ホワイト・クリスマス:FF篇


「ね、クラウド、今度はこれに乗ってみようよ」
子供のようにはしゃいだ声で、エアリスがクラウドの手を引っ張る。
そこは、『スピードスクェア』と名付けられたアトラクション場の入口だった。

クラウドの一行は、昨日から、ここゴールドソーサーに滞在している。一刻も早くセフィロスを追いたいクラウドだったが、古代種の謎を解くカギとなるキーストーンを、ゴールドソーサーのオーナーであるディオが持っていることがわかったのだ。ところが、肝心のディオは出張中で、1週間経たないと戻らないという。
仕方なく、かれらはゴーストホテルに部屋を取り、ディオの帰りを待っているのだった。

「じっとしていたって仕方がないわよ。この際だから、ぱあっと遊んじゃいましょ」
というエアリスの提案で、皆、思い思いに時を過ごしている。
クラウドは、今朝からずっとエアリスに引きずり回されていた。
ゴンドラに乗り、チョコボレースを楽しみ、ゲームセンターで遊んだ。
そして、今度は『スピードスクェア』にやって来たのだった。

階段を上り、きらびやかにネオンがまたたくゲートをくぐると、派手な服と化粧のコンパニオンがふたりを出迎えた。
「は〜い。このアトラクションの説明を聞く?」
エアリスがうなずく。
「ええ、お願いするわ」
「は〜い、このアトラクション『シューティングコースター』はね。ゴーッと走る中にピュンピュンと出てくる物をバンバンと撃ってドッカーンとやっつけるの。どう、簡単でしょ?」
・・・聞くほど簡単なようには思えない。

「ね、やってみましょ、クラウド」
エアリスが熱心に誘う。だが、クラウドの表情はさえない。
「どうしたの?」
「いや、特にどうしたというわけじゃないが・・・」
「でも、なんか、いつものクラウドらしくないよ」
「大したことはない。じゃあ、やってみるか」

と言いながら、クラウドは思った。エアリスに言えるわけがない、心の中で(この乗り物に乗ってはいけない)とささやく声が聞こえるなんて。
「それじゃ、おふたり様、ご案内〜」
コンパニオンの明るい声に背中を押されるように、クラウドは狭いコースターのコックピットにおさまる。
ガタン、とコースターが動き出す。光線銃の形をしたコントローラを握りしめ、クラウドは十字形のロックオンウィンドウに集中しようとした。

5分後・・・。
「ねえ、クラウド、大丈夫?」
背中をさすりながら、エアリスが心配そうに言う。
「あ・・・ああ、大したことはない。・・・うっぷ」
コースターの降り口の脇の手すりにもたれて、青い顔をしたクラウドが手で口をおさえる。
「変ねえ。以前、『俺は乗り物酔いはしたことがない』って偉そうに言ってたじゃない」
ふらつくクラウドに肩を貸し、出口に向かおうとするエアリス。

出口の手前の右側に小さな小屋がある。その窓口の上の大きな電光掲示板に、『1320』という点数が表示されている。
「残念だったね。3000点以上取ったら、景品がもらえるから、今度はがんばるんだよ」
小屋の中にいた係員がクラウドに声をかける。
「ふうん、どんな景品がもらえるのかしら」
ガラス張りのショウウィンドウをのぞきこむエアリスに、係員はわざわざ景品を出して並べて見せてくれた。

「これは『マサムネブレード』。4分の1スケールだが、ファーストクラスのソルジャーが持つ武器の正確なレプリカだ。こっちの『超合金スイーパー』は、神羅陸軍が誇る最新鋭モビルスーツ、スイーパーカスタムの模型。それから、この『1/35神羅兵』は、神羅軍の装甲擲弾兵12体のセットだ。着せ替えオプションも付いているから、女の子にも人気があるんだよ」
どれもきらびやかなパッケージに収められ、いかにも子供が欲しがりそうな景品だ。エアリスも思わず目を細める。

