2022年
                                            溝手康史



2022年10月15〜17日
ツアーの法律問題
沖縄県、大宜味村


2022年9月11日
黒沢池ヒュッテ付近での遭難
 火打、妙高山塊の黒沢池ヒュッテから約500メートル離れた場所で単独登山者がテント内の一酸化炭素中毒で亡くなった。
 アルコール固形燃料を使っていたようだ。アルコール固形燃料を燃やしたまま眠った可能性がある。
 被災者は家族に、「キャンプに行って来る」と告げていたということであり、登山ではなくキャンプ目的ではないか。キャンプ場から少し離れた場所にテントを張ったのはソロキャンプ愛好者だからではないか。芸能人のソロキャンプの影響は大きい。
 少し前に、氷ノ山でもキャンプ中に大雪が降って遭難したキャンパーがいた。
 キャンプブームがこれらの遭難の背景にあるのではないか。
 一般に、登山者はテント内の換気に注意を払うが、キャンパーはテントやテント内での火器使用に不慣れだ。また、キャンプ用の格安テントは性能の悪いものが多い。テントの通気性がどうだったのか。
 登山者はガスコンロを使うことが多い。それは非常用にも使えるからだ。しかし、キャンパーは、1回限りの使用しか考えないので、アルコール固形燃料を利用することがある。登山者がアルコール固形燃料を持参するとすれば、ガスコンロが壊れた場合の非常用ではないか。


2022年9月11日
伯耆大山・三ノ沢での遭難・・・・ネットの功罪
 大山、三ノ沢は昔から積雪期に登る登山者がいたが、登るのは熟練者だった。
 しかし、最近は、無雪期でもこのコースが登られるようだ。このコースには登山道はないが、登る人が増えれば、踏み跡ができ、テープなどが設置される。それで一見道のように見えるが、本来の道ではない。
 ネットを見ると、このコースを歩いた記録がけっこう載っている。それらを見て、未熟な登山者が単独で登るのではないか。
 熟練者は問題はないが、そうではない登山者が登れば、危険である。
 ネットは簡単に情報が得られるので便利だ。しかし、ネットには、「簡単に登れた」という記事が多い。ネットでは、自分の記録を自慢したがる登山者が多い。ネットでは登った人の技術、知識、経験の程度が未熟者にはわからない。誰でも登れるようなイメージを与えやすいので、それを真似ると事故になりやすい。


2022年7月22〜24日
JMSCA、夏山上級リーダー資格検定会の中止、延期
 7月22〜24日にUIAAの担当者のSteveが来日し、JMSCAの夏山上級リーダー資格検定会を視察し、JMSCAの夏山上級リーダー資格にUIAAの資格を付与するかどうかの審査をすることになっていた。
 しかし、イギリスから日本に来るにはビザが必要であり、しかも、7月分のビザの申請は7月上旬に締め切っており、Steveが来日できなくなった。
 これも、新型コロナの増加に伴う日本政府の措置なおだろう。。


2022年7月10日
参議院選挙
 与党側の議員が参議院で3分の2以上を占め、憲法改正が現実化した。
 自衛隊が軍隊として正式に承認され、堂々と戦争をする日が来るのだろうか。


2022年7月5日
JMSCA、UIAAリーダー資格委員会
オンライン


2022年6月30日
広島の弁護士、給付金詐欺で逮捕
先日、広島県内の弁護士が、新型コロナ給付金の詐欺の容疑で逮捕された。
この弁護士は私よりも20歳くらい若く、面識はない。
容疑の認否は不明であり、真偽は不明だ。
しかし、報道によれば、この弁護士は、少し前に法テラスに相談料の水増し請求した件で広島弁護士会から懲戒処分を受けている。
法テラスへの相談料の水増し請求で得た利益はせいぜい1万円あまりである。

