兼題 燈火親し 檀の実 後の月 席題 秋澄む |
東人 檀の実活けて座敷に風通す 嵯峨時雨かな落柿舎の木戸叩く 灯下親しモーゼの杖は蛇となり 河岸に向く一間間口秋澄めり 草匂ふ信濃の海や後の月 正 連弾の双子の姉妹檀の実 母よりも齢を生きて後の月 パソコンや燈火親しき一太郎 秋高し快音はなつドライバー 秋澄むや前橋汀子の弦冴ゆる 希覯子 十三夜男世帯に泊り客 靖国の命とならず秋澄める つきまとふ秋蚊を妻の化身とも 大小の歳時記重ね秋灯下 真弓の実花かと紛ふけもの径 千恵子 爽やかや遺品の中の航海図 机より臥所に灯火親しめり 檀の実光りて雨の晴間かな 野の草はどれも細身や秋の雨 港には小舟ばかりや十三夜 |
白美 灯火親しまたひとつ積む新刊本 眼薬の顎までこぼれ秋日和 爽やかや糊のききたる白き衿 耳馴れぬ鳥の声して檀の実 語り合ふ肩の痛みや十三夜 利孟 また親の出番や村の運動会 判じ読む蝦夷の地名や檀の実 秋澄めり熨し塗りにして化粧壁 支那街の粥噴く露店後の月 トンカツのキャベツ大盛り燈火親し 隆 一斉に天下御免と布団干す 書出しのインクの濃さや後の月 痛点の隙打たれけりそぞろ寒 人生がころがつてゐる檀の実 燈火親し半生の皺見つめをり 武甲 秋の日やメールを開くパスワード 濁流に呑まれし厩舎檀の実 秋澄むや礼砲はなつ迎賓館 掛け声に茶髪の揺れて赤い羽根 途中下車して待つ逢瀬後の月 |
健一 燈下親し深夜に開く窓と窓 じやん拳の遊びの声に栗名月 川魚の下る姿や秋澄める 十三夜戻るホテルの狭き窓 崖山を染め始めける檀の実 箏円 偏頭痛裂けて石榴の黒き種子 志ん生の音盤燈下親しめり ふくいくと織部に宿る後の月 背景はセピアの林檀の実 墓洗ふ無言の母の背中かな 萩宏 母背負ひ歩く旧道檀の実 暗がりへ女を押しやる後の月 秋の燈の川面に揺れる佃島 秋出水収穫の日に泥浚ひ |