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Happy&Happy(ノルアイ篇)

作:美月 倫さん


「ねぇ、ノルディス?あなた、テスト勉強ははかどってるの?近頃あまり寝ていないみたいだけど・・・?」
私はアイゼル・ワイマール。アカデミーの3年生なの。アカデミーでは今、来月に控えたコンテスト一色。
そして私が今話しているクラスメイトはノルディス・フーバー。彼は私たちの学年で首席なのよ。
私はそんな優秀な彼が好きなんだけど、でもこの頃あんまり寝ていないみたいなのよ・・。心配だわ・・・。
それでもこんな風に私が聞いてもいつも彼はこう返してくるの。
「大丈夫だよアイゼル。僕はちゃんと寝るときは寝ているから。君こそ大丈夫かい?無理したらだめだよ。」
心配してくれるのは嬉しいんだけど、彼はいつも人の事ばかり気にしてしまうから・・。
「わかったわ・・ありがとう。じゃあ、頑張ってね。私はエリーの所に行ってくるから・・。」
そういって今日は私たちは別れた。私はすぐに、親友のいるアトリエへと歩を進めた。

―コンコン!
「はーい!あいてまーす!!」
今日も忙しそうね・・・。あの子は誰の依頼でも断れない子だから・・・。コンテスト前なのに、大丈夫かしら?
「こんにちは。エリー、今忙しいのかしら?」
と、聞いてみたはいいけど・・・忙しそうねぇ。手伝ってあげようかしら?
「何を作ってるの?手伝ってあげるわよ。貸してみなさいよ。」
私はそういってエリーの手にあったものをとった。あら・・・?これは・・。
「ねぇ・・これって、太陽のブローチ?って、なんだ、完成してるじゃないの!誰に依頼されたの?」
「いや・・・依頼されたんじゃないの。」
え?依頼されてないって・・・?ああもう!まどろっこしいわね!
「どうしたのよ!?コンテスト前にこんな日数のかかるもの作って・・・?」
「いや、その・・・ね・・・・・・プレゼントなのよ!!そ、それより!ミスティカティどう?分量を変えてみたの。」
エリー・・・そんなに隠したいのかしら?プレゼント、ねぇ・・・?
私はおいしかったわとだけ言い、アトリエを出た。そして、ある場所を目指した。

「・・・ここなら何でもわかるわよね・・・。こんにちは、ディオさん。」
そう、私の来た場所は飛翔亭。ここにはエリーに連れられて何度も来ているの。
そして私はマスターのディオさんに自分の知りたい情報が無いかどうか、聞いてみた。
「お、今日は一人なのか、確かアイゼルだったな。どうした?」
「今日はちょっと質問に来たんです。・・・そろそろ誕生日を迎える人、どなたかいらっしゃらない?」
あら?ディオさん怪訝な顔をしているわ。やっぱり説明しないとだめなのね・・・。
「それがね・・・コンテストも近いって言うのにエリーがとても時間もかかる物を作ってたのよ。」
相づちを打ちながら、ディオさんは私の話に耳を傾けてくれている。私は続ける事にした。
「それで、いつもは隠しごとなんかしないあの子がプレゼントだって言ったまま話をはぐらかしたのよ。
だから、私は誕生日プレゼントをあげたいとあの子が思うくらい好きな人ができたんなら、協力したいの。」
一気に私が言いきるとディオさんは少し笑いながら、了承してくれた。
「あんた達は仲が本当にいいな。今回は特別に、料金は無しで話してやろう。」
やったわ。良かった、ディオさんが物分かりのいい人で。
「明後日がダグラスで明々後日がルーウェンだ。2人とも知ってるよな?」
「そう・・・ありがとう、ディオさん。それではごきげんよう。」

