エヴァンゲリオンの格納庫で、プログレッシブ・ナイフの改良作業が行われている。プログレッシブ・ナイフを高出力に耐えられるように、材質を超合金製に交換する。出力を上げる為にトランスも交換する。その他配線や、プログラム変更など、ハード、ソフト共に改良部分は多い。
 作業の指揮を執っているのはリツコだ。彼女の下、十人以上の隊員が忙しく作業にあたっている。エヴァの機体から外されたプログレッシブ・ナイフの長さは、グリップ部分を入れると20メートル以上もあり、間近で見ると巨大だ。こんなに大きな物をエヴァは振り回しているのだと思うと恐ろしくなる。
 リツコはグレーチングの渡り廊下の上に立ち、エヴァンゲリオン弐号機の頭部を眼前に見上げている。赤い制服姿のミサトが近寄って立ち止まると、下階での作業を見た。作業をする隊員が工具を持って走り回っている。
「時間はどの位掛かりそう?」
「そうね、思ったより早く済みそうよ。あと二、三日といったところだわ」
 一台当たり一日か・・・・・・。微妙な線だとミサトは思った。
「そう、でも急がせてね。神人は今度いつ出現するか分からないから」
「分かっているわ。その為に、二十四時間体制で作業を進めさせているの。みんな頑張ってくれているわ」
「何とか間に合って欲しいわね」
「その気持ちは私も同じよ」
 神人の出現までに全ての改良が終わって欲しい。しかしミサトはふと思った。エヴァンゲリオン三体の改良が終了したとしても、レイとシンジがここにいない今、零号機と初号機には誰が乗るんだ? これじゃ意味無いじゃないか。
 エヴァの改良はリツコの責任下で進められるが、パイロットの件は自分の責任でもある。このままではせっかく改良を進めても無駄になってしまう。シンジがここにいてくれたなら、こんな思いをせずに済んだのに・・・・・・。何とかしなければという焦りがミサトを蝕み始めていた。