『子育ちは 今の自分を 見極めて』
【目標 42-11:失敗を楽しむこと】
■子育ち12目標■
『子育ち第11目標』
〜「失敗を楽しむ」ということの意味について説明が必要ですね!〜
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○どうして若者は指示待ちに育ったのでしょうか?
小学校六年生の男児が冬休み最後の日に,宿題の書き初めをしていたときです。ついうっかりして墨をこぼしてしまいました。流れ落ちた真っ黒な墨は床の絨毯に吸い込まれていきました。あわててティッシュで拭き取ろうとしましたが,間に合いませんでした。男児は習字紙に「墨をこぼしてしまいました。ごめんなさい」と書き残して,自宅の6階から飛び降りてしまいました。書き初めの課題は「希望の光」という字でした。
レンタルビデオを紛失して自殺した高校生,卒業論文の修正が期日に間に合わないと自殺した大学生がいます。どれも死ぬほどの大層なことではないと思われるでしょうが,当人にとっては死ぬほどのことであったのです。そう思いこませるように育ててきたのです。絶対に失敗してはいけないともう一人の子どもを追いつめてきたから,若者は自分の失敗を極端に恐れ,回避しようと心を砕きます。
失敗は命がけですから失敗できません。そこで子どもは保身として失敗しない方法を見つけだしました。それは自分からは何もしようとしない決意です。何もしなければ絶対に失敗はしません。これほどの安全策はありません。
何もしないでは育てませんから,親は無理にさせようとして指示を出します。言われたらします。そんな状態を大人は「言わないとしない」と嘆き,指示待ちの若者を非難しますが,そのように育てたことの反省がありません。ところで,なぜ言われたらするのでしょうか?
言われてした場合でも失敗は起こります。大人がその失敗をとがめようとしたとき,「自分がしようとしてしでかした失敗ではない。言われるからしたのであって,失敗の責任はさせた方にある」という言い訳ができます。自分の責任で失敗はしていないのです。だから言われればします。
・・・指示待ちの若者を育てることができたことは,育ての成果です?
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○失敗しないように育てて,いったい何処がいけなかったのでしょうか?
失敗しないようにしていると,子どもはいつも安全圏に閉じこめられます。親としては安心ですが,親も子どももここまでは大丈夫という限界が見えなくなります。親は子どもの能力の育ちが見えない,子どもは自分の実力が分からないので,自信が持てず育ちにブレーキを掛けて臆病になるか,抑えが効かず暴走するようになります。
失敗したところは,子どもが最高の能力を発揮している育ちの芽に相当します。これ以上できないところで失敗をします。つまり,失敗の一歩手前までは子どもの能力が育っているのです。スポーツの練習でももうちょっとでできそうなところを繰り返し練習するから,できるようになっていきます。
失敗をさせないということは,この育ちの芽を握りつぶすことになります。失敗しないように育てることは,育てることにならないのです。育てるとは失敗を上手に引き出すことから始まると考え直すべきでしょう。子どもが余計なお手伝いをかってでて,かえって手間がかかることがあります。そんなしくじりをさせてやれるのは,ママしかいないとあきらめてください。
・・・失敗の繰り返しが,親も子も育ちの年輪を刻んでくれます。
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○過保護と保護の違いは何なんでしょうか?
親は保護者ですから,あれこれ気を遣って保護します。ところが,最近の親は過保護であると言われてしまいます。過保護とは子どもができることまで親がしてやることと考えられています。確かにそういうことなのですが,肝心な点が今ひとつ分かりにくいので,親は自分の過保護に気づくことができません。肝心な点とは,「子どもができること」を親が正しく見極めているかということです。親は誰でもどちらかといえば心配性ですから,保護するためにいつも安全な所に子どもを置こうとします。それが過保護につながるのです。
例えば,赤ちゃんが伝い歩きをはじめるときです。ふらふらしていますから,転ぶとテーブルの角に頭をぶつけるおそれがあります。そこで保護者としては転ばないように赤ちゃんの身体をそっと支えるでしょう。それが過保護です。保護するというのは,転んでも怪我がないように,テーブルの角に親の手を待機させておくことです。大切なことは転ばせることです。転ばないように歩くのが,歩くという育ちだからです。転ぶことを取り上げたら,歩く練習にはなりません。繰り返しますが,転ばなくなったときが歩く能力のできあがりです。
小学生であれば,朝遅れないように親が起こしています。起こし忘れたら,親に文句を言うようになります。自分で起きるようにし向け,何度か遅刻をさせたらいいのです。もちろん,一時間目には間に合うように保護者として起こしてやらねばならないでしょう。小さな失敗をさせて,どうすれば失敗しなくなるか何度も練習するチャンスを与えないと,起きるしつけは成人するまでできません。
子どもはできないことばかりです。できるようになるためには,小さな失敗をさせながら,ゆっくり育て上げなければなりません。今,子どもはできないから親が保護してやっている,できることをしてやっているのではないので過保護ではないと考えていたら,育ちの邪魔になります。
・・・小さな失敗を取り上げることが,育ちの邪魔をする過保護です。
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○0点は好きですか,嫌いですか?