まぁ、こんな挨拶くらいは貴族のたしなみとして、当然よね。門番と冒険者ね・・・。当たってみようかしら?
ダグラス(私は門番だと思ってるわ)は聖騎士で、エンデルク様の次に強いといわれているけど。
そしてルーウェンは冒険者で結構強いみたいだけど、実際どうなのかしら?
エリーは門番の方と良く話しているわね。でも乙女心(?)は複雑だから冒険者かもしれないわ・・・。
私はまず門番に当たってみる事にした。きっと城門にいるんでしょうね。

「ん・・?あんた確かエリーの友達のアイゼルだったな。ここは通せないぜ。それともなんか用事か?」
この人はいつでも態度がでかいわね・・。まったく、少しは考えて発言すれば良いのに。
ノルディスを少しは見習ってもらいたいものだわ。
「ええ、ちょっとたずねたい事がありまして。あなた明後日誕生日だそうですわね。それで、エリーとなにか約束とかはしてらっしゃるのかしら?パーティーとか何か、ありませんの?」
門番は少し怪訝そうな顔をして私にそのまま聞き返してきた。
「は?俺がエリーと何か約束してないかだって?別に何もないぜ。それよりなんでそんな事聞く?」
・・・外れの様ね、ディオさんの予想は。ただの喧嘩友達だったって事なのね。
「別になんでもないわ。何も無いならいいの。じゃあごきげんよう。」
ぽかんとしてる門番を置いて私はその足で武器屋に行く事にした。きっと冒険者はそこにいるでしょうね。

「うん?ああ、アイゼルだっけ?どうしたんだい?俺になんか用事でもあるのかい?」
ルーウェンは年上なのにそれを感じさせない人懐っこい感じの人。
「ええ、唐突ですけれど、あなた明々後日誕生日だそうね。その日、エリーと会う約束していないかしら?」
ルーウェンはいきなりだったからちょっとびっくりしたみたいだったけれどすぐに答えてくれた。
「ああ・・約束って程じゃないけど、ちょっとパーティーをやるって言ってたけどな、明々後日に。」
ビンゴ!(古)やっぱり冒険者の方だったのね。私ってばすごいわ。
「そう!ありがとう。また後でくるかもしれないから。」
「おい、それよりなんで・・?」
ルーウェンが何か聞いてたみたいだけど、私の耳には入らなかった。私はノルディスの寮へと向かった。

「ノルディス?アイゼルよ。ちょっと頼みたい事があって。いいかしら?」
ノルディスはいきなりの頼みにもかかわらず、快諾してくれた。
「いいよ。で、どうしたんだい?血相変えて走ってきて。なにかあったのかい?」
さすがノルディスね。私があなたの前で息を乱してるといけないからって、ドアの前で息を整えたのに。
何でもおみとおしなのね。私はエリーの事や2人の誕生日の事を最初から話した。
「・・・ふーん・・なるほどね。わかったよアイゼル。で、僕は具体的には何をすればいいんだい?」
「あのね、エリーの所で部屋の飾り付けを手伝って欲しいの。お願いできるかしら?」
ノルディスは快諾してくれた。私たちは街で買い物に出てものを揃え2日後にエリーの所へ行った。

―コンコン!!
「はーい!あいてまーす!!」
エリーは2日前に行ったときと同じ元気の良さで私たちをアトリエに迎え入れてくれた。
エリーの出してくれたミスティカティをたしなみながら早速私たちは本題に入る事にした。
アトリエはいつものように産業廃棄物でごちゃごちゃになっていた。
「ねぇ、エリー。明日、冒険者の誕生日だって知ってるわよね?パーティーやるそうじゃないの。」
「ここでやるんだろう?このままでいいのかい?」
エリーはびっくりして飲んでたお茶を落としてしまった。そそっかしいわねぇ、この子は。

