<春(二)>
すみれ
「すみれ踏みしなやかに行く牛の足」秋元不死男
せり
「芹摘みが来れば空港白々し」平畑静塔
たうち
「墓二三桜とひかり深田打ち」加藤楸邨
たがえし
「耕せばうごき憩へばしづかな土」中村草田男
たけのあき
「掘りあてし井戸の深さや竹の秋」長谷川零余子
たこ
「凧きのふの空のありどころ」蕉村
たねまき
「種蒔いて明日さへ知らず遠きをや」水原秋桜子
たんぽぽ
「蒲公英のかたさや海の日も一輪」中村草田男
だいこんのはな
「大根の花や青空色足らぬ」波多野爽波
ちじつ
「遅き日や日輪ひそむ竹の奥」水原秋桜子
ちゃつみ
「向きあうて茶を摘む音をたつるのみ」皆吉爽雨
ちょう
「方丈の大庇より春の蝶」高野素十
つくし
「土筆摘む野は照りながら山の雨」嶋田青峰
つちふる
「蓬生に二日つづきし黄沙かな」岡井省二
つつじ
「躑躅わけ親仔の馬が牧に来る」水原秋桜子
つばき
「ことごとく咲いて葉乏し八重桜」鈴木花蓑
つばな
「川しまやつばな乱れて日は斜」闌更
つばめ
「つばくらめ斯くまで並ぶことのあり」中村草田男
つみくさ
「草摘の負へる子石になりにけり」川端茅舎
とりくもにいる
「鳥雲に入るおほかたは常の景」原裕
なだれ
「夜半さめて雪崩をさそふ風聞けり」水原秋桜子
なのはな
「菜の花や月は東に日は西に」蕉村
なわしろ
「苗代の雨緑なり三坪程」正岡子規
ねこのこい
「恋猫の恋する猫で押し通す」永田耕衣
ねはんえ
「葛城の山懐に寝釈迦かな」阿波野青畝
のっこみぶな
「疾風波鮒乗込をはばみけり」内山亞川
のどか
「長閑さや出支度すれば女客」素丸
のり
「海苔粗朶にこまかな波ゆきわたり」下田実花
はたうち
「はるかなる光も畑を打つ鍬か」皆吉爽雨
はつうま
「はつ午や煮しめてうまき焼豆腐」久保田万太郎
はつはな
「旅人の鼻まだ寒し初ざくら」蕉村
はな
「天寒く花の遊べる真夜かな」飯田龍太
はなぐもり
「花曇小雀の嘴の苔一片」島村元
はなびえ
「花冷えの闇にあらはれ篝守」高野素十
はまぐり
「からからと蛤量る音すなり」岡本松浜
はるあさし
「春浅し相見て癒えし同病者」石田波郷
はるいちばん
「春一番山を過ぎゆく山の音」藤原磁章
はるかぜ
「古希といふ春風にをる齢かな」富安風生
はるさめ
「春の雨街濡れSHELLと紅く濡れ」富安風生
はるた
「みちのくの伊達の郡の春田かな」富安風生
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