*** 子育ち12章 ***
 

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「第 8 章」


『ありがとう 素直に言える 子どもたち?』


 ■はじめに

 第7章では,「力」とは外に向けて出すときに現れると書きました。
 自分のために使う学力は,生きた力にはなりえません。
 なぜなら,いわゆる知識をただため込んでいるに過ぎないからです。

 子どもは成長するにつれて,一般の大人社会につながってきます。
 社会人として育たなくてはなりません。
 そのためにしつけておかなければならないことは何でしょうか?

 道を踏み外した子どもたちには,罪の意識がないように見受けられます。
 近所の人は,「あんないい子が!」と驚いています。
 どうして平然と悪さをしでかしてしまうようになったのでしょうか?

 大事なしつけを怠ってきたためです。
 素直でいい子というイメージを再確認する必要がありそうです。
 社会生活上で最も大切なキーワードを探すのが,この章のテーマです。
 


【質問8:あなたのお子さんは,力を生かそうとしていますか?】

 《「力を生かす」ということについて説明が必要ですね!》


 ○優秀な子がアブナイことをしでかすのは,どうしてでしょうか?

 たとえ話からはじめましょう。大学で船のエンジンについて学んだ優秀な技師が,船を高能率で運転しています。技能をフルに発揮していました。でも,その船は海賊船でした。技能は正しく使われなければ意味がありません。毒ガスを作った優秀な若者もいましたね。

 専門家になることの弱点は,力を発揮することにだけ関心が向いて,力を生かすことが疎かになることです。それぞれのエキスパートが集まって仕事をする場合,自分の力が何に使われているのかが見えにくくなります。与えられた役割だけ果たしていればいいという狭い世界に閉じこもるからです。

 力を生かすためには,どんなことを意識しておけばいいのでしょうか? 賢いことはいいことですが,ずるがしこいことはいけませんね。なぜでしょうか?  映画のなかで,フィリップ・マーロウという探偵が「強くなければ生きていられない,優しくなければ生きている資格がない」と語りました。確かにそうなのですが,それを子どもたちにどのように伝えていったらいいのでしょうか? そのことを考えてみましょう。

・・・力を生かすことは,人が生きていく資格に関わることです。・・・


 ○毎日どのようなルールを意識して暮らしていますか?

 皆さんは法律の勉強をしたことがありますか? 社会生活上で「してはいけないこと」が書いてある刑法など読んだことのある人は少ないでしょう。それなのにみんな平気で暮らしています。法律など無縁なものとしていて,大丈夫ですか? どうして法律を知らなくても暮らせるのでしょう。

 法による禁止事項は行動の赤信号です。犯せば罰せられます。ところが,普通は行動の黄色信号で停止しています。「人に迷惑を掛けないように」という信号です。だから,法を知らなくても暮らしていけるのです。もし人の迷惑が見えなくなったり無視したりすると,そのときは法に触れるようになります。

 人に迷惑をかけないように暮らそうとしても,少しの迷惑はかけてしまいます。そこで「済みません」と謝罪をしたり,「ありがとう」と感謝をします。お互い様という暮らしが営まれていきます。そこで子どもにも,「アリガトウは?」と,しっかりとしつけます。アリガトウが言える素直ないい子が育っていきます。ここまではいいのですが,・・・。

 問題が二つ出てきます。一つは「迷惑を掛けなければ」という甘えです。知った人の誰にも迷惑をかけていないという逃げ道を見つけてしまいます。その逃げ道はやがて迷惑を考えないわがまま道になります。バスのなかで騒ぐ子どもを放置する親も,人の迷惑に対する感度が鈍っています。マナーやエチケットという言葉が置き去りにされています。おそらくみんなのひんしゅくを買うことで,袋小路に迷い込み立ち往生することでしょう。

・・・迷惑をかけないルールは必要ですが,十分ではありません。・・・


 ○鼠小僧はどうして義賊と呼ばれたのでしょうか?

 もう一つの問題を例題を使って考えてみましょう。江戸時代に鼠小僧と呼ばれた盗人がいて,大店から金を盗み,貧乏な長屋の住人にばらまいていました。みんなよろこんで義賊とたたえていたそうです。このことから大事なポイントが見つかります。

 世の中は「ギブ・アンド・テイク」で動いていますね。そのことはよく知られていますが,大事なことはギブが先であって,「テイク・アンド・ギブ」と順序を逆にしてはいけないということです。鼠小僧はテイクした後にギブしています。普通の泥棒はテイク(取る)するだけですが,鼠小僧はギブ(与える)しているので,義賊と呼ばれたのです。でもやはりテイクを先にしているので泥棒にかわりはありません。テイクを先にするのは闇のルールです。

 子どもたちの非行,例えば,万引き,自転車盗,恐喝,おやじ狩り,窃盗などは,いずれも盗ること,取ること,つまりテイクする行動です。闇のルールに従っています。その上,そのことに対して間違っているとか,悪いといった意識が希薄です。実は,そのように育てられてきたからです。その秘密は,鼠小僧が盗んで帰る際に言い捨てる「アリガトウ」という言葉にあります。次に続きます・・・。

・・・鼠小僧も素直に「アリガトウ」と言っています。・・・


 ○美しい言葉には刺があるかもしれません?

