【生きる羅針盤の提案(13):QOL】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
******************************************************************
「私が生きる羅針盤」を考える第13版です。今号では,当たり前のようで身近なことを見直して,生活の質を向上させて人生の質も向上させられるとして,QOLを向上するために意識を向けるべき身近な要素についての選別例がネット情報で目に入りましたので,人権羅針盤に対応を試して見ることにしました。
【健康維持を決断】
《説明》《1.ボディーヘルス》 人間の基本は体です。毎日元気に活動するためには,健康が基本です!
○体にとって必要な栄養素をバランスよく美味しく食事に取り入れましょう。
○健康の維持のためには,適度な運動が欠かせません。
○リラックスした状態で安定した睡眠時間を確保することも大事です。
※生活の満足は,まず自らの健全な心身状況の確保が必須です。身体が健康であること,精神が安定していること,そのことをコントロールできるのは自分しかいません。もう一人の自分が自分の存在感を見失うことがないように判断し選択できることは自分を尊重する要件です。
【快適な環境で安心】
《説明》《5.快適な住環境》 生活を支えている基盤が住んでいる家です。
○整理整頓されすっきりした部屋や自分の好きなものがきれいに並んだ部屋だと,心もなんだかスッキリします。寝起きで勝手に目に入るような考えたこともない部屋の風景,されど生活・人生の始まりと基盤の風景です。見過ごせません。まずは,自分の部屋からどうでもいいモノをそのままにして,どうでもいい部屋にしないために,心地よく感じる,安心できる空間を作ることなどを心がけてみましょう。
※生活の満足は自分の身体管理だけでなれるものではありません。環境という温かな空間との関わりに備わっています。自然な環境との穏やかなつながりを実感できて,環境と一体化できる安心感が必須なのです。
【日常節目を表現】
《説明》《6.レジャー・アクティビティ》 平日は仕事を,休日はしっかりと遊ぶといった,メリハリをつけることが大切です。
○人間は忘れゆく生き物なので1分1秒ごとを覚えておくことができません。その代わりに,人生の節目節目を言語化して思い出として記憶します。
○行ったことのない土地を旅行する・レジャーを楽しむなど,いい思い出を残すことを意識してみる,休みの時間もきちんと充実させるといったメリハリのある生活パターンを心がけると,日常の頑張るモチベーションにもつながります。
※生活の満足は,生活の状況を具体的に認知できなければ得られません。こういう楽しいことがあったという記憶の数々があふれていることが必要です。何もなかったという無為感では満足することができません。日頃からメリハリのある生活記憶を怠らないことも,生活の満足の向上には有効な習慣なのです。
【人間関係に参画】
《説明》《3.良好な人間関係》 大前提として人はひとりでは生きていけません。
○当たり前のように家族や友人,職場の人など誰かの支えやつながりがあってこそ,今の自分があります。周りの人に感謝する気持ち・許しあう気持ちを持つことは,自分自身を豊かにできます。
○自分と違う考え方の人に白黒つけるより,いろんな人がいることを認めて選ぶことで,また違う人間関係が楽しめるはずです。
※生活の満足は人の間にあるものであり,そのことに気付いたから,人間という言葉が生まれたのだと思ってみましょう。人間らしい振る舞い,それはお互いを豊かにすることであり,決して自分だけが豊かになることではありません。相互扶助に喜びを見つけることができると,生活の満足への道に踏み込んでいけるはずです。
【自己目標を希望】
《説明》《4.やりがい》 マンネリ化した毎日に物足りなさを感じていませんか?
○同じことを繰り返すだけの日々より,新しいことに挑戦し,刺激を求めることも大切です。人生を充実させるためには,やりがいや目標を持つことが大切です。
○仕事の充実とプライベートの充実。この二つを整えることでやりがいや目標が新たに見えてくるはずです。自分のことを考える時間や向き合う時間を作ってみてください。生きることの意義をやりがいに結びつけることができると,生活の自己評価が進み,満足感が湧き上がってくるはずです。
※生活の満足は,生きようとしていることから訪れてきます。朝を迎え目を覚ましたとき,今日は何をするということが見えている,その自分を動かす意欲の維持が,時間という無情に失われていく価値を満たされているという感覚に転換してくれます。もちろん,休息という無為の時も,日々の繰り返しに織り込むことは言うまでもありません。安らかな日々の休みも満足感を支える一部なのです。
【可能追求で成長】
《説明》《2.メンタルヘルス》 社会生活では心の健康はとても重要です。
○明るく前向きに考えてみませんか? また,1つの考え方から白や黒を探さずに違う観点から見ることで見えてくる楽しさもあります。客観的に自分の人生の明るい部分に目を向けることも生活をよりよくしてくれます。
○考え方や心の持ちよう次第で、見える景色は大きく変わります。景色が変われば,今までとは違う感情で豊かに過ごすこともできそうです。
※生活の満足は,人としての成長があるから獲得していくものです。昨日の自分から今日の自分に育つことが認識できるためには,昨日の自分が失敗してできなかったことを,今日の自分はできるようになるということです。失敗してできない自分のままに見限っては,自分を見捨てることになります。成功するようになることができるという明日への可能性があるから,日々の生活への満足の扉が開くのです。
○以上,QOL(クオリティオブライフ)の観点から生活の質を充実させる6つの要素をまとめていたネットで見つけた記事を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じで,一応の整理をつけることができていると思います。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
******************************************************************
社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年04月27日)