5月14日 甲午
武州政道を専らし給うの余り、御成敗の式條を試みるの由、日来内々沙汰有り。今日
すでにこれを始めしめ給うと。偏に玄蕃の允康連に仰せ合わさるる所なり。法橋圓全
執筆す。これ関東諸人訴論の事、兼日法を定められ幾ばくならざるの間、時に於いて
縡両段に亘り、儀一揆せず。これに依ってその法を固め、濫訴の起こる所を断ぜんが
為なり。今夕将軍家鼻血を出し給うと。
5月15日 乙未
日中以後将軍家御不例。この間世上咳病盛んなり。上下遁れる者無し。世これを称し
三日病と。仍って御所中に於いて鬼気祭を行わると。
5月16日 丙申
御不例。心神殊に違乱すと。
5月17日 丁酉
今暁御占い等を行わる。七座の泰山府君は親職・晴幸・晴職・国継・晴賢・親貞・経
昌、土公は重宗、鬼気は晴茂等これを奉仕す。今日未の刻、鳥糞御前北面の御簾に懸
かると。仍って百怪御祭有り。国継奉仕すと。
5月18日 戊戌
鳥の怪に依って御祈祷の為、御所に於いて千度御祓いを行わる。今日武州故修理の亮
(時氏)第三年の忌辰を迎え、彼の墳墓堂に於いて、新造の阿弥陀三尊を供養せらる。
導師は弁僧正定豪と。
5月26日 丙午
将軍家の御不例平癒す。今日御沐浴の儀有り。