この弁護士が開業する地域は地裁の支部はなく、簡易裁判所があるだけである。かつてはこの地域に弁護士はおらず、このような地域を弁護士会は「弁護士過疎地」と呼んでいる。この地域でこの弁護士が初めて開業した。
私が当時の日弁連の「ゼロワン地域」の三次市で開業したのが平成8年であり、それから10年後くらいに、この弁護士が弁護士不在地域で開業した。私は、「ついにそういう時代になったのか。時代は変わった」と思ったものだ」と思った。
しかし、その後、この地域の弁護士の数が増え続け、現在ではかなりの数の弁護士がいる。
さらに、広島市内の弁護士も増え続けており、広島市内の弁護士も仕事を求めて周辺地域に進出している。東京の弁護士も、全国の地方で仕事を探している。
弁護士の数が増えても、弁護士の利用に金がかかるので、経済的に平均的な階層の人たちは、滅多なことでは弁護士に依頼しない。
弁護士の数が増えても弁護士の仕事はそれほど増えていないので、「弁護士過疎地」の弁護士も弁護士の数が増えれば経済的に困窮するのは当然だ。
この弁護士は、地元経済界に押されて市長選に出馬したことがあり(その後、取りやめたが)、この地域で華々しい活動をじていたが、経済的には大変だったのかもしれない。
むろん、経済的に大変でも詐欺をしてよいわけではない。
しかし、弁護士の業界の経済的な問題がある限り、詐欺、横領、不正請求、高額な報酬請求などが今後も全国で増え続け、弁護士の人気低迷に拍車がかかるだろう。


2022年6月16日
JMSCA、UIAAリーダー資格委員会
オンライン

 7月22〜24日にUIAAの担当者のSteveが来日し、JMSCAの夏山上級リーダー資格検定会を視察し、JMSCAの夏山上級リーダー資格にUIAAの資格を付与するかどうかの審査をすることになった。


2022年6月8日
JMSCA、UIAAリーダー資格委員会
オンライン

           
2022年5月28〜29日
JMSCA上級夏山リーダー講習会
神戸市  神戸セミナーハウス周辺

          講義 


          ナビ講習

         
2022年5月25日
「ボランティア活動の「責任」出版
共栄書房
1870円

内容はアウトドア活動に関する責任が中心である。
これは、これまでボランティア活動で裁判になったケースのほとんどが、アウトドア活動中の事故に関するものだからだ。
意外なことだが、福祉、介護関係のボランティア活動で裁判になったケースはほとんどない。これらの分野でも、事故がないということではないだろうが、重大な事故が少なく、紛争になりにくいのだろう
これに対し、自然の中では、重大な事故が起きやすく、紛争になりやすいのだろう。
ボランティア活動で裁判になったケースは、キャンプ、ハイキング、川や海での水遊び、登山中の事故がほとんどだ。
この本もアウトドア活動に関する本になっている。


目次
第一章 ボランティア活動には責任が伴う
第二章 ボランティア活動とは何か
第三章 ボランティア活動の法的責任
第四章 ボランティア活動と法的リスクの実例
第五章 ボランティア活動のリスクマネジメント
第六章 ボランティア活動が社会を発展させる

            
 


2022年5月18日
事務所移転
 前事務所建物が改築計画があるため、下記の場所に法律事務所を移転しました。
     安芸高田市吉田町多治比3239番地26
     みぞて法律事務所

 電話番号、FAX番号に変更はありません。


2022年5月11日
JMSCA、UIAAリーダー資格委員会
オンライン


2022年5月10日
JMSCA理事選考委員会
オンライン


2022年5月8日
JMSCA指導委員会
オンライン

           
2022年4月1日
「新・高みヘのステップ」、(1、2、3部)発行
   日本スポーツ振興センター発行

  私も一部執筆した。
   4部と5部は来年度発行予定
   「高みへのステップ」の改訂だが、中身はまったく別の本である。
   発行部数は3000部、500部が市販ということだが、市販分はすぐに売り切れるのではないか。
   
 旧版は、文科省の登山研修所が発行したということで、長い間、裁判などでしばしば引用された。登山関係の本は多いが、国が発行した登山のテキストは本はこの本だけであり、裁判所は、国が発行した本を重視する。
 役所が発行する本は、特別な意味が与えられるのが現実だ。
 しかし、旧版は内容が古く、今では適切とはいえない内容もあった。

 新版は、内容を一新した。
 同じ登山研修所の発行だが、現在は登山研修所は独立行政法人の機関になっている。それでも文科省の外郭団体なので、以前と同様の権威を持ち、今後、山岳事故の裁判などで引用されることになるだろう。


