第14回原宿句会
平成3年11月10日 原宿健保会館

   
明治神宮・代々木公園吟行


  東人
四阿の屋根の藁嵩草紅葉
鵙猛る源流の井に武将の名
葉の形鉢の土誉め菊花展
小草履の砂利を蹴立てて七五三
菖蒲田の名札露はに末枯るる
瞑想に彳つ一群や冬ざるる
マラソンの一団ばらけ欅散る
屋台ごと鉄板並べ秋の昼
神苑を出づれば暑し七五三
青竹の太き握りや菊花展

  利孟
秋茶會入り待つ娘横坐り
七五三背に大鷲の羽織かな
キャベツ切り露店の仕込み秋日和
枯れ菖蒲株に花名の杭立てり
菊花展都立園芸高献花
帯解の衣装調べや女学生
見習ひの手の懸崖や菊花展
一本が先ず黄葉する欅かな
防火デー消防団員引くホース
大輪の花程美味と菊花展

  美子
鵙猛る自刃烈士の碑の欠片
立冬の水音は無し「小川歌碑」
マラソンの男冬陽を貼り付けて
それぞれの裸木にある肚の位置
菊花展眺める人の立姿
鳥声も落葉も無尽なる歴史
冬の陽を転がして待つ私鉄駅
冬の陽を脇挾みして鳥翔る
七五三添景として新都庁
冬の蝿暖めてゐる烈士の碑

  希覯子
滾滾と清正の井戸水の秋
秋深しイブ・モンタンの訃報聞く
もろもろの名札を掲げ菖蒲枯る
植え継ぎの代々木の樅に秋気かな
街騒の遠き代々木に小鳥来る
菖蒲谷漸く紅葉はじまりぬ
手洗所と和英標識実紫
千歳飴曳きづる参道長さかな
初に聞く菊鑑賞の柱三つ
地に還る落葉に無情三和土径

  重孝
七五三今日だけ僕はお殿様
神宮は色とりどりに紅葉色
立ち姿どっちが綺麗と菊の花
手を引いた親が着飾る七五三
七五三妻の姿に陽まぶし
薄暗き冬の冷たき清正井
玉砂利を踏む足元に舞う落葉

  内人
七五三わきで雲水一人ごつ
蓮描く筆先走る小春かな
四阿に蓑虫ぶらり昼寝かな
七五三鼻をすすりて宮参り
「洗心」という白菊に遊ぶ蜂
七五三主役はママか辻が花
菊づくり虫食ひ跡に小言いふ
振袖とミニが行き交う菊花展
立ち枯れの菖蒲に流る清正井