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オリジン オブ マリー 〜WILL〜

作:TOMOさん


あたしはマルローネ、みんなはマリーって呼んでる。

グランビル村っていう小さな集落で生まれて

小さい時からずっとここに住んでたんだ。

近くにセルク・クライってところがあって、

そこからは綺麗な湧き水も出るし、とても静か

でいいところだよ。

でも最近ちょっと寂しい。だって、ずっと一緒に

遊んでたシアが遠くの町に引っ越しちゃったんだ

もん。あたしも大きくなってだんだんわかってき

たんだけど、ここって他の町や村との交流が殆ど

ないのよね。あったとしても、ちょっと南のロブソン

村や、キャラバンか何かでたまにここを訪れる人

たちぐらいしか・・

あたしはこれから何をすればいいのかなあ・・・・


マリーがシアと別れてから十日が経とうとしていた。

今の気持ちを一言で表せば、青緑が一番適しているの

かもしれない。短いとはいえ、十年以上もの付き合いで

ある。このシグザール王国自体が、ザールブルグという

城のある大きな町を中心に動いているため、人口の殆ど

はそこに集中し、結果としてグランビル村やロブソン村

では過疎化に悩まされていた。

『もしかしたら、もうこの村にいることは出来ないかも
 しれない。それでシアたちは大きな町にうつったのかな』

そんなことばかり考える日々がしばらく続いていた・・・・


「さーて!いつものところにいこっと!」

 村の中を歩きながら、マリーは外れの農地に向かう。ここでは

 レオという老人がたくさんの作物を作っていた。マリーが生ま

 れた頃に大きな町からここに移って来たらしく、シアがいたこ

 ろはよくここに来た。

「じーさん!!いつものやつ持って来たよー!!」

遠くからマリーが大声を出す。小さい頃からこのように呼んでいた。

「おお・・・。すまないね・・・お嬢さん。それじゃ、少し休もうかの。」

レオは終始穏やかにマリーに応え、鍬をおろす。初めて彼に会ったときは、

何とも奇妙な感じがしたのだが、かつて村にウォルフの大群が侵入し、シア

とマリーの2人を襲った時、あっという間に追い払ってしまい、お礼に昼

飯にケシパンを届けた。それがいつの間にか日課のようになっていたのだ。

「でもさぁ・・・こんな何もないとこにどうして住もうと思ったの?
 じーさんて、昔は結構大きな町に住んでたんでしょ!?」

「・・・まぁ、もう残り少ない人生じゃからの。・・・騒がしい所より、
 こうしたのんびりした所の方がいい。」

「騒がしい所って・・・例えばザールブルグとか!?」

「・・・・そこで長い事武器屋をやってたんだが、骨をうずめる場所じゃ
 なかったな。・・・あそこは。」

 ケシパンと水をほおばりながら、レオは淡々と話す。すると、マリーの
 方に向き、その目をじっと眺めた。

「な・・・何よじいさん!?急に。」

「いや・・・・・昔な、セルク・クライに連れてったあのお嬢さんと同じ
 ような目に見えただけじゃ。」

「ふーん・・・・。」

 マリーが頷いた後、しばらく2人は黙っていた。シグザールの西方は比較

 的気候が乾燥していて、雨は殆ど降らず、水はかなり貴重なものである。

 この村の人たちは常に井戸などに水をたくさん蓄えていた。

「・・・お嬢さんもいずれはザールブルグへ行くのか!?」

「・・・まあ、シアが向こうへいっちゃってるしね。そりゃ
 あたしも行きたいよ。」

「・・・そうか、・・・・・もし行けたら、あいつに会えるかもしれんな。」

 すると、ケシパンをかじりながらレオは持って来た袋から小さな2枚の肖像画

 をマリーに見せる。これは、ザールブルグを離れる際、アイオロスからもらった

 ものである。

「このお兄さんとお姉さん・・・じいさんとどういう関係があるの!?」

 目をぱちくりさせて、マリーが尋ねる。

「・・・この男は、わしの店を引き継いだ奴で・・・そっちのお嬢さんは、確か
 錬金術士とか言ってたな。」

「・・錬金術!?・・・何それ?」

「わしもよくわからんが、物と物とを混ぜて全く異なる物を作り出す
 学問らしい・・・。」

「なんか・・・・魔法みたいね。」

「・・まあ、そんなところだろうな。」

マリーは急に真剣な目になり、レオの方を向いた。

「・・・それじゃあ・・・・それを使えば、シアの調子もよくなるかな?」

「ん・・!?・・・お嬢さんのお友達か?」

「ちょっと前にここを出てっちゃったんだ・・・直接聞いたわけじゃないけど
 急に咳き込んだりすることがあったの・・・だから、どっか悪いんじゃない
 かなって・・・この村って、お医者さんもいないしね。・・・それを使って何
 か薬みたいなのが出来たら面白いかもね。」

すると、レオは立ち上がりついでに言った。

「・・・そっくりだな。」

「・・・誰に?」

「そのお嬢さんさ・・・。」

肖像画を指すと、マリーはその女の人を良く眺める。

「・・・このお姉さんが、錬金術士なわけ?」

「・・・そういうことだ。」

マリーの素朴な質問にレオは微笑みを返す。


「あたしにもなれるかな・・・。」


「・・・友達を大切に思う気持ちがあれば、どんな事だって
 出来るさ。」

「・・・そうだね。・・・ありがとうじいさん!!」

「おいおい、前から言おうと思ってたんだが、わしにはレオって
 言うちゃんとした名前があるぞい!!」

「・・・ありがとう、レオじいさん!!」

 マリーの口のなってなさに、レオはかなり振り回されていたが、

 何故かその姿に懐かしさを感じ、グランビルの空を眺めて笑っていた。

「・・じゃあ、あたしもう家に帰るから。」

「・・・あ!?・・・ちょっと待った!!」

 レオは急にマリーを呼び止める。

「何よ!?・・・まだあるの!?」

「・・・もし、・・・もしだが。」

「じれったいわね!・・早くしてよ!」

 レオは少し間を置いた。

「お嬢さんがいつかザールブルグに行くことになったら・・。」

「行った時?」

 マリーはきょとんとする。

「もしあいつが・・・わしのあとつぎがまだあの町にいたら・・
 お嬢さん、その時は何か力になってやってくれ。」

「・・・・う・・・うん。」

「・・・風の噂によれば、あいつは大事な人と別れて
 からさらに髪の毛が少なくなり始めたって話だからの。」

「・・・あたしに何か出来るかわからないけど、やってみるね。」

マリーがそう言って去ると、レオは再び土を耕し始めた。


その後マリーがグランビル村を去り、2〜3年たった頃、畑の中で

息が絶えていたレオを村長が見つけた時、まわりには『ホッフェン』

がたくさんさきみだれていた。


<あとがき>

この作品、もしレオがマリーと会っていたらどんな事を話していたんだ
ろうなと考えて書いてみました。1年ぶりに投稿したので記憶の紐をたど
ってみましたが、なかなか難しかったです。


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