           
2022年3月
「山岳地帯へのアクセスの制限の問題」
  日本山岳文化学会論集19号掲載

          
2022年3月3日
プーチンの狂気と新型コロナウィルス
 プーチンは長年のストレスと独裁者の孤立のために精神的におかしくなっているようだ。
特に、新型コロナウィルスのために、最近2年間、プーチンは隔離生活を送っていると言われており、ほとんど誰とも会わないらしい。
 拘禁生活がプーチンを不安神経症にさせたのではないか。
 もともとプーチンは偏った人格の持主であり、織田信長などと同じく人格障害者だと思われるが、拘禁生活の結果、人格の偏向が激しくなるのだ。
 プーチンはウクライナの存在がもたらす脅威を過大に感じ、過剰に反応している。そこには、「ウクライナを殲滅しなければ、ロシアが滅ぼされる」という過剰反応がある。異常な生活環境が異常なまでの被害妄想や不安感、被害者意識をもたらすのだ。
 プーチンは、ウクライナが加害者であり、自分とロシアが被害者だと考えているに違いない。プーチンの大量殺戮、無差別殺傷事件が現在のウクライナ戦争である。
 わずかひとりの狂気のために多くの人が死に、莫大な害悪を世界中にまき散らすことになった。核戦争の危険が現実化してきた。

           
2022年3月1日
ロシアのウクライナ侵攻
これは明らかな侵略だ。

プーチンは、ウクライナの行動に過剰な脅威を感じており、被害妄想にかられた人格障害者だ。
ウクライナの離反、NATO加盟=ロシアへの圧迫、攻撃、破滅、自分の死という被害妄想があるのではないか。
プーチンは常に自分の命がテロと暗殺にさらされていると感じているのではないか。
また、もともとプーチンはロシアを巨大な帝国にする野望を持っているが、それが不安神経症のために野望が巨大化したのではないか。
ヒトラーも一種の神経症に罹っていたと言われており、常に落ち着きのなさそうな挙動をしていた。

ロシアの経済は破綻し、ロシアは国家解体の危機になりかねない。
プーチンの首に鈴をつけ、引導を渡す者が必要だが、それがロシアにいない。
ロシアでの暴動の多発・・・・政権内部の謀反、クーデターという可能性もある。

ウクライナはNATO加盟の意図を隠し、もっと巧妙にたち回れば戦争を回避できたかもしれない。国際政治の一瞬先は闇であり、綺麗ごとではすまない。
プーチンのような被害妄想者には、理屈や正論は通用しない。
徹底抗戦は立派だが、犠牲があまりにも大きすぎる。

           
2022年2月12日
日本のリーダーと欧米のleaderの違い
 JMSCAの夏山上級リーダーの資格に関して、欧米のleaderとの違いが問題になった。
   JMSCAの「夏山リーダー」資格・・・・・・・・ロープ技術は不要
   JMSCAの「夏山上級リーダー」資格・・・・ロープ技術必要
   UIAAの夏山リーダー資格・・・・・・・・・・・・ロープ技術必要
 の3つの資格の関係が問題になる。

 UIAAの夏山leader資格では、leaderが法的責任を負うことが想定されている。そのような責任を負う者がleaderである。
 しかし、日本では、山岳会やハイキングクラブのリーダーは原則として法的責任を負わない。日本の山岳会やハイキングクラブのリーダーは仲間間のとりまとめ役に過ぎず、他のメンバーに対して法的に特別な立場にはないので、法的な安全確保義務を負わない。
 欧米では、登山(mountain climbing)は、対等の立場に立つ個人と個人の結びつきによって遂行される。そのため、1人が他の仲間をひっぱる(leadする)関係がないことが多い。つまり、leaderがいないことが多い。この場合の登山は個人的な関係で成り立つ。しかし、登山(mountain climbing)ではなく、wallking やhikingでは、leaderが必要とされる場合がある。日本の登山の多くがwallking やhikingに相当する。mountain climbingはクライミングや登攀である。
 他方、日本では、登山は、個人と個人の結び付きではなく、団体、組織が主体となって行われる。登山パーティーという組織が登山を遂行すると言う発想があり、集団行動なのだ。集団行動なので、リーダーが必要とされる。その場合のリーダーは、参加者を引っ張る人もいれば、とりまとめ役もいる。さまざまなリーダー形態があり、形だけのリーダーも多い。これは、、欧米でいうleaderではない。
 日本の集団行動中心の文化が、日本特有のリーダー像を作った。それが登山にも反映している。
 欧米では、leadするかしないかのどちらかしかない。これはわかりやすい。
 しかし、日本のリーダーは雑多な関係を含み、leadする場合もあれば、そうではない場合もある。日本ではあいまいなことは多い。ものごとをあえてあいまいにした方が都合がよいと考える人が多いが、それが多くの紛争をもたらす。
 欧米では、leaderは特別な地位と権限を持つが、日本人が考えるリーダーは欧米で考えられるleaderよりも範囲が広く、形式的であることが多い。欧米人から見ると、日本の企業や政治のリーダーがleaderとみなされないことがあるのは、そのためだろう。
 したがって、日本語のリーダーをそのままleaderに翻訳すると混乱や誤解が生じる。UIAAの担当者が日本に来て、JMSCAの夏山上級リーダーの資格付与講習をUIAAの資格講習として認定するかどうかの審査の際にこれが問題になる。
 JMSCAの「夏山上級リーダー」をUIAAの夏山リーダー資格とし、JMSCAの「夏山リーダー」は、UIAAの夏山リーダー資格のベースとなる資格という位置づけをすることになる。
 同様の問題は、日本語の登山、クライミングと、欧米のmountain climbingの間でも生じる。