「な、ななななんで知ってるの!?で、でもゴメン!!ルーウェンと2人でって約束したから!!」
・・・・・・わかりやすい性格してるわね。まったく。そんなに言わなくても私はわかってるわよ。
「そんなに慌てなくてもいいわ、エリー。とにかく、もう少し女の子っぽい部屋にしなきゃだめよ。」
「だから、僕たちが飾り付けしといてあげるよ。今日はアイゼルの部屋で過ごしてよ。」
「ええええ!?いいよ!悪いもの!そんな・・・。」
私はそのまま押し問答してても仕方が無いので、エリーをアトリエから追い出した。
二人っきりになってから変な沈黙があったが私はいつもより少し気合いを入れて立ち上がった。
「さ!ノルディス!やりましょう!まずは産業廃棄物を処分しなきゃね。」
私たちはごみの処理と片づけからはじめた。2,3時間経ってようやく片付いてきた頃少し休憩を取った。

「大丈夫?ノルディス。ごめんなさいね。テスト勉強、してたんでしょ?私の勝手なおせっかいで・・・。」
私がそういうとノルディスはいつもよりもっと優しく笑ってこういった。
「アイゼル。僕は、おせっかいな所が君のいい所だと思ってる。そして、友達思いなところもね。」
私はそう言ってくれるノルディスの優しさに甘えてしまう事にした。
「ありがとう。でも私、そんなに友達思いじゃないわよ。」
「そんな事ないよ。だって僕はそんな君のいい所にひかれたんだから。」
え、それって・・・?でも、そんな、まさか・・・。
「アイゼルはこう言わないとわかんないのかな?・・・僕は君が好きなんだ。
いつもの笑顔でそういう彼の顔は少し赤く染まっていた。きっとその顔は私にしか見せていないのだろう。
「ノルディス・・・私も、あなたの事ずっと前から好きだったわ!!ずっと考えていたの。だってあなた、エリーの事ばかり見ていたから!」
そういう私の顔も赤く染まっているのだろう。恥ずかしくて彼の顔がまともに見れなかった。
「アイゼル。僕はエリーの事は友達として大切に思ってる。そして君のことは好きな人として大切なんだ。」
そういった後私はノルディスに後ろから抱き付かれた。びっくりしたけど、抵抗せずにじっとしていた。
私たちはしばらく幸せに浸っていたがアトリエの飾り付けをやる事を思い出した。
「ノルディス?そろそろ飾り付け、やらないといけないわ。やりましょ?」
「そうだね、エリーが帰ってこれなくなっちゃうもんね。」
まだ幸せに浸っていたかったが早く終わらせないと夜になってしまうので私たちは飾り付けをすました。

「うわぁぁぁぁ!すっごーい!ありがとう!アイゼル!ノルディス!!」
エリーはきれいに飾りつけられたアトリエを見て嬉しそうに目を細めた。
「まぁ、私がいればこんなの簡単よ。片づけの方が時間がかかったわ。感謝してよね。」
私は本心ではない言葉が口を出てしまいしまったと思ったがエリーは気にしてはいなかった。
「じゃあ、僕たちはこれで帰るね。またコンテストの時にでも会おうね、エリー。」
「うん!アイゼル、ノルディス、本当にありがとう!じゃあね!」
私たちはエリーに別れを告げ、寮へと向かった。もう夕暮れの時間で夕日がきれいだった。

「きれいだわ。いつも忙しくてあんまり見ていなかったから。」
「そうだね。でもこれからは2人で毎日夕日を見ようよ。」
とてもきれいな夕日をバックに私たちは1つの約束をした。


=====あとがき=====

初めてのノルアイ小説。どうでしたか?なんかノルディスが動かしにくかったです。
アイゼルのお嬢様言葉もかなり疲れました。ノルアイながらも少しルーエリ(少しか?)はいってますね。
とりあえず次のSSはこれのルーエリの続きを書いてみようと思ってます。
でも書いて欲しいって感想があればですけどね。
ちなみに、ダグラスはこの日(2人が片づけをしている日)はエリーがくると思って夜中まで待ってます(笑)
初めてダグラスが可哀相な小説でした。(ダグラスファンの皆様に深くお詫び申し上げます)


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