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【我関せずに?】
龍馬と初めて会った西郷隆盛が「あんなに度量の大きな人間は見たことがない」と賞賛したという。
犬猿の仲であった薩摩藩と長州藩が手を結んだのは、顔の広い坂本龍馬が中に立って,双方を説得したからでした。
龍馬が西郷隆盛のところにやってきて,新政府の綱領や官職の青写真を広げて見せました。西郷はなるほどと彼の説明を聞いていたが,やがて不審顔で,
「この草案の中には,君の名が出て来ないじゃないか。きみはどうしたんだね」。
「いや,もうぼくの出る幕ではありませんよ。それに,ぼくは役人は嫌いなんだ。毎日判で押したような生活は,ぼくには向かない」
「じゃ,君は何をやろうというんだね」
「そうだなあ。海援隊で世界を駆け巡ろうかな」
お膳立てを作り上げたら,さっさと引き下がるこの無欲さ。龍馬が人々の心をとらえ,よく動かしたのは,我関せずと私欲にとらわれない熱意であったのです。
人の世の結びつきは,当事者に任せると利害が絡んでうまくいかないというのが衆目の一致する経験でしょう。長屋のご隠居のような部外者である第三者の公正な思慮に依ることが世間智です。
各種相談も二人の当事者とは無関係で利害もつながっていない第三者という立場に最低限の信頼が備わっています。もちろん第三者には相談事は人ごとだからという不真面目さはあってはなりません。相談に真摯に寄り添うという熱意が,当事者の気持ちを揺さぶることになります。調査救済における委員の祈りです。
(2015年02月05日)
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