時には同じ方向へ向かう農夫や商人の荷馬車に乗せてもらいながら、幾日かを過ごす。

やがて道はゆるやかな上り坂に変わり、四つ辻に達する。そこには、白木で作られた、真新しい道標が立っていた。
道標によると、東はメディアの森、北はヴィラント山のふもとへと通じている。そして、西へ折れれば、今回の目的地、エルフィン洞窟だ。
進むにつれ、次第に周囲の景色は荒涼としてくる。植物の姿はまばらになり、ごつごつした岩が目立つようになってきた。
このあたりには、狼の群れや盗賊がひそんでいると言われているが、幸いにも3人はそれらの危険に出くわさないで済んだ。そして、何回か野宿を繰り返した後、ようやくエルフィン洞窟にたどり着いた。

洞窟の入口は、赤黒い山肌にぽっかりと口を開けていた。
ランプに灯をともし、アイオロスはおそるおそる洞窟に踏み入る。ところが、イングリドもヘルミーナも、怖れるふうもなく、とことこと先に立って洞窟の奥へと進んでいく。
聞けば、街の冒険者と一緒に、何度も材料採取に訪れたことがあるという。アイオロスは、驚く前にあきれてしまった。
やがて、イングリドとヘルミーナは、ごつごつと出っ張った岩のあちこちを探りはじめる。慣れた手つきでなでまわし、ランプの灯を近づける。そして、アイオロスに言うのだ。
「ここよ」
ふたりが示した岩をトンカチとノミで砕くのは、アイオロスの仕事だった。絵筆を持つ手に慣れないトンカチを握り、言われるがままに岩の固まりに叩き付ける。砕けて落ちた岩石の破片を、ふたりの少女は拾い集め、次々に採取かごに投げ込んでいく。時おり襲ってくるコウモリを追い払うのも、アイオロスの役目だった。

汗まみれになっての半日が経つと、採取かごは赤い色をした『カノーネ岩』を初めとして、青や緑、茶褐色や黄色といった、色とりどりの岩のかけらでいっぱいになった。
「なあ、こんなにたくさん集めても、重くて運べないんじゃないか」
アイオロスが言う。
しかし、ヘルミーナはにっこり笑って、答えた。
「ぜんぜん大丈夫よ。試しに持ち上げてみて」
アイオロスは、両手でかごをつかみ、力をこめて持ち上げようとした。ところが、かごは空っぽの時と同じような軽さをしており、勢いあまって岩の天井にぶつけそうになってしまった。
「驚いたな・・・。どんな仕掛けがあるんだい?」
あっけにとられたアイオロスに、少女たちはすまして答える。
「簡単よ。かごの網目に『グラビ結晶』を縫い込んであるの」
「そうそう。こんなの、大したことじゃないわ」
アイオロスはうなり、それ以上尋ねるのはやめた。いくら聞いても、どうせ理解できっこない。

「さあ、後は、あれね」
「そうね」
「お兄ちゃんも、一緒に来て」
と、ふたりは階段状になった岩を器用に下り、洞窟の中でもいちばん低くなっている場所へ行った。そこには、鈍く光る水溜まりのようなものがあった。
「なんだい、こりゃあ?」
ランプを近づけると、その液体は銀色をしていた。
イングリドは、かごからガラス壜を取り出すと、手際よくその液体をすくい、次々に栓をしていく。
「さ、お兄ちゃんもやって。でも、気を付けてね。『地底湖の溜まり』は、ちょっと危ないから」
「そうよ、じかに触ると、手が溶けちゃうかも知れないわ。うふふふ」
「おいおい、脅かさないでくれよ」
冗談めかして言いながらも、アイオロスは手に付かないよう慎重に銀色の液体をすくった。
用意していたガラス壜がすべて『地底湖の溜まり』で満たされると、3人はかごをかついで洞窟を出る。