その時、背後から大声で呼び掛ける声が聞こえた。
「やっほ〜、どうしたの、おふたりさん!?」
振り向くと、コースターへの乗り口の手すりのところに、忍者とガンマンの格好をした男女がいるのが見えた。忍者とガンマンと言っても、アトラクションの出演者がコスプレをしているわけではない。
「あら、ユフィにヴィンセント。あなたたちもこれに乗るの? 気を付けた方がいいわよ。クラウドでさえ、具合が悪くなっちゃったんだから」
エアリスの言葉に、ヴィンセントはちらりとクラウドに流し目をくれる。
「ふ・・・。こんなもの、タークス訓練用の空中戦闘シミュレーションに比べれば、どうということもない・・・。ソルジャーの訓練には、このようなものはなかったようだな・・・」
冷たく言い放つと、ユフィを連れてコースターに乗り込む。

そして、5分後。
待ち受けるクラウドとエアリスのところに、コースターが戻って来た。
ファンファーレが鳴り響く。
「やったね、お客さん。4352点だから、文句なしだ。どれかひとつ、景品を持って行きな」
係員が祝福する。
「どれでも好きなものを選ぶといい・・・」
口許にかすかな笑みを浮かべ、コックピットから降りてきたヴィンセントがユフィに言う。
「え? 選ばせてくれるの? じゃあ、ユフィちゃんはね、・・・これ!!」
ユフィは『マサムネブレード』を選ぶと、ヴィンセントの左腕にぶら下がるように腕を組んで、振り向く。
「じゃあね、お大事に、クラウド」

去って行くふたりを見送り、エアリスはわざとらしく大袈裟なため息をつく。
「あ〜あ、ユフィはいいわね。頼りになるナイトがいて。それに比べて、こっちの何でも屋さんは・・・」
ようやく顔色が戻って来たクラウドを横目でちらりと見る。
「そう言うな。タークスとソルジャーは、訓練のやり方がちがうんだ」
肩をすくめ、首を振るクラウド。
「まあ、いいか。じゃあ、その代わり・・・」
考え込むようにあたりを見回したエアリスの視線が、小屋の壁の一点で止まる。
「あ、あれは!」
窓口に首を突っ込むようにして、エアリスが係員に尋ねる。
「ねえ、おじさん、それはなあに?」
「ああ、これかい。お嬢ちゃんも目が高いね。これは、最高得点を取った人だけがもらえる、特別の景品さ。見かけはきれいだけど、強力な武器にもなるんだよ」
エアリスの視線の先には、虹色に輝く金属で作られた1本の傘が壁に掛かっていた。

「ね、クラウド、あたし、あれがほしい」
振り向くと、エアリスは大きな緑色の瞳でクラウドを見つめる。
「そうだ、もうすぐクリスマスよね。あたし、プレゼントがほしいな」
「え?」
「あたし、あの傘がほしいの。ね、クリスマスのプレゼントに、ちょうだい」
「ほしいって言ったって・・・。おやじさん、何点取れば、そいつをもらえるんだい」
「そうさな、今まで誰も出したことがない、5000点も出せば、OKだな」
「5000点・・・」
げんなりした表情で、クラウドはうつむく。
「帰るぞ」
肩をすくめるときびすを返し、すたすたと出口に向かうクラウド。

「あん、待ってよ、クラウド。逃げるの?」
なごり惜しそうに景品小屋を一瞥し、エアリスはクラウドの後を追った。
「あれ?」
そんなエアリスの頬に、冷たいものが触れた。差し出した手のひらにも、白い花びらのような雪のかけらが落ちる。桜色をしたエアリスの手の上で、雪のかけらはゆっくりと融け、やがてかすかな湿り気を残すだけとなる。だが、その時には、次から次へと舞い落ちる雪片が、エアリスの栗色の髪を粉砂糖のように彩りはじめていた。
北コレルからゴールドソーサーにかけて、この冬はじめての雪が降り始めたのだった。


その晩遅く・・・。
ゴーストホテルのロビーの片隅の椅子に腰掛け、バレットは身じろぎもせず窓の外にちらつく雪を見つめていた。
階段をそっと下りてきたティファが、心配そうに近付く。
「バレット・・・寝ないの?」
もの憂げな表情で窓外に視線を据えたまま、バレットがうっそりと答える。
「ああ・・・ほっといてくれ」
「どうしちゃったのよ。ここに着いて以来、ずうっと考え込んだままで・・・。らしくないよ」
「お前も見たろう・・・北コレルの村の、子供たちを」
バレットの声に、ティファははっとする。

