第121回原宿句会
平成11年7月6日 豊島支社

   


     東人 
冷やかしに売る子も強気朝顔市
深吉野や腸の匂へる鮎料理
星仰ぎ浜木綿の香をひとりじめ
体形を水着のせゐにしてゐたり
友鮎の売り値買ひ値のささやかる

     法弘 
浜木綿や鍵など掛けぬ蜑の里
斜陽館出でて日傘を開きけり
ヴィーナスの誕生のごと水着脱ぐ
手掴みに鮎のうるかの塩加減
つくばひに金魚を飼つて尼禅師

     箏円 
半夏生痩せたる母の爪かたし
朝顔市老人ホームへ届く鉢
雨が来て水着のままの妹かな
隧道の小さき出口鮎の宿
波音は箏の音なりや浜木綿忌

     美子 
浜木綿がまづ見え海が急に見ゆ
どの鉢もおなじ在所や朝顔市
水着きて鱗を持たぬ魚となる
掌の涼しき男蕎麦を打つ
海しけて仕入揃はず鮎談義

     希覯子 
先づ詣で朝顔市の群に入る
逞しき乳房を被ふ水着かな
浜木綿や島に一つの船溜り
いとはずに満身創痍囮鮎
犬連れて水着濡らさず戻りけり

     正 
北山は雨となりけり鮎膾
キャンギャルの水着は水に濡るるまじ
浜木綿やむかしは漁獲多かりき
朝顔市入谷の朝の清々し
ディズニーの団扇取りあふ姉弟

     千恵子 
紅き唇串横ざまに鮎を食ふ
日が昇り朝顔市に眠気立つ
紺色の水着にひそむ反抗期
潮の香のこもる小路や浜おもと
七夕の竹の小さく街暮らし

     白美 
芸妓の手香魚の骨を引き抜けり
新宿の朝顔市や地下の街
試着せよと店員の声水着置く
とぎれなき電話の話巴旦杏
浜木綿の荒波の日も花咲けり

     武甲 
未明より車の手入れ鮎解禁
母独り記す願ひや星祭り
浜木綿の浜に寄り添ふ夫婦岩
母愛でし浅黄の多し朝顔市
ダイエットの成果を試す海水着

     翆月 
ヨットの帆色鮮やかに行き交へり
浜木綿の香りほのかに凪の海
朝顔の市沿道を埋め尽くし
林間のテラスで水着の脚のばす
軽やかに飛ぶ渓流の若き鮎

     利孟 
草笛やいささか坊主刈り伸びて
青蘆の囲ふ破れ戸の漁番屋
水着なる小顔足長手長かな
浜木綿の繁り歩道の寸土より
鮎掛ける水の重さを宥めつつ