140回原宿句会
平成13年2月9日


   


  東人
残雪や鯖街道に廓跡
浪人髯伸ばし放題寒の明け
牛飼を見送る土手や節の忌
蕗の薹摘まれてパック曇らする

  千恵子
ざはめきのぴたりと止みて大試験
臘梅の溶け出しさうな日和かな
節忌や全文ルビの初版本
寒明けの川に階調生れてをり

  白美
ふつくらと焼けてオムレツ春来る
寒明けの小高き丘の観覧車
蕗の薹常より丸き姑の背
残雪や柄に手の窪み節の忌

  筝円
背なの子の帽子目深に蕗のたう
畑にまだ色の戻らず節の忌
広すぎる空見上げをり蕗の薹
寒明けや出荷待ちたる鬼瓦
灰色に蟠るもの雲凍てり

  正
松園の鼓の音や寒明くる
母屋より産声聞こえ蕗の薹
曲屋に子牛生るる節の忌
初午や揚げは薩摩の徳永屋

  希覯子
ポケットに帰りの切符大試験
今年また道祖神裏蕗の薹
節忌や全文ルビの初版本
  (聞けば主宰も総の人
蕗の薹御苑の垣の内外に

  和博
一叢の木立二色に吹雪やむ
蕗の薹子安地蔵に供へらる
五指に折る受験の果ての悲哀かな
木々の間につぼみの匂ひ寒明ける
泥濘に駒駆け始む節の忌

  利孟
蕗のたう吉の神籤を懐に
深爪の痛みきりきり針供養
テルモスのぬるき紅茶や大試験
節忌の雪ほの残る分譲地

  翠月
摘む人を待つ雨あとの蕗のたう
小説を読みて目を閉づ節の忌
指先に殻のざらつく寒卵
寒明けの暦につられ開ける窓

  美穂子
竹籠で野を運びけり蕗のたう
寒明けや爪色紅きピアノ弾き
余白無き手帳の文字や節の忌
大欠伸隠れてもらし受験の子

  武甲
受験子の縁起をかつぐ夕餉かな
言い訳の虚礼廃止やバレンタインデー
どの家も色なきままに節の忌
舌で知る旬の苦みや蕗のたう

  明
残り湯にぬくもり微か寒の明け
路地裏に黒き残雪へばりつく
蕗のたう濡葉押しのけ一人立ち
節忌に土の香乗せて風渡る
清記用紙1枚目不明のため10句欠けています
情報提供のほどよろしくお願いします