ゴールドソーサーに来るには、北コレルの村からロープウェーを使うしかない。元は炭鉱の町だったコレルは、爆発事故と神羅軍の襲撃によって破壊され、生き残った住民たちはがれきの山の中で細々と暮らしている。バレットは、そこの出身なのだ。
「覚えてるか・・・。宿屋の表で遊んでいた女の子を。木切れと石ころを並べて、『お人形さんのおうち』だとよ。おまけに『お人形さん』っていうのが、針金をひん曲げて毛糸を結んだだけの代物だ。あのテント暮らしのガキだって、焼けこげた廃材を振り回してソルジャーごっこだ・・・。それだけじゃない、あの村には、ああいう子供たちが何人もいるんだ。もうすぐクリスマスだってのによ、親たちは生きるのに精一杯で、子供たちにはごちそうもプレゼントもありはしないんだ・・・」
「バレット・・・」
「おまけに、この雪だ・・・。北コレルの連中は、凍えちまうよ。身も、心もな・・・」
バレットは、相変わらず窓の外に目を向けたまま、ゆっくりと首を左右に振る。

「だけど、俺はあの子たちに何もしてやれねえ・・・。それを思うとな、他の連中みたいに、はしゃぐ気分にゃなれねえのさ」
「わかったわ、バレット。でも、あまり思いつめちゃだめよ」
ティファはそっとその場を離れる。
寝室に向かおうと階段に近付くと、階段の脇にたたずんでいるクラウドに出会った。
今の会話を聞いていたのだろうか。だが、クラウドは無表情だ。
「あら、クラウド、こんな時間にどこへ行くの?」
「散歩だ・・・」
取りつく島もなく、早足でロビーを出て行くクラウドに、ティファは眉をひそめる。
「なんか、ここへ来たら、みんなどうかしちゃったみたい・・・。大丈夫かしら」


それから5日後。
「・・・どうかしちゃったみたい。大丈夫かしら」
5日前のティファと同じセリフを言っているのは、エアリスだ。
「クラウドったら、今日も朝寝して、部屋から出てこないのよ。身体の具合でも悪いのかしら」
「ふうん、あたしはまた、誰かさんが引っ張りまわしすぎるから、疲れちゃったのかと思ったけど」
エアリスの部屋でテーブルをはさんでお茶をすすりながら、ティファが答える。
「そんなことないですよ。ここ2、3日は、誘っても付き合ってくれないんだから」
「そう・・・。ほんとに、どうしちゃったのかな、クラウド」

「えっへっへ、あたし、知ってるよ、クラウドの秘密」
「え!?」
突然、響いた声に、あわててあたりを見回すエアリスとティファ。
と、窓がバタンと開いて、吹雪と一緒に小柄な人影が飛び込んでくる。
「ユフィ!」
「あなた、どこから入って来るの? ここ、2階よ!」
驚いて叫ぶふたりに、ユフィは落ち着き払って、服についた粉雪を払い落とす。
「忍者は、毎日が修行だからね。このくらい、何てことないよ。それより、クラウドなんだけどさあ・・・」
と、エアリスとティファに顔を寄せ、最大の秘密を明かすような表情で、何事かをささやく。
聞いたふたりが、目を丸くする。
「え〜!?」
「チョコボレース?」
「うん、きっとそうだと思うんだよね。だって、クラウドってば、毎晩、みんなが寝静まると、夜遊びに出かけて行くもん。ほら、今はクリスマス前の特別キャンペーン中で、アトラクションはみんな24時間営業じゃない。きっと、徹夜でチョコボ券買って熱中してるんだよ」
「でもユフィ、なんであなたが知ってるわけ?」
「あなたも夜遊びの常連なんでしょ?」
「えへへ・・・。あたしはまあ、いろいろとね。すべてはこれ、修行のためよ」
「よく言うわ」
その時、部屋のドアがノックされた。

「あら、ケットシー、どうしたの?」
「エアリスさん・・・。ああ、ティファさんとユフィさんも一緒ですか。ちょうどよかった、ちょいとクラウドさんの部屋まで来てもらえませんか」
巨大なロボモーグリの上に乗ったネコ型ロボットのケットシーは、有無を言わさぬ調子で3人をクラウドの部屋まで連れて行った。

