『子育ちは 言葉の質が 品格に』
■子育ち12幸育■
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『子育ち第5幸育』
【発された言葉は大きな力を持つと弁える】
《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第92版では,こどもが幸せに育つとはどういうことかを考えておきます。こどもには幸せであってほしいと願いますし,幸せになるために育ってほしいものです。何となく育っているのではなく,育つ喜びを発揮して欲しいのです。これまでの羅針盤がどこを目指しているのか、それは幸せであるということを確認しておきたいと思います。
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《幸福であるために》
朝目が覚めて,「起きようか」と言葉を掛けながら,身を起こします。「ねむいな。もう少しいいだろう」という言葉を掛けると,身は寝床に沈み込みます。もう一人の自分が自分をコントロールするために使っているのが,言葉です。もしも言葉がなかったら,動物のようにごく自然な暮らしぶりになるでしょう。体の成長には食事の豊かさが大切ですが,同じように心の成長には言葉の豊かさが大事です。言葉を持って使っていても,その言葉の品質がよくなければ,心は貧弱な育ちをすることになります。
マイナスイメージの言葉ばかりに浸っていると,気持ちが沈み荒みうらぶれた行為に走るようになります。「あなたってダメね」,そう言われ続けると,本当にダメになっていきます。子どもが自分を大事にするためには,自分のよいところを言葉で意識する必要があり,だからこそ子どもをほめてやらなければなりません。褒め言葉によって,子どもは自分のよいところを自覚でき,自分を大事にすることができます。プラスイメージの言葉を覚えていくことで,子どもの育ちは豊かなものになります。
《幸福になるために》
情報社会になって,言葉の力が格段に増幅されています。ごく身近な範囲に届けるつもりで発した言葉がネットという媒体を通じてしまうと,とんでもない広がりをおびてきます。ちょっとした店舗での悪ふざけが,ふざけという言葉の軽さを失って,店舗を閉鎖させる重さに増幅されていきます。ちょっとしたいたずらのつもりでつぶやいた落書きでも,大騒ぎを引き起こしたり,人を死に追いやったり,とんでもない結末を招き寄せます。正しい言葉の使い方をしないと,大きな責任を背負い込むことになりかねません。
中学生の中で「ガイジ」という言葉がささやかれています。「障害児」から生まれて,害児,ガイジとなります。差別的な言葉で,この言葉を投げかけることで,いじめをしています。この言葉が一人から言われるのではなく多数から言われるので,その痛みは増倍します。ネット世界が多数の共通情報という怖さを持つのと同じように,多数の声は一人で受け止めるには無理があります。皆が言っている,それは孤立を宣告することであり,追放を言い渡すことになります。言葉の力を侮らない用心深さをしつける必要があります。
仲間内でしか分かり合えない隠語という言葉があります。言葉をつながりのキーワードにして,結束を固めます。言葉は人をつなぐ力があります。ところで,陰口という言葉の使い方があります。表向きは親しそうな話しぶりを見せていながら,陰では逆の貶めるような言葉が向けられることがあります。祖父母との間や夫婦の間で陰口が登場するとき,そこに子どもの耳があると,子どもは言葉の裏表を知って戸惑い,ひどいときには言葉を裏読みするようになり,人を信頼しなくなります。裏の裏という連鎖は憂鬱になります。
★落書き★
ある目的のために近道や危険な道を通るより,遠くても安全で確実な道を通った方が,結果的には早く着くという意味のことを,「急がば回れ」といいます。遠回りをするというイメージですが,それはどこなのでしょう。かつて,京都へ向かうためには琵琶湖を横断する渡し船がありました。ところが,比叡山から吹き下ろす突風で渡し船が危険な状況になることが多かったのです。そこで遠くても琵琶湖を回っていく方が早く着くという歌があります。
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