日は暮れかけていた。今日はこの近くで野宿をしなければならないだろう。
ふと、アイオロスが立ち止まった。耳をすます。
かすかなうなり声が、どこからともなく聞こえて来る。
「気を付けろ、なにかいるぞ!」
アイオロスは少女たちをかばうように一歩前へ出ると、剣を抜いた。
その気配を察知したのだろうか、岩陰から数頭の狼が姿を現した。
山肌を背にした3人を半円形に取り囲むように、じりじりと間合いを詰めてくる。飛び掛かってくるのも時間の問題だろう。
(やばいな・・・)
アイオロスは思った。1頭は倒せても、戦っている間に、残りの狼に少女たちが襲われてしまう。

その時、背後からなにかが空を切って飛んだ。そして、かわいらしい叫び。
「うにぃ!!」
宙を飛んだなにかは、狼に向かっていき、空中で爆発した。
轟音とともに、無数の黒い固まりが狼の群れを襲う。
響き渡る爆発音と舞い上がる砂塵に、狼の悲鳴が混じる。
そして、砂塵がおさまった時、狂暴な獣の群れは姿を消していた。したたかにやられ、戦意を失って逃げ去ったのだ。
アイオロスは、剣を構えたまま、茫然と立ち尽くしていた。

その耳に、落ち着き払ったヘルミーナのつぶやきが届く。
「ふうん・・・。オリジナル調合の『うにクラフト』。まだちょっと威力が足りないかしらね」
すぐにイングリドのどなり声が重なる。
「ちょっとヘルミーナ! あなた、またこっそりと爆弾を作っていたのね! あれほどリリーお姉さんやドルニエ先生から禁止されているっていうのに!」
「別に、いいじゃない。そのおかげで狼を追い払えたんだもの」
「あなたね! その危ない実験のせいで、何回ドアを修理しなければならなかったと思ってるの! 工房を吹き飛ばしてからでは遅いのよ!」
「知らないわよ、べーだ」
「イーだ」
ぷいと顔をそむけ合うふたりに、アイオロスは処置なしというふうに肩をすくめた。

工房に帰り着くと、さっそくイングリドとヘルミーナは、採取した岩と『地底湖の溜まり』を持って2階の作業場兼寝室にこもった。
「お兄ちゃんは、いても邪魔になるだけだから、絵の練習でもしていて!」
とイングリドがきっぱりと言い、アイオロスは閉め出されてしまった。
すぐに、室内からは岩をトンカチで砕く音やすりつぶす音、ガラス器具が触れ合う音などが聞こえてくる。今回は珍しく、言い争う声は聞こえない。
「ふうん、今回は真剣みたいね、あのふたり・・・」
階下へ下りたアイオロスへ、リリーが話しかける。
「ああなったら、イングリドもヘルミーナも、行くところまで行き着かなければ止まらないわ」
リリーは天井を見上げ、複雑な表情で微笑を浮かべた。
「あの娘たちをその気にさせるなんて、あなたは大したものだわ」
「はあ、そんなもんですか・・・」
「2、3日かかると思うから、スケッチにでも行っていらしたら?」
「はあ・・・」

アイオロスはスケッチブックを抱えると、中央広場へ向かった。
石造りのベンチに腰掛け、あたりを散策する人々や、巡邏中の騎士、鳩にパンくずを与える老人、歓声をあげて駆け回る子供たちなど、気が向くままにスケッチブックに写し取っていく。
もはや、ザールブルグで名を上げようという思いなど、どこかへ消え去っていた。本当に久しぶりに、アイオロスは絵を描くことを純粋に楽しんでいた。

そして、3日目の夕方。
リリーの工房に戻ると、イングリドとヘルミーナが待っていた。
ふたりとも、服には染みや焼け焦げがつき、髪の毛もくしゃくしゃになっている。疲れた様子はしていたものの、大きな瞳には生き生きとした光が宿っていた。それは、なにかをなしとげた後の、すがすがしい達成感のように見えた。
「できたよ、お兄ちゃん!」
「もう、これ以上はないって感じ!」
「さあ、早く見に来て!」
口々に言い、アイオロスの手を取って、2階の作業場に引っ張っていく。
その後ろから、にこにこしたリリーもついて行く。