「もう! いったい何だって言うのよ」
文句たらたらのティファだが、クラウドの部屋へ入ると表情が変わった。
思いつめたような表情のクラウドが、そこに待っていた。
「実は、提案があるんだ・・・。まずはこれを見てくれ。あまり見せたくはないんだが・・・」
つかつかと部屋の隅に作りつけられた戸棚に歩み寄ると、そのまま扉を大きく開け放つ。
中から雪崩のようにあふれ落ちてきたものを見て、エアリスもティファも、ユフィさえも言葉を失った。
泣き笑いのような表情を浮かべ、クラウドは無言で肩をすくめる。
「クラウドさんの提案っていうのは、こうですわ。つまり・・・」
ケットシーが説明を始める。
最初は呆然と聞いていた3人だが、話が進むに連れ、笑みが浮かび、大きくうなずきはじめていた。

「じゃあ、バレットを呼んでくるね」
すべてを聞き終わったティファが、飛び出して行く。
「どうせ、また雪景色を見ながらたそがれてるんだから・・・」
「はいな。この計画には、どうしてもバレットさんの体型が必要ですからなあ」
ケットシーは、どこからか持って来たアトラクション用の小道具を広げて、楽しそうに笑った。


その日も、朝から雪が降りしきっていた。だが、ここ2、3日とちがって、風は弱まっている。
吹雪が続いている間、掘っ建て小屋やテントに閉じこもっていた子供たちも、今日は厚く積もった雪の中に飛び出して、楽しそうに駆けずり回っている。
今日がクリスマス・イブであることなど、子供たちの頭の中にはないのだろう。
大人たちは相変わらず、廃材や壊れた機械の山をかき分けて、少しでも金になりそうなものを探している。
昨日と変わらない1日・・・。その1日はいつもと変わりなく、のろのろと過ぎて行く。
そして、その1日は、昨日とまったく同じように暮れようとしていた。

廃材で作った『剣』を振り回して犬を追いかけていた男の子が、ふと顔を上げる。
「何だ、あれ?」
空を見上げ、指さす。同じ年頃の子供たちが、男の子も女の子も三々五々集まってくる。
「何だろう」
「ほら、いろんな色をしてるよ」
「きれいだなあ」
騒ぎを聞きつけて、大人たちも仕事の手を休め、空を見上げる。いつも地面を見て暮らしている大人たちにとって、空を見上げるなどめったにないことだ。
降りしきる粉雪に混じって、ゆっくりと空から漂い下りて来るのは、色とりどりの風船だった。

ただの風船ではない。ひとつひとつの風船には、きれいな紙で包装され、リボンをかけられた箱が結び付けられていた。
早くも、風船のいくつかは地面に近付き、近くにいた子供が駆け寄っていた。 箱に飛びつき、リボンをほどく。包装紙をびりびりと引きちぎるように開ける。
「あ、これ、超合金の模型だ!!」
「こっちは兵隊さんのお人形よ!」
「うわー、本物そっくりの剣だ!」
あちらこちらで子供たちの歓声が響く。
夢でも見ているかのような気分で、その光景を見つめる大人たち。

その中のひとり、武器屋の主人が空の一点を指さし、叫んだ。
「おい、あれを見ろ! なにかいるぞ!」
アイテム屋も声を揃える。
「鳥か? いや、人みたいだ。赤い服を着てる」
その時、テント暮らしの男の子が叫んだ。
「サンタクロースだよ、あれ!!」

時が、止まった。
大人も子供も、男も女も、空の一点を見上げる。
ちらつく雪の中を見え隠れする、赤い服を着た太った男の姿。
「子供たちよお!! アバランチからのクリスマスプレゼントだ、受け取ってくんな!!」
一瞬、地表に近付いたサンタクロースは北コレル村の人々に手を振ってみせ、そのまま上空に小さくなっていく。