           
2022年2月10日
那須雪崩事故・・・・刑事事件の起訴
2017年の那須雪崩事故について3人の教師が起訴された。
この件で、マスコミから、7,8回、取材の電話やメールがあった。

調停で話し合いがまとまらなかったことで、検察庁が起訴したと思われる。
今後、被告人が、起訴事実を認めるかどうかで手続が変わる。起訴事実を争えば、判決までに2,3年かかるのではないか。
これまで、山岳事故に関して有罪になる場合でも、すべて執行猶予付きの禁錮刑になっている。
しかし、この事故は、8人が亡くなったこと、学校の部活動での事故であることから、仮に有罪になった場合に、執行猶予がつくかどうかわからない。

教師が起訴されたことで、今後、部活動の顧問をする教師がいっそう減るだろう。実態は無給なのに、重い責任を負わされるのであれば、顧問になる教師がいなくなるだろう。
最近は、外部指導者に委託する自治体が増えているが、@外部指導者に払う報酬の問題、A外部指導者に委託しても顧問教師の負担が減らないなどの問題がある。

この事故の背景として、登山経験の豊富な教師が、山岳連盟などで行うような感覚で講習会を実施したことに問題がある。
山岳連盟などでは、講習会は講師の裁量と判断にまかせて実施し、講習会の責任者が細部まで安全管理を指示することはしていない。
講師は自分の経験的な感覚に基づいて判断することが多い。それを間違えると事故になる。

学校の部活動としての講習では、基本的なことだけを行い、それを超えることは、学校を離れて山岳会などで行う必要がある。
山岳会での活動は高校生の場合でも自己責任である。生徒の安全管理をするのは親などの保護者である。


           
2022年2月3日
那須雪崩事故の民事裁判
2017年の那須雪崩事故について、遺族が県と教師を相手とする損害賠償請求訴訟を起こした。
県は責任を認めていたが、教師個人が損害賠償責任を負うかどうかをめぐって対立した結果、訴訟に至ったようだ。
国家賠償法では、公務員に過失がある場合に、原則として公務員個人は損害賠償責任を負わず、代わりに役所が損害賠償責任を負うことになっている。
したがって、この種の事故でh、通常は、教師が損害賠償責任を負う扱いにはならない。
裁判でも、いずれは、それを前提にした和解を裁判所が勧告するのではないかと思われる。
刑事責任については、民事裁判の成り行きを待って検察庁が処分を判断すると思われる。

この事故は学校の部活動に関するものであり、民間人の営利的な講習会、ボランティアで実施される講習会とは異なる。
しかし、これらの講習会で同種事故が起きれば、同様に講師の過失が認められる。
また、教師の刑事責任に関する扱いは、民間人の活動にも影響する。
欧米では山岳事故が刑事責任の対象になることはほとんどないが、日本では、それは珍しくない、という違いがある。
日本は、ミスや過失に対し世論の目が厳しい国であり、それが裁判所の判断に影響する。

           
2022年1月25日
「高みへのステップ」改訂と夏山上級リーダー資格テキスト
 登山研修所が「高みへのステップ」を改訂作業中だ。今年度に前半部分、残りは来年度に行う。
 前半部分は今年度中に発刊する予定だ。
 「高みへのステップ」の内容を一新するので、全く別の本になるが、「高みへのステップ」の改訂作業ということになっている。たぶん、その方が予算がつきやすいのだ。
 法的責任の箇所は私が書いた。旧版の「高みへのステップ」の記述とはまったく別の内容になっている。
 これは市販される予定だ。

