《有難い 言葉を使う こつが見え(7)》

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 言葉を覚えることは心の食事です。どのような種類の言葉を覚えて使うか,それが心の活動になり,人としての品格を表します。人権宣言において,人は理性を持つと謳われていますが,それは言葉を獲得したことから得られたものです。その言葉を共有することができると,相互理解が進み,共生することが可能になりました。そうして,人それぞれの間がつながって,人間という社会人が登場しました。

 養老孟司さんの講演動画を視聴しているときに,ちょっと面白い話を聞きました。日本の食糧自給率が4割を切っているというデータから,純粋の日本人はいないというのです。身体の6割が外国産でできているというのです。確かに食事で取り入れた物質が身体を作っているので,言われてみれば納得せざるを得ません。食糧自給率という言語は身体物質の自給率と関係しているのです。
 食糧と言えば,行動をするエネルギーという思い込みがあります。一生懸命働いて疲れてお腹が空いたので,たくさんの食事を摂るといった認識です。そこには食事は身体という構造材でもあるということは想定外です。身体は不変な状況と思い込んでいます。一年前の身体の材料は入れ替わっているのです。簡単に言えば,食事をしないと痩せていくのです。子どもの育ちの場面では,たくさん食べて大きくなるように,といった言葉を掛けていたはずです。
 検索してみると,「細胞の新陳代謝」の周期は部位によって異なっており,胃腸の細胞は約5日周期,心臓は約22日周期,肌の細胞は約28日周期,筋肉や肝臓などは約2か月間の周期,骨の細胞は約3か月周期だそうです。すなわち3か月過ぎると身体の細胞は全部入れ替わっているようです。外国産の食事で取り込んだ材料が私たちの今日の身体を6割ほど構成しているという論理が見えてきます。
 食糧自給率という言葉が,食糧は人の身体の新陳代謝につながっているという事象を辿ることで,身体自給率という言葉に転換されていくのです。言葉は世界の認識のために,世界の部分を切り取って定義しているだけで,様々なつながりを持っています。どのようなつながりに着目するかによって,世界の風景がいろいろに見えてきます。連想という言葉を実行に移せば,つながりへの深い洞察に辿り着くことができるでしょう。

 言葉は登場する場面で生きていますが,その場面は一つではありません。同じ言葉が全く違って見える場面でも使われています。その言葉に導かれて違った場面をつないで見ると,世界の面白い理解に辿り着くことができるでしょう。

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(2025年01月19日:No.1295)