「これは・・・!!」
アイオロスは息をのんだ。
作業台の上には、何十本というガラス壜がきちんと並べられていた。そして、それぞれの壜は、赤、青、黄、紫、緑、白、黒、金、銀、あるいはそれらの中間色といった、様々な色の液体で満たされていた。その色合いと輝きは、あの『中央通り』の画廊に並べられていた高級絵の具に優るとも劣らない。いや、それ以上と言ってよかった。
「すごいじゃない、ふたりとも! どうやって作ったの?」
リリーが驚きの声を上げる。
イングリドが、落ち着いた声で答える。
「そう難しくはなかったわ。粉末にした岩を『地底湖の溜まり』に溶かして蒸留し、色の成分だけを純化したの。ヘルミーナがへまをしなければ、もっと早く仕上がったんだけど」
「あら、失礼しちゃうわね。あたしの失敗は12回だけよ。あなたは13回じゃない!」
ヘルミーナが言い返す。
「へえ、いちいち失敗した回数を覚えているなんて、あなたらしいわね。あきれてしまうわ」
「よけいなお世話よ。べー」
ふたりはぷいと顔をそむけ合った。

「さあさあ、ふたりとも、ほとんど寝てないんでしょう? 顔を洗って、着替えてらっしゃい。明日の朝までぐっすり眠ること。これは命令よ」
リリーが厳しい調子で言い渡す。
「は〜い」
ふたりは声を揃えて答え、階下に消えた。
まだ言葉を出せないでいるアイオロスに、リリーが話しかける。
「あの娘たちは平然と言っていたけれど、これだけのことをなしとげるには、大変な努力と技術が必要だったはずです。わたしでも・・・いえ、ドルニエ先生でも、これほどのことはできなかったかも知れません。これは、わたしの言うことではないのかも知れませんけれど、どうか、お願いです。あの娘たちの期待を裏切らないでくださいね・・・」
アイオロスは、両のこぶしを握り締め、大きくうなずいた。彼の頭の中には、すでに描きたい作品の構想ができ上がっていた。

「皆さんに、お願いがあります」
翌朝、早くから起き出して、冷たい水で身を清めたアイオロスは、工房の面々に切り出した。
今日は珍しく、リリーたちの師匠である錬金術師のドルニエも、顔を揃えている。ドルニエは、普段、シグザール城で即位したばかりのヴィント国王に会ったり、有力貴族の開くパーティーに顔を出しては、錬金術への理解と、魔法学院建設への支援を訴えて、忙しい時を過ごしていた。工房はリリーに任せて庶民レベルでの錬金術の普及をはかり、ドルニエ自身は政治レベルでの活動を行っていたのだった。
イングリドとヘルミーナも昨夜はぐっすりと眠り、今朝はすっきりした顔をしていた。服装も、こざっぱりしたものに着替えている。

アイオロスは、4人の顔を順に見回しながら、一語一語を噛み締めるように言った。
「皆さんには、本当にお世話になりました。言葉では言い尽くせないくらい、感謝の気持ちでいっぱいです。で、俺は考えました。どんなお礼ができるだろうかと。でも、俺には差し上げられるものが、何もありません。ですから・・・皆さんの肖像画を描かせていただけませんか」
アイオロスの言葉を聞き、少女ふたりはお互いに顔を見合わせる。リリーは、尋ねるようにドルニエを見やった。
ドルニエは、深みのある暖かな光をたたえた瞳で画家を見やり、ゆっくりと言った。
「いいとも。それで、われわれはどうすればいいのかね?」

その日から、ひと月近くが経った。
アイオロスはその間、一心不乱に絵筆を振るい続けた。イングリドとヘルミーナが彼のために作ってくれた絵の具を、一滴たりとも無駄にしないようにしながら。そして、錬金術というものの素晴らしさを、自分なりに理解し、表現しようとしながら。
「ふう・・・」
彼は息をつくと、数歩下がり、アトリエ代りの1階の寝室の中央にしつらえられた、大判のキャンバスに描き出された4人の錬金術師の表情をながめた。
そして、大きくうなずくと、右下に自分のサインを記す。
部屋を出ると、隣の作業場には全員が揃っていた。下絵のモデルを務めた後、採取に出たり調合したりといつもの生活に戻っていたリリーたちも、そろそろ絵が完成すると聞いて、仕事を中断して集まっていたのだ。
「できました・・・」
疲労をにじませてはいるが、満足そうな声で、アイオロスは言った。その目に宿っている光は、絵の具を完成させた時のイングリドやヘルミーナと同じものだった。