我が子の短所を思いつくままに数え上げてください。五本の指では足りないかもしれません。では次に長所を挙げていってください。即座に三つまで言えたら親として立派ですし,このマガジンは無用でしょう。普通はなかなか思い出せませんが,だからといって悲観しないでください。そのためのマガジンなのですから。
子どもはほめて育てるように言われます。でも,我が子はほめようにもほめるところがないという声も聞こえます。何をほめるかが曖昧になっているからです。100点取れたらとか,クラスで一番になったらほめてやれるでしょうか。ほめる子育てとは,そういったものとは違いますよね。
赤ちゃんが立っちできるようになったら,家中でほめましたね。歩き出した日は記念日になったことでしょう。子どもが大きくなってくると,課題も難しくなります。「ママ」や「パパ」としゃべりはじめたときは,笑顔でほめてやったのに,「本は一冊,鉛筆は一本,犬は一匹,鶏は?」と数え方をすべて覚えてくれないとママはご機嫌斜めです。「鶏は何て言うの?」と問いつめられて,幼い子どもは「コケコッコー」と答えます。
試験の点数は0点から100点の間ですね。どうしてなのか知っていますか? 試験の採点をしているとひどい間違いをしていて,マイナス点をつけたいと思うことがありますが,採点者はマイナス点を使えないのです。どんな間違いをしても0点なのです。社会では間違いに対して罰点としてマイナスがあり得ます。しかし子育ての場では決してマイナス点をつけないのです。間違いはすべて水に流して,できたところだけにプラスの点数を与えます。言い換えれば,「できたね」とほめる点数しかないのです。
子どもは勉強する前は0点です。勉強したからプラスの点がつきます。これが過去これまで全国で実行されてきた「ほめる子育て」です。ところが,何を勘違いしたのか,子どもは最初から100点を持っているはずと考えて,評点が60点なら40点も間違えたとマイナス点を持ち込んできました。これでは叱る子育てに裏返ってしまいます。0点が60点まで増えたのですから,ほめられるはずです。できなくて当たり前,できたらほめる,それがほめる極意です。
・・・0点の意味をもう一度再確認してください。
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○健全な子どもとはどんな子どもなのでしょうか?
プロとアマの違いは何でしょうか? 失敗をうまくごまかせるのがプロの資格だそうです。人は誰でも失敗やしくじりをします。そのことを認めた上で,失敗を有効利用してきたのが人類の知恵です。
ロケットの制御をするサイバネティックスという理論があります。ある目標を定めて飛行するとき必ずズレが発生します。そのズレを検出して修正し,行きすぎたらまた修正と,繰り返しながら目標に向かっていきます。大事なことはズレがなければ制御が出来ないということです。このやり方は元々は生物の行動様式でした。二輪車も左右に小さくズレを繰り返しながら,前に進んでいます。
人の行動はやってみながら,ずれたかなと感じ取ったら修正してやり遂げられていきます。生きること,育つことも同じです。失敗することでその原因が見えてきて,物事が分かり,次から失敗しなくなります。逆に言えば,失敗しなかったときが恐いのです。たまたまうまくいった場合があるからです。そのときは危険なポイントに気づいていないので,いつか必ず失敗の憂き目に会います。子どものうちならいいのですが,大人になって現れたら致命傷になりかねません。
自然界は人間の成長のために失敗を利用する知恵を授けてくれています。動物は偶然の成功しか当てに出来ません。この天与の才能を使わない手はありません。勉強が出来るとは,誤りをせず迷わないことではなく,それにつきあうことでセンスを磨き上げることです。
健全であるとは,失敗をしないことや間違えないことではなく,しくじりが小さな内にそれに気づき,立ち直る力を持つことです。悪いことをちょっとしてしまって,しまったと気づき,その原因を見つけて,二度と悪いことはしないという修復が出来ることが大事です。それが自制するプロセスです。悪いことをしなければ,悪いことに気づかないのです。兄弟げんかをしでかすから,仲良くするにはどうしたらいいのかを学べます。嫌な思いを体験するから,人に優しくするテクニックを覚えていきます。
子どもは失敗や間違い,イタズラや口げんか,嘘や汚い言葉など,少し羽目を外します。それを修復できるように育てなければなりません。それが健全な子どもなのです。健康とは風邪をひかないことではなくて,風邪にかかったかなと感じ取ったらすぐに対処できることであるということと同じです。
・・・小さな失敗をすることで,健全な子どもが育ちます。
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《失敗を楽しむモードに入ると育ちのエンジンが動きはじめます》
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子育ち第11目標は,どのように育つのかという六つ目の課題に対する第1の解答であり,「もう一人の子ども」が失敗を通して自分の実力を見極めることです。自分を正しく把握していないと育ちができません。口で言うほど物事は簡単ではありません。してみなければ分からないことがたくさんあります。はじめからうまくいくわけではありません。今の自分にとっての課題が何かを見つけるためには,失敗しなければなりません。すねにできた傷は育ちの証明書になります。大けがはしないようにしながら・・・。
したことがないことはできません。できないままに繰り返しても,できるようにはなりません。やり方を変えようにも,変え方が分からなければ,どうにもできません。周りにいる人のやり方を見つけて,見よう見まねをするしかありません。真似を繰り返すこと,それが学習です。いくつかのパターンを学習すれば,次は応用によってことが片付くようになります。基礎を学習し応用力を磨けば,未知のことに対して挑戦し創造に至ることが可能になります。自分以外の多くの人の経験を共有すること,それが学習です。
★落書き★
ブタの貯金箱は世界中で愛されています。ところで,ブタとお金を結びつける因縁は特に見当たりません。ブタに真珠と言いますが,貯金とは逆のことです。中世ヨーロッパでは,家庭用品にピッグと呼ばれるオレンジ色の粘土で作られた陶器が使われていました。倹約して小銭を貯めていましたが,今と同じように手近な陶器を貯金箱に用いていました。やがてピッグは使われなくなりましたが,ピッグ・ジャーという名前が貯金箱を指す言葉として残りました。18世紀にイギリスの陶芸職人が貯金箱を作る際に,ピッグをブタと勘違いして,ブタの貯金箱を作りました。見た目が可愛かったので,人気になって広まったそうです。