第13回原宿句会
平成3年10月28日

   
兼題 柳散る 露寒 夜なべ
席題 菊


  東人
不忍池に紅毛道化柳散る
稿料のなき稿債の夜なべかな
露寒や雫したたる葉の光
待たさるる日は飢ゑやすき夜の菊

  希覯子
金賞の菊敷物を許さるる
置屋台縛られてをり柳散る
煌々と新聞つくる夜業の灯
早起きの豆腐屋があり露寒し

  美子
捨て植ゑの黄菊を分けて猫の顔
夜なべ終ゆ父の腕の硬かりき
夜業果つウエスでぬぐう手の油
柳散る上野界隈散策す

  玄髪
夜なべして孫の手がわり鯨尺
菊の武者いずれ勝者か敗者やら
夜更まで文藝春秋露寒し
夜仕事背伸びをさそう欠伸かな

  利孟
菊花展小砂利に踵滑りたり
露寒や蔓を寄せたる藷畑
柳散る擬宝珠の端の光かな
洗面所髭に手をやる夜業かな

  京子
露寒や弱陽ぬくめし桟拭ふ
菊日和島のあわいを小船滑り
鐘の数小石で数ふ散る柳
生くるごとはしる撞木に散る柳

  白美
あやかしと妄執語る夜なべかな
露寒やうるめ焙って酒一合
残菊や旅立つ夫の爪を切る
ぶらんこの音静まりて柳散る

  千惠子
菊の香にまとわれ鬱の濃き一日
露寒の庭に問ひたきこと問わず
柳散り遠山稜線峻烈に
露寒の道行く少年の薄き肩

  千尋
口すぼめ菊花ひとひら吟醸酒
ひと塩の色冴えやかに菊びたし
露寒や仰ぐ星空六等星
チャンネルを替へて夜なべの高笑ひ

  健次
夜なべして慣れぬ繕妻病みて
露寒むやぬくもり断ちて早立ちす
ビル風に背けし頬に柳散る
雑草の中に我れあり小菊花