上空では、不器用に手足を動かしながら、バレットがあえいでいた。赤い服に赤いとんがり帽子というサンタクロースの衣装に真っ白な付け髭を付け、汗びっしょりになっている。
「おい、もう終わったんだろ。いつまで続けなきゃならないんだ」
首を曲げて上を見上げ、叫ぶ。
腰から伸びた丈夫なロープは、すぐ上を飛ぶケットシーのロボモーグリにしっかりと結ばれている。ロボモーグリにはユフィがまたがり、プレゼントが入っていた大きな空の布袋をひらひらさせている。
ロボモーグリもユフィも灰色の仮装をして、雪の中で目立たないようになっている。下の人々からは、バレットの姿しか見えないだろう。
「どうですか、気持ちいいでしょ、サンタクロースの気分は。この飛行モーグリも、突貫工事で作った割にはよく飛んでますし・・・」
ケットシーが嬉しそうに叫ぶ。
「てやんでえ、口に雪が入るわ、風は冷てえは、それでいて身体ん中はカァーーッと熱いわ、もう限界だ・・・。早く、帰してくれ!!」
バレットは負けじと言い返す。が、ふと言葉を低めて、
「ありがとよ・・・。嬉しそうだったよな、あの子供たち・・・」
こぶしを握り、目をこすった。

「ほな、ゴールドソーサーに帰りまっせ。ユフィさん、よろしいでっか?」
「オッケー・・・あっ!!」
「ど、どないしました、ユフィさん?」
「しまったあ! ヴィンセントにもらった『マサムネブレード』まで、投げちゃったよ〜。どうしよう」
「そんなもん、また取ってもらえばいいでしょ! さ、帰りまっせ」
ケットシーはメガホンを握り、飛行モーグリに命令を下す。
降りしきる雪の中、北コレルの子供たちに一生忘れられない思い出を残して、にわか作りのサンタクロースは帰って行く。


同じ頃、クラウドの部屋では、エアリスとクラウドが肩を並べて窓の外を見つめていた。
「ね、うまくやったかな、バレットたち」
「ああ、ケットシーが付いてるし、大丈夫だろう」
「それにしても、びっくりしちゃった。クラウドの部屋であんなにたくさんのおもちゃがあるなんて・・・」
「あの『シューティングコースター』ってやつ、何度やっても、3000点とか4000点しか取れなくてな・・・。景品屋のおやじもあきれてたよ。景品が在庫切れになっちまうんじゃないかって。で、あれだけの景品をどうしようかと思った時に、バレットがティファと話してたことを思い出したんだ。それで、ケットシーに相談して・・・」
「よかったね、北コレルの子供たち・・・。最高のクリスマスだよね」
「ああ・・・。でも、毎年が、子供たちにとって最高のクリスマスになるように、頑張らなきゃいけないんだ、俺たちは」
「そうだね。でも、あたしも、嬉しい。あたしのために、クラウド、苦手な『シューティングコースター』に数え切れないほどチャレンジしてくれたんだもんね。しかも、みんなにバレないように、わざわざ夜中にホテルを抜け出して・・・」
そう言ってほほえむエアリスの右手には、あの景品小屋の壁に飾られていた虹色の傘『アンブレラ』がしっかりと握られていた。

エアリスがクラウドの目を見つめ、そっとささやく。
「メリー・クリスマス」
クラウドはいささか恥ずかしげに、それでもしっかりとささやく。
「メリー・クリスマス」
雪は、しんしんと降り続いている。ゴールドソーサーのクリスマスは、静かに過ぎていった。

<おわり>


○にのあとがき>

もにょさんのUji Kintokiめりぃくりすますぷろじぇくとに賛同して(口は災いの素、とも言う)書いた作品。最初は錬金ネタでのクリスマスものを、と考えていたのですが、いいネタが思い付かず、FFネタになってしまいました。

実は、作中のクラウドは、その頃の自分自身なのです。
FF7の全アイテム収集を始めたのはいいのですが、まず『シューティングコースター』でつまずいてしまいました。とにかく5000点が取れない!!!
取らないと、『アンブレラ』入手できないし・・・というわけで、チョコボレースでGP稼ぎまくっては『シューティングコースター』をやる、というのを繰り返して、なんとか目的達成できました。でも、その時には他の景品が山のように・・・。

と、いうところから生まれた今回のお話です。


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