*****《ある町の退任人権擁護委員のメモ》*****

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【生きる羅針盤の提案(48):育児6困惑】


 人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。

 「私が生きる羅針盤」を考える第48版です。親は子どものためを思って最善を尽くしますが,期待と現実のギャップや周囲との比較,また自分自身の過去を振り返って後悔することで,親が育て方を間違えたと感じる理由に焦点をあてて考えてみようという記事が目にとまりましたので,生きる羅針盤に参照してみました。
  ※参照先の「親が『子どもの育て方、間違えたかも…』と思う瞬間とは?悩みすぎないための考え方」は こちらです。

生きる羅針盤の提案(育児6困惑)です
【A子どもが自立できず,親に頼りきりになっているとき】
《説明》着替えや学校の準備,提出物の管理など,子ども自身が本来できることを全くやらず,親が常にサポートしなければ何も進まない場面に直面すると,多くの親が育て方を間違えたと感じます。
 親が何でも手伝いすぎた結果,子どもが自立する力を奪われてしまったと感じてしまうのです。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,もう一人の子どもが状況を判断し自らの行動の選択を決断できるように導くことです。親に頼り切りになっているのは,頼ることをしつけられたからであり,親としての育て方が手抜かりになっています。そのことに気付いたら,もう一人の子どもに選択決断できるように,選択肢を与えるようにします。放り出すのではなく,指導して後に決めるのは任せることです。《WHO》

【E子どもが家で暴言を吐いたり,暴力的な態度を取るとき】
《説明》家庭内で子どもが暴言を吐いたり,ものを投げたりするようになると,親は育て方を深く後悔します。
 特に,親自身が怒りに任せて強く叱りつけたり,夫婦間で言い争いを頻繁に繰り返したりしている場合,親は自分たちの態度や言動が子どもの攻撃性を高めてしまったのではないかと考えます。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,子どもが安心できる居場所を与えることです。不安な状況に置かれていると,育つどころではなく,不安から逃れようともがくために,気持ちも行動も荒れていきます。そうせざるを得ないのです。不安だから攻撃的になる,そう気付けば,親自身の育て方における手抜かりが明らかになるはずです。困惑したら,改めることです。《WHERE》

【@子どもが自分の話を全然してくれないとき】
《説明》子どもが学校であったことや自分の気持ちをまったく話さない状況が続くと,親は自分の接し方を振り返り,不安になります。
 これは幼少期に子どもの話を聞かなかったり,適当に返事をしてしまった結果かもしれないと親が感じるからです。子どもの心が親から離れてしまったと感じる瞬間は,特に胸が痛むものです。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,もう一人の子どもとの言葉の交換を豊かにすることです。もう一人の子どもは親が与える言葉を受け取り,使ってみることで,その意味を理解し賢くなっていくことができます。子どもは言葉の前に振る舞いによる表現をしています。ちょっとした仕草によってアピールしたい気持ちを伝えようとしています。言ってごらんという傾聴の姿勢で向き合う時間を与えると,覚束ないながら伝わってくるものがあります。話さないのではなく,聴いていないという自分の反省が必要なのです。《WHEN》

【C子どもがわがままで,自分勝手な態度ばかり取るとき】
《説明》子どもがいつも自分の要求を通そうと泣いたり怒ったりする姿を目にすると,親は自分が甘やかしすぎたのかと心配になります。
 「子どもの気持ちを尊重する」と「子どもの言いなりになる」の線引きが難しく,親が子どもを育てる中でその区別が曖昧になってしまった結果,子どもがわがままに育ってしまったのではないかと感じてしまうのです。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,誰かと関わる事柄ではある程度の我慢や待ちが必要であるというお互い様を受け入れることです。今叶えるのではなくしばらく待ってからなら,それは駄目だがこれなら可能とか,折り合うことを覚えなければなりません。泣いたり怒ったりしても,それは何の意味もないこと,かえって要求を遠ざけることになるという経験をさせます。一方的に要求するだけではなく,実現するために自分が何をすればいいのかをともに考えてやります。《WHAT》

【B子どもが友達とトラブルを頻繁に起こすとき】
《説明》子どもが学校や遊び場で頻繁にトラブルを起こすようになると,親は自分の育て方を強く疑います。
 「もっと子どもの気持ちに寄り添ってあげればよかった」「人付き合いの方法を教えきれていなかったかもしれない」と感じることがあります。特に,攻撃的な態度を取る子どもを見ると,家庭での言動を後悔してしまうでしょう。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,子どもが失敗やトラブルを未然に防ぐ癖を身につけるように導いてやることです。こうすればこうなるだろうという先のことを全く気にしないで行動するから,不都合なことに直面しやすくなります。トラブルにしても,注意していれば避けられますし,たとえ起こったときも不可抗力としての許しがあるでしょう。何の配慮もないトラブルが許されないことなのです。先の成り行きを見ることが大事です。《WHY》

【D子どもの将来を考えると,不安が止まらないとき】
《説明》子どもが勉強に興味を持たず,成績が思うように伸びないと,親は自分の教育方針を振り返り,「あの時もっと塾に通わせればよかった」「もっと勉強を強く促すべきだった」と過去を後悔します。
 将来への漠然とした不安が,親の心に重くのしかかり,子どもの今の姿を直視することができなくなってしまいます。

※私たちが親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,将来から子どもを見定めるのではなく,今現在の子どもにできることを見つけることです。大人と比べると子どもは未完成ですから,至らなさばかりが見えてしまいます。赤ん坊であった子どもからみれば,それなりに育ってきているはずです。今できるところ,その一歩先を目指すことです。成績で言えば,今60点なら65点を目指して,できることを探せばいいのです。できたという経験を重ねることが,育ちの一歩になります。《HOW》

○以上,親として子どもの育ちに寄り添うときに留意しなければならないことは,完全無欠な子育ては不可能であり,目の前の子どもに相応しい関わり合いを心がけることです。困惑する事柄に出会ったら,それは留意点が見えたということで,きちんと対処していけばいいのです。そのために20年という長い育ちの期間が人には与えられているのです。大事なことは,この考察で示したように,育ちには6つの視点があるという,総合的な対処を意識しておくことです。
 6つの困惑事例についての指摘を「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。

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 社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
 人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。

(2026年01月04日)