歓声をあげて、イングリドとヘルミーナが隣室に駆け込む。その後から、リリーとドルニエがゆっくりと続く。
「うわぁ!」
「すごぉい!」
少女たちの声が聞こえる。
「きれいね」
「ほんと、本物そっくりだわ。特に、生意気そうなところなんかね」
「そうね。この、つんと取り澄ましているところなんか、実物通りだわ」
「ほほほほほ」
「ふふふふ」
アイオロスは、作業場で待っていた。どうも、モデルの目の前で、自分の絵を見るのは照れくさい。
イングリドとヘルミーナの言い合いが途切れた後、ドルニエが落ち着いた声で言うのが聞こえた。
「ふむ・・・。これはぜひ、今度の展覧会に出品するべきだな・・・」

そして・・・。
年に一度しか開かれない展覧会の日が訪れていた。
王室が主催するこの展覧会では、シグザール王国全土から集まった様々な特産品や芸術作品が出品され、国王をはじめ有力貴族の投票によって入選作品が決まる。上位に入賞すれば、王国中にその才能が認められたことになるのだ。
しかし、入賞するのは並大抵のことではない。
なにしろ、出品される品は無数にある。
絵や彫刻、細工物に陶器といった芸術品はもとより、辺境の地で捕えられた珍奇な動物や美しい草花、果ては踊り、軽業、歌や奇術、占いまでもがエントリーされる。
ザールブルグの住民にとっては、年に一度のお祭り騒ぎの日でもあった。
仕事はすべて休みになり、人々は家族総出で出展品を見物に集まる。会場となるシグザール城の大広間と中央広場は、人波でごったがえす。

そのような喧燥から離れ、アイオロスはひとり、リリーの工房の2階の窓際に腰掛けて、人もまばらな『職人通り』をスケッチしていた。
リリーはイングリドとヘルミーナを連れて、展覧会に出かけていた。もちろん、リリーたちも錬金術を用いて作った魔法の品を出品している。
アイオロスの描いた肖像画も、ドルニエの勧めで出品されていたが、彼は見に行こうとはしなかった。正直なところ、ザールブルグでも著名な画家たちの描いた絵と自分の絵を見比べるのが怖かったのだ。
そんなわけで、アイオロスは長い午後の時間を、絵を描くことで紛らわせていた。

もう陽は傾き、建物や街路樹の長い影が『職人通り』の石畳の道をまだらに染めている。
アイオロスは、ふと描く手を休め、遠くを見やった。
ふたつの小さな影が、踊るような動きで近づいてくる。やがて、声も聞こえてきた。
「お兄ちゃ〜ん!!」
「やったよ〜!!」
イングリドとヘルミーナが、息を切らせて駆けてくると、2階の窓際にたたずんでいるアイオロスを見つけ、両手を口に当てて叫ぶ。
「入賞したんだよ! お兄ちゃんの絵!!」
「もうお客さんがついてるよ! ワイマール家の奥方が、肖像画を描いてほしいんだって!!」
アイオロスの手から、石墨がぽろりと落ちた。両手がぶるぶると震え、胸に熱いものがこみ上げてくる。

この日から、アイオロスは伝説の人のひとりとなった。


<現在>−5

その日は、巨匠アイオロスの個展の第1日目だった。
会場として開放されたシグザール城の大広間には、王室をはじめとして王国中の名家旧家に所蔵されていたアイオロスの名画コレクションが一堂に会し、一般市民に公開されていた。
会場は、伝説の画家の作品を一目見ようという人々であふれ、王室騎士隊が出動して入場制限や警備に当たっていた。
会場には、『飛翔亭』の店主ディオの秘蔵の宝物、彼のひとり娘のフレアの肖像画も展示されており、なぜかいつも酒場に入り浸っている赤マントの大柄な冒険者がその周りをうろついていた。

