第127回原宿句会
平成12年1月7日

   
兼題 初日記 冬霞 カトレア
席題 寒の雨(冬の雨)


  東人
高さあるものを泛べて冬霞
スター待つ劇場裏手寒の雨
直射光浴びカトレアの唇ひらく
世紀詠む句を書きちらし初日記
禁門の銃弾痕や寒椿

  美子
二千年の天地繋ぐ寒の雨
まどろみの山懐に初霞
新日記白き未来を抱き締める
千年紀と見開きに書く初日記
カトレアに大きな影も翳もあり

  利孟
二〇〇〇年無事の一行初日記
父君のカトレアを抱き嫁ぎけり
今一度御手振る陛下冬霞
御降りや帯にだるまの七転び
水仙の香りて薄る船着き場

  希覯子
初日記栞の紐のよぢれをり
冬霞脱ぎて電車は地下に入る
冬霞谷戸におはせる寺祠
生くる花カトレアのみや霊安所
寒の雨考へあぐむロダン像

  美穂子
カトレアの震へアリアの妃の震へ
針の歩の緩みたる午後寒の雨
時告ぐる鐘まつすぐに冬霞
マニキュアは薄き桃色初日記
初空や地球の未来子に説かる

  武甲
寒中の敗者動かぬノーサイド
つぎつぎと届くカトレア店開き
掛け声の少し上ずり初稽古
一年の決意新たに初日記
稜線にせり出す白や冬霞

  箏円
母の手の墨痕やさし冬の雨
新日記筆圧こめし文字並ぶ
かるたとり口元似たる父と娘と
カトレアや覇王別姫の香気立つ
昇華する草木の影冬霞

  翠月
柚湯して肩に多めの掛湯かな
冬がすみ波音のみを松に告げ
秘めごとを記す二行の初日記
カトレアの紅に誘はれティールーム
去年今年覗く不安の世紀末

  白美
カトレアは真白き和紙のベールして
冬霞ゆるりと機影近づけり
角ごとに行方たしかめ息白し
絵本もち母の蒲団に潜り入る
惰眠して四日目からの初日記

  笙
背を温め心温めて焚き火かな
カトレアの白さ目に沁む祝婚歌
冬霞関門橋のアーチ灯
まづ記すお宮参りや日記始め
香をきくごとく楽しむ鰭の酒

  正
ペン先に力の入る初日記
大屋根に冬の雨降る東大寺
行く末の知れぬ老後や冬霞
懐に大吉とある初みくじ
カトレアのやうな乙女がハープ弾く

  千恵子
白塗りの業平像やかるた取り
昼風呂に入るも記して初日記
鳩黒く群れて上野は冬の雨
カトレアの鉢の置き場所迷ひけり
釣人の背の不機嫌や冬霞