 アリガトウは最も美しい日本語だと言われています。だから,アリガトウと言える子どもは素直ないい子なのです。しかし,この言葉は美しいが故に棘を潜めています。その棘は「受け取る(テイク)」ときの言葉だということです。

 子どもは親や周りの大人からあれこれ世話を受けて育ちます。その都度「アリガトウ」の言葉をしつけられ,素直に育ちます。あれこれ欲しいものが出てきても,ただおねだりするだけで待っていることしかできません。やがてテイクできる獲物を親以外に探すようになります。テイクすることしか知らないので,店や他人から取ろうとします。そうすればアリガトウと言えるからです。

 かつて,豊かさが実感できないという言い方がされたことがあります。欲しいものはおよそ手に入って,これ以上欲しいものがないのに,豊かである実感がわかないということのようでした。ものの豊かさは受け取る豊かさ,アリガトウという豊かさです。テイクには際限がないから当然です。大人も子どももアリガトウに縛られている世情は不健全です。

・・・アリガトウは,テイクするときの言葉です。・・・


 ○ものの豊かさより,心の豊かさに!

 人間関係は二人の人から成ります。アリガトウは待っている言葉ですから,関係が作れません。いきなりアリガトウはあり得ません。知らない他人が行き会ったとき,ドウゾと譲る人がいるから,アリガトウと関係が成立します。ギブアンドテイクを思い出してください。「ギブするときドウゾ」と言い,「テイクするときアリガトウ」となります。

 英語でプリーズとは,相手を喜ばせるという意味があります。ドウゾと相手に与えることが先です。これが表社会のルールなのです。自分ができることを相手にドウゾと提供すること,それが「力を生かす」ということです。繰り返しますが,テイクするために用いられる力は,闇の力です。

 子どもには,アリガトウとドウゾをセットにして教え,ドウゾが先なんだとしつけなければなりません。ドウゾと言える子は非行と無縁になります。本当にいい子とは,ドウゾが使える子どもです。ドウゾという言葉は,優しく思いやりのある子どもにしつける魔法の言葉です。同時に,人に向けて自分から働きかけることができますから,自発性や積極性にもつながっていきます。

 ものの豊かさがアリガトウの豊かさなら,心の豊かさはドウゾの豊かさです。イギリスには「牛乳を飲む人よりも,届ける人が健康になる」という俚諺があるそうです。人にドウゾと行動することが,ひいては自分の幸せへの道になります。どちらの豊かさがお望みですか?

・・・ドウゾが表社会のキーワードだと思い出しましょう。・・・


 ○ドウゾのしつけは?

 子どもにドウゾをしつけることは難しくありません。ドウゾという立場に置いてやればいいのです。そのために,親や大人がアリガトウの立場にいて,子どものドウゾをひたすら待てばいいのです。子どもがタマにでも手伝ってくれたら,そのときを逃さず,「アリガトウ」と笑顔で言ってやるのです。

 非行に落ち込んだ子どもは,親から「アリガトウ」と言ってもらったことがないと語ります。大人がアリガトウと言えば,子どもは自然にドウゾと言えて,その喜びを体験できます。ママが喜んでくれたということほど,子どもをやる気にさせることはありません。

 注意してほしいのは,親が「しなさい」と命じてさせたら,アリガトウと言えないことです。アリガトウは待つ言葉であることを忘れないでください。子どもが持っている力を「ママに向けて使って!」と,受け取り手になってあげることが大切です。それが基本的な「生きた力」の発揮法だからです。

・・・親がアリガトウと言うことが,子どもへのドウゾのしつけです。・・・



《力を生かすとは,ドウゾと引き出されているかということです》

 ○親は保護者として子どもにドウゾという立場にいます。そのことが,子どもをアリガトウしか言えない子どもに育てます。親が子どもに手伝ってもらうようにし向けて,アリガトウと育てれば,子どもは本当にいい子に育つはずです。昔はそうやって育てていたのですから,できないはずはありません。

 【質問8:あなたのお子さんは,力を生かそうとしていますか?】

   ●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!?

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