『子育ちは 弱い自分を 慈しみ』
【目標 42-09:弱さを認めること】
■子育ち12目標■
『子育ち第9目標』
〜「弱さを認める」ということの意味について説明が必要ですね!〜
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○明るく元気な子でなければいけませんか?
かつて,ネクラな姉がネアカな妹を刺した事件がありました。姉はネクラでは生きられないと周りから言われ続けていました。自分がネクラに見えるのはそばにネアカな妹がいるからと思いこみ,妹さえいなくなればと追いつめられていきました。自分の存在を脅かす妹を消すことで,自分に向けられる圧迫を回避しようとしたのです。
ネクラなどは相対的なものであり,たとえネアカであってももっとネアカな者のそばに行けば,ネクラに見えてしまいます。そもそも,ネクラであって何がいけないのでしょうか? 人に可愛がられないとか,人との関係が結びにくいといった心配があるのでしょうが,それほど気に病むほどのことではありません。
教室の前に「明るく元気な子」と大書してあります。ネクラで弱い子は毎日それをどんな思いで見ているのでしょうか? 明るく元気でない子は仲間ではないといった雰囲気がある中で,登校する気持ちに水を差されていきます。保健室なら登校できます。なぜなら,そこは弱い子だから温かく迎えてくれる場所だからです。
簡単になれそうもないことを無理強いすることは間違っています。ネクラであっても弱くてもいいんだと,徹底的に認めてやるのが家庭です。学校は元気な子とそうでない子達がどうすれば仲良くやっていけるかを学ぶ所です。決して弱い子を元気にする病院ではありませんし,ましてや仲間はずれにするようなあくどいことなどもってのほかです。
・・・明るく元気な子というイメージには,陰湿な暴力性が潜んでいます。
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○みんなが同じように育たなければいけませんか?
ヒロシ君が算数のテストで80点でした。答案を見てママが「お隣のカズミちゃんは?」と尋ねました。「90点」と答えると,すかさず「ダメじゃないの,もっとしっかりしなくちゃ」とにらまれてしまいます。「でも,タカシ君は60点だったよ」と小さな声でつぶやいたときです。ママは「人のことなどどうでもいいの」と追い打ちです。
班学習で担当分ができなかったとき,みんなが迷惑すると責められます。自分のことは責任を持ちなさいというわけです。みんなが決めたことが絶対的な束縛になって締め付けてきます。その息苦しさから,学校への道は遠のいていきます。班学習とは各自が単に公平に分担するということではなくて,班全体として何事かをやり遂げる協力が目的です。得手不得手のある仲間が集まってお互いをカバーし合うということです。
自分のことは自分ですべきという束縛が強すぎると,何でも自分でできなければならなくなります。みんな同じに育つということは,個性を殺すことです。一人ひとりが持ち味を出すことが個性なら,そこには得手不得手や,強さ弱さが必然として現れるはずです。弱い人がいるからこそ,個性を発揮できる場が用意されます。お互い様という関係です。
・・・同じであることは,弱さを負の価値に追いつめてしまいます。
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○少子化によって失われたことは,どんなことなのでしょうか?
少子化になると子どもには兄弟や姉妹がいなくなります。やがていとこやおじおばもいなくなりそうです。きょうだいも三人以上でないと集団としての育ちができません。二人だとケンカをした場合,互いにそっぽを向いていれば済みます。三人以上だと,三人目が仲を取り持とうとして,収まるようになります。兄や姉が弟妹たちを「いい加減にしたら」となだめる役を果たすように育ちます。この仲裁慣れをしていることが大切です。
クラスでいじめなどが起こります。昔の多子時代には,クラスの3割程度が家では兄姉でした。悪ふざけがあっても,「その辺でいいだろう」という兄姉としての仲裁をし,他の兄姉も同調するので,いじめになる前でやめさせることができていました。今は,兄姉が育っていないので,止め役をかってでる子どもが現れず,歯止めがかかりません。
子ども集団の基本はきょうだい関係です。弟がお兄ちゃんについて回って,よその子との縦関係が結ばれていきます。今はきょうだいがいないから,縦関係の持ち方を知りません。縦の関係を持つことの重要さは,弱いものとのつきあい方を学ぶことです。弟や妹がついてくると,それなりにかばってやらなければなりませんし,遊びでもハンディを与えなければなりません。免除したり,肩代わりをしてやったり,いろんなやり方を考えます。
この縦関係を通して,子どもは年上の子に比べて自分たちが弱いことを知り,年下の子に対しては強いことを自然に納得します。弱くてもそれなりにつきあっていけること,強いものが弱いものをかばってやらねばならない優しさを身につけていきます。きょうだいのいない今の子は,同じ年の子どもとだけつきあっているので,強さも弱さも自覚できません。年上の子との大きな差ではなく,同じ年の子との小さな差異にとらわれています。50円玉や100円玉は,10000円札に比べたら同じようなものという弱さの自覚が失われています。
・・・少子化は強さ弱さの自覚と,共に過ごす社会性を失わせました。
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○いじめられるような弱い子どもだから死んでいくのでしょうか?