 JMSCA(日本山岳スポーツクライミング協会)が夏山上級リーダー資格を創設し、そのためのテキストを作成した。試作本はすでにできて配布しているが、間もなく完成本ができるはずだ。これは講習会用のテキストなので市販しないと思われる。
 この資格はUIAA(国際山岳連盟)の夏山リーダー資格に準拠する資格になることを予定している。そのためには、UIAAの査察を受けて認定されなければならないが、新型コロナのためにUIAの査察担当者が来日できない。UIAAの査察は今年の秋になりそうだ。
このテキストについても、法的責任の部分を私が書いた。
 このテキストは夏山リーダーが対象であり、「高みへのステップ」は登山の全範囲を対象とする。

登山研修所の講習会とJMSCAの講習会
 登山研修所は各地で登山講習会を実施している。
 JMSCA、各地の山岳連盟、労山などの講習会もある。
 これらの講習会の関係が議論されている。
 これらの団体が共催して実施する場合もある。
 これらは基本的にはアマチュアの団体であり、ボランティア的な活動である。
 これに対し、ガイド協会やガイドが行う講習会は商業的な活動である。
 しかし、登山研修会の活動に多くの山岳ガイドが参加している。山岳ガイドは仕事として講習会に関わるが、それ以外の関係者はボランティア的に関わる。登山研修所の講習会で講師をすれば若干の手当が支払われるが金額は多くない。
 商業的なガイド、ボランティア活動従事者、公務員が共同で活動する場合に、常に報酬をどうするかという問題g生じる。公務員は役所から給料をもらっており、講習会の講師の日当をもらうと副業をしたことになるので、通常は受け取らない。

学校部活動の外部指導者制度
 学校の部活動の指導を外部指導者に委託する方向になっているが、外部指導者を商業的なガイドに委託すると日当の問題が生じる。外部指導者がボランティアであれタダですむが、タダで引き受けるボランティアはほとんどいない。そこで若干の手当を支給するが、商業的なガイドはそれでは仕事にならないと感じるだろう。ボランティア的な指導者は安い日当でも引き受けるが、指導者の質が問題になる。JMSCAの夏山上級リーダー資格は、この外部指導者をすることができる資格として想定している。
 他に、山岳連盟の山岳インストラクタの資格、ガイド協会の登山ガイドの資格などがあり、これらの資格が学校の外部指導者になるために必要な資格とされるだろう。
 その場合に、外部指導者の種類により、日当の金額に差をもうけるのかどうかが問題になる

 さらに、外部指導者制度の法的責任の問題がある。
 部活動を外部指導者に委託しても、部活動を学校の管理下に置くので、顧問教師、学校の責任に変わりはない。
 国賠法により、自治体が責任を負い、顧問教師、外部指導者は原則として責任を負わない。外部指導者は学校の履行補助者である。
 国立の学校では、独立行政法人が責任を負う
 私立学校では、外部指導者、顧問教師、学校法人が連帯して責任を負う。私立学校では、外部指導者、顧問教師は賠償責任保険に加入する必要がある(個人賠償責任保険は適用なし)
 
 部活動を学校の管理下に置くので、顧問教師は外部指導者にすべてまかせることができず、「顧問教師の負担が減らない」、「外部指導者に委託すれば、かえって手間が増える」という笑い話のような状況があるようだ。
 高校の登山部の宿泊を伴う活動では、顧問教師が外部指導者と一緒に山について行くそうだ。これは、「何かあったときに、自分に責任が生じる」という不安からだろう。これでは、外部指導者に委託しても顧問教師の負担は減らない。
 外部指導者に任せた場合に事故が起きると、「学校は何をしていたのか」という世論の非難が生じる。それで、外部指導者に任せた場合でも顧問教師は以前と同じように管理をせざるをえないようだ。
 ヨーロッパのように、スポーツを学校外のクラブの管理下に移すのは無理だろう。日本は学校と会社で社会が動いているからだ。学校文化と会社文化が生徒と会社員を24時間支配し、これが死ぬまで支配することがある。90歳近くになっても「元院長」。

