*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【幸権?】


 兄弟がいて,兄が友人宅からケーキを頂いてきました。母親から弟と半分にするように言われた兄は,二人で分けて食べていました。そこに父親がやってきて,「お母さんはなぜ分けて食べるように言ったんだろうね?」と尋ねました。
 しばらく考えていた兄は,「弟が可哀想だから」と答えました。思いやりの気持ちを持っているから,「分けてあげた」のです。そのとき,兄は弟のありがとうを期待しています。そこで,弟がありがとうと言わないと,言うように求めます。
 弟は,あっさりと「次はぼくがお返しする」と答えました。貸し借りという形で受け止めて,今日は借りておくことにしていますが,返すまでは兄から貸しがあると言われるかもしれません。
 二人の答えを聞いていた父親は,「お母さんが分けるように言ったのは,分けて食べたほうが美味しいと思える子になって欲しいからだよ」と教えました。
 兄は弟の喜ぶ顔が見たいと思ってギブがしたくなる,弟は単純に喜んでいればいいのです。思いやりの行動はしてもしなくてもいいことであり,すれば恩着せがましくなり,一方で貸し借りでは後での帳消しが必然になり,それまでは気持ちの負担を招きます。
 ドウゾは人間らしく生きる手立てですが,初級から上級まであります。初級とは,我慢してドウゾと言うときであり,上級とは,喜んでドウゾが言えるときです。貸し借りを生じないドウゾが豊かな人間関係を実現します。幸せになりたいという人権が目指している実践です。

(2023年10月14日)