悲しいことですが,子どもたちの自殺が起こってします。原因はイジメや恐喝など,人を追いつめていく悪行です。もちろん悪い手は厳しく制止しなければなりません。しかしそれだけでは十分ではありません。イジメ以外にも子どもを追いつめることがあります。自分の弱さを死によってしか逃れられないとしたら,それは育ちを否定することになります。
たとえいじめられても死の直前ぎりぎりのところで思いとどまっている子どもがたくさんいるはずです。いじめられたらみんながみんな自殺するわけではないのです。何があっても生き続けようとする気持ちを持っているからです。
親は子どもに「生きる力」を持たせようと育てています。生きる力の中身については前章で述べておきましたが,それはあくまでも生きる上でのテクニックに過ぎません。生きる目的,あるいは生きる喜びを持たせてやらなければ十分ではないのです。生きる喜びが悩みに勝っている限り,死は決して選ばれることはありません。
もう一人の自分が生きる喜びを抱き,自分の持っている生きる力を発揮するとき,もう一人の自分は自分を生かし続けます。自殺とは,もう一人の自分があきらめてしまって,自分を殺そうとすることなのです。育てているのはもう一人の子どもだということを再確認しておきましょう。
・・・生きるとは,もう一人の自分の生きる喜びに支えられています。
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○人は弱かったら,生きていてはいけないのでしょうか?
人の一生は弱い赤ちゃんにはじまり,年老いて弱くなって終わります。社会生活は強くなければ務まらないというのが一般的なイメージです。ですから,子どもは学校に,お年寄りは施設にとちょっと脇にどけておくようになります。手が掛かるから子どもは要らないという気分に流され子どもは激減し孤独を押しつけられ,長寿になって年寄りが増えて大変だという声をお年寄りは肩身の狭い思いで聞いています。
弱い者が気兼ねをしない社会が心豊かな社会ですが,実際には心貧しい社会ができようとしています。それが子育てに反映しかかって,子どもを育てなくしています。弱くてはいけない,弱さをマイナス価値と断罪する非情さの前では,子どもはひとたまりもありません。自衛手段として,子どもは自分の弱さを否定して自惚れてしまい幼児のままで育ちを停止したり,弱さを拒否して自暴自棄になり社会に反逆しています。
自分の弱さから目を背けたら,人の弱さが見えなくなり,暴君になります。優しさは自分の弱さを知っているからこそ発揮できます。弱いからこそ弱い者同士で社会を営んで生きてきたのがヒト社会です。自分が弱いと自覚してはじめて,育ちへの意欲が生まれます。自分は強い大人だと思ったときに,成長は止まります。未熟さを容認することが自己実現のスタートラインです。ソクラテスの語った自分の無知を知れという言葉も同じ意味です。
生きる喜びや意欲は,「自分は今弱いんだ」ということを容認した上で,助け助けられる温かさを感じ取り,弱くてもできることがあるという存在感を実感し,明日になったらもっといいことがあるという期待を持つことです。
・・・弱いという自覚があるからこそ,生きる喜びが持てるのです。
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《弱さを認めるから,自分を肯定することができます》
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子育ち第9目標は,なぜ育つのかという五つ目の課題に対する第1の解答であり,「もう一人の子ども」が自分のありのままを認める勇気を持つことです。鳥を見て自分も飛びたいと思います。手を広げてバタバタと動かし走っていきます。飛んでいるつもりです。子どもはごっこ遊びをして,今の自分にできること,できないことを見分けていきます。大切なことは,できない自分を見限らないことです。今はできないけど,やがてできるようになる,その希望を持ち続けなければなりません。
育ちは向上心によって進みます。このままでよいという気持ちになり向上意欲を眠らせると,育ちは停滞します。座していては何も実現されません。夢を叶えるには,目指す目標を設けて,日々精進をし,努力を積み上げていくことが必要です。人は日々変わっていくものであり,その変わり方はある程度選ぶことができます。望ましい変わり方を自分に招き寄せるように,今日の自分を励ますことがもう一人の自分の役割です。
★落書き★
この頃学校でハーモニカという吹奏楽器は使われているのでしょうか? ハーモニカはド,ミ,ソは吹いて音を出し,レ,ファ,ラ,シが吸って音を出します。ドレミと音階を上がっていくと,ラとシは続けて吸う音なので,少しつらい吸い方になります。どうしてラとシは続けて吸う音なのでしょう。吹く・吸うを交互にしたいのですが,そうすると,音階が7音しかないので,1オクターブ高いドが吸う音に変わり,以降の音も吹く・吸うが逆になり,かえって演奏しづらくなるからです。