 日本では、役所が「丸投げ」することは「無責任」だとして世論から非難される。しかし、これが過剰な管理社会、効率の悪さにつながっている。日本が先進国の中で突出して生産性が悪い理由はそこにある。
 外部指導者が適切な資格保有者であれば、学校は部活動を外部指導者に「丸投げ」してよい。そうしなければ外部指導者制度の意味がない。もし、事故が起きれば責任は自治体が負う。
 素人の顧問教師が部活動を管理しても、管理は無駄であり、ほとんど気休めでしかない。素人の教師は資格のある外部指導者に任せた方がよい。
 日本の社会全体で、責任に対する過剰な不安が無駄な仕事を増やしている。

           
2022年1月22日
毛無山
天気がよかったので広島県の比婆山山系、毛無山(1143m)にスキーで登った。
駐車場で車が雪に埋まりスタックし、以前、岡山県の三国山に行った時に一緒だった「髭じじー」さんに偶然出会い、車を押してもらったが、ビクともしない。
その後、付近にいた人達に手伝ってもらって無事、脱出した。
ありがとうございました。
最近、けっこう雪が降ったので、トレースはなかった。地図でルートを考えながら登るのが面白いのだ。

以前に行った三国山でのスキー登山を思い出すと、必ず大前氏を思い出す。大前氏は髭を伸ばしており、三国山では、しきりに自分の髭を「髭じじー」の髭と較べていた。
大前氏はこの登山の後、間もなくして亡くなった(享年67歳)。
それ以降、多くの友人が亡くなった。
広島山岳会の名越氏(享年65歳)、角崎氏(享年67歳)、田中氏(享年50歳)、亀井氏(享年73歳)。
福岡労山の山下氏も65歳で亡くなった。山下氏は私の広島労山時代の友人だった。
山岳ガイド協会の理事長だった磯野氏も65歳で亡くなった。磯野氏とは、登山研修所の会議や講習会でお世話になった。
それよりも前のことだが、前広島県山岳連盟理事長の上中氏も65歳でチベットで亡くなった。上中氏は私の広島県庁山の会時代の友人だった。
このうち登山中に亡くなった人は4人だ。それ以外はすべて癌だ。
こうしてみると65歳〜67歳で亡くなった人が多い。私は、今年、67歳になる。
年月の経つのは早い。

                     

        
2022年1月13日
国立登山研修所・専門委員会・会議
東京
オンラインで参加

            
2022年1月12日
埼玉県山岳・スポーツクライミング協会・登山講習
講演タイトル「登山の「法律問題」
オンライン
参加者約50名


2022年1月1日
氷ノ山での遭難
昨年年末に起きた氷ノ山でのキャンパーの遭難は、山岳事故と言えるのかどうか。
警察庁の事故統計では、おそらく山岳事故に分類されないのではないか。
警察庁の山岳事故統計では、キャンプという項目がない。
氷ノ山で遭難したグループは登山をしていないし、登山目的でもないので、山岳事故ではない。

1980年に富士山で落石により登山者12人が死亡した事故は、統計上、山岳事故ではなく自然災害に分類されている。
2014年の御嶽山の噴火により登山者58人が死亡した事故も、山岳事故ではなく自然災害に分類されている。
これらは明らかな山岳事故だが、自然災害であれば国の見舞金制度の対象になるのでそのように扱われた。山岳事故にはその制度が適用されない。
山岳事故になるかどうかが政治的観点から決定されるのはおかしいが、現実にそのような運用がなされている。
しかし、山岳事故の防止という観点からは、これらの事故も山岳事故に含めて考える必要がある。

今回の氷ノ山の遭難は登山とはまっく関係がない。
これは、キャンプというアウトドア活動の事故防止の問題である。
原野でキャンプ中に大雪が降ったらどうするかという問題だ。

キャンパーは車の傍を離れず、そこでテントを張って救助を待つべきだった。雪の中をラッセルできる装備も体力もなかったはずだ。
キャンパーなので、テントシュラフ、コンロ、食料などを持っていたはずだ。
携帯電話は、林道の一部でつながる場所がある。
ビバーク地で焚き火をして、煙を上げればへりで発見できる。
そうすれば全員無事に救助されたはずだ。
しかし、車を置いて下山中に一人が動けなくなったのだろう。
登山経験者が一人でもいれば、結果が変わったのではないか。

この林道は山スキーで2回、下ったことがある。