しかし、もっとも注目を集めたのは、アイオロスが初めて世間に認められた作品・・・今回アカデミーの地下室から発見された肖像画『錬金術師たち』と、彼の最新作『命題』だった。
このふたつの作品は、向かい合う形で会場の出入り口付近に展示されていた。入場した人は、まず4人の伝説的な錬金術師に出迎えられ、そして帰りには、今もっとも評判になっている赤いとんがり帽子の工房の主に見送られる形になるのだった。

エリーはアイオロス本人から特別招待券をもらい、貴族たちと一緒に、混み合わないうちにゆっくりと見て回ることができた。実はこの日まで、エリーは自分がモデルをつとめた作品を見せてもらっていない。
出口近くに来て、エリーは初めてアイオロスの最新作『命題』を見上げた。
「ほんとに、これ、わたしなのかな・・・」
思わずつぶやく。
キャンバスの中に色鮮やかな油彩で描き出されたエリーは、普段通りのオレンジ色を基調とした錬金術服を身につけ、左手に本を抱え、右手で三角フラスコを掲げている。
背景にはホロスコープを抽象化した図案の中に、いくつかの調合器具やアイテムが描き出されていた。
そして、錬金術師の栗色の瞳は好奇心と希望をたたえ、はるか遠くを見通しているかのようだった。

ふと、背後に人の気配を感じ、エリーは振り向く。
「ダグラス! どうしてここにいるの!?」
エリーの意外そうな叫びに、ダグラスはわざとらしくせき払いをして言う。
「なに? いちゃあ悪いってのか? 俺はこの会場の警備責任者なんだぜ」
「あ、そうなんだ・・・。大変だね」
エリーは言葉を切り、ダグラスの視線の先を追う。ダグラスは、エリーの肖像画を一心に見つめていた。
「やだ・・・。そんなに見ないでよ、恥かしいじゃない」
エリーの言葉にもダグラスは反応しない。そして、ぽつりとつぶやいた。
「・・・きれいだな」
「え・・・?」
ふとダグラスは我に返る。そして、エリーと視線が合うと、怒ったような顔をして目をそらした。
「ダグラス・・・。今、何て言ったの?」
「な・・・なんでもねえよ!」
「でも、『きれいだ』って聞こえたよ」
「あ、ああ、言ったよ。ほら、ここ、この模様の色が、きれいだな・・・って」
ダグラスが絵の背景の部分を指差して、早口で言う。心なしか、顔が赤くなっているように見える。
エリーはそれ以上追及するのを止めた。
「それじゃ、わたし帰るから。お仕事、しっかりね」
「お、おう! まかせとけ!」
その会話が理由だったのかどうかはわからない。
しかし、個展が終わるまでの間ずっと、ダグラスが出口近くを重点的に警備して、そこから離れようとしなかったのは確かのようだ。

<おわり>


○にのあとがき>

えみゅ〜さんの『ザールブルグ・タイムス』に掲載されたスクープ写真、“アカデミーの地下室で発見された謎の肖像画”にちなんだ小説を、というリクエストをいただきまして、書いたのがこれです。『ザールブルグ・タイムス』に投稿しました。
ついでにダグエリ風味も入れてくれというご希望でしたので、極秘取材を敢行し(笑)、ラストシーンのスクープをものにしました。

後日、えみゅ〜さんから、アイオロスさんが描いたエリーの肖像画が届きました。こちらもぜひご覧ください。

アイオロスさんの設定は、勝手に想像して考えたものです。
ちなみに、過去のラストに出てくる“ワイマール家の奥方”というのは、アイゼルの“おばあちゃま”です(^^;

『リリーのアトリエ』発売まで3ヶ月を切りましたが、竜虎コンビはどんな活躍をしてくれるのでしょうか。イメージが違ってなければいいけど・・・。
ご感想など、ぜひお聞かせください〜。

追記:この作品を執筆した時点では、『リリーのアトリエ』に本物の(!)アイオロスさんが登場することなど、予想もしていませんでした。この作品に登場するアイオロスさんは、○にが勝手に想定した人物像ですので、ゲーム中の人物イメージとギャップがあるかも知れませんが、事情をご理解いただければ幸いです。


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