7月9日 癸亥
大風以前の出挙利倍の事、窮民を救わんが為減少の法を定めらる。畿内・西国の事は
六波羅に仰せられをはんぬ。而るに丹波の国夜久郷神人先達と称すの者有り。事を神
威に寄せ厳制に背き呵責に及ぶ。百姓その愁いに堪えず参訴すと。武州殊に憐れみ庭
中に召し出し、直に問答し給う。仍って計り下知せしむべきの旨六波羅に仰せ遣わさ
ると。
7月10日 壬子 甘雨降る、終日休止せず。
去る月二十七日の雷雨以後、炎旱また数日に及ぶ。この雨すでに国土を潤し、天下豊
饒の基なり。
7月11日 癸丑
二位家御月忌の御仏事。導師は良信法印なり。御台所御聴聞の為南御堂に入御す。武
州また詣で給う。
7月15日 丁巳 [明月記]
今日聞く。一昨日后宮入内。
7月20日 壬戌 晴
申の刻内藤判官盛時頓滅す。子の刻に及び蘇生す。妻子に相語りて云く、夢の如く広
野の中に迷い行くの処、一僧来たりて手を引く。仮令出門の如きの所出思の程蘇生す
と。これ寤寐帰敬し奉る地蔵菩薩てえりなり。若くは彼の利生の方便に預かるか。末
代希有の事なり。
7月21日 癸亥 霽
去る月二十日前の齋宮皇后宮に立たしめ御う。今月十三日入内の由、京都よりこれを
申さる。