《有難い ゆっくり思考 地のままで》

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 徳川家光治世のときの京都所司代板倉勝重の長子重宗と次子重昌は家光の側近くに仕えていました。あるとき家光が二人を試そうとして,難解な訴訟問題の判断を委ねました。才気煥発な弟の重昌はすぐに是非を蕩々と述べ立て,その場で明確な判断を下しました。兄の重宗は二,三の質疑を重ねた上,しばし考え込む風で「恐れながら今しばし時間をいただきたく,追ってご返答申し上げまする」と,返答を避けました。数日して家光に示した判断は重昌が即答したものと同じでした。
 家光をはじめ多くの人が重昌の才気を褒め称えましたが,父の勝重はこういいました。「訴訟の裁きは軽々しき行うべきものではございませぬ。誤りのないよう公平ならざることのなきよう,十分に吟味し,道理にかなった採決をなすべきものでござりまする。重昌のように,才気を鼻にかけひけらかすような仕儀では,こうした大事の訴訟に当たる資格はございませぬ。ここのところの儀,ようくお考えのほどを」
 板倉の言葉に家光は,人の才能や性格を見抜くとはいかなることか納得のいく思いがしたということです。重宗は父の後を継ぎ所司代の職を35年にわたって全うしました。
 問題であれ相談であれ,すぐに判断して答えることよりも,たとえ時間が掛かっても,正しく公平で可能な策を導き出せる思慮を経た判断が求められます。そのためには,迷いや自信がない部分については助言を求めたり調査を重ねるといった手間暇をかけるべきです。速い判断をするということは、結論に至る考察が細い論理に沿うものになります。あれやこれやを考えていくことは考察の道筋が太い論理になることです。
 もちろん,どんな場合でもじっくり考察することがよいというものではありません。時間的な余裕がない即断即決すべき状況もあります。ものごとが今現在動いているような場合です。臨機応変という対処が求められます。

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(2022年05月29日:No.1157)