150回原宿句会
平成13年12月11日


   

   東人
而してセロリの葉つぱ煮込みけり
この尼で絶える血統沢庵漬
親も子も生来寝坊花八つ手
掌を返し綾取りの蝶放ちけり
屋台来て近火見舞のびらを貼る

   筝円
セロリーを食して少し大人ぶる
火事場より残らず救ひ出すカルテ
沢庵で流し込みたる嫉妬心
ひよつとこの口して童女綾取りす
新宮と母妃の笑顔日記買ふ

   利孟
セロリに塩添へてバーテンダーの黙
あやとりの立てては梯子寝せて橋
沢庵の山盛笑ひ声添へて
街灯の点き火事跡の広き闇
蕎麦を掻く妻の厨の隙盗み

   千恵子
セロリ食ふ今日の運勢凶と出て
綾取りや口先で差すとつかかり
石運ぶだけの手伝ひ大根漬け
飯桐の鳴らんばかりに実も房も
火事鎮火野次馬現の顔戻す

   美穂子
沢庵や繰り言多き人ばかり
あやとりの指の記憶の橋渡る
種明かすマジックショーや日短し
父の亡き子がセロリ噛む音立てて
仮案内揺れて小火後の診療所

   武甲
沢庵漬仕舞ひ囲む碁盤かな
味を変へ手を変へ食すセロリかな
綾取りを覚えマジシャン気取りかな
手づくりのアロマテラピー冬至風呂
炊き出しの声掛け合ひて火事見舞

   希覯子
綾取りや箒の先は知らざりき
セロリの葉コップに育て厨妻
牡蠣船を繋ぐ鉄鎖に牡蠣育つ
沢庵石代用品にして重き
晝火事や電車徐行の笛鳴らす

   白美
猛禽の眼をし青年セロリ咬む
嫁入りの荷にひつそりと沢庵石
綾取りの橋駆け抜ける夢の風
鋭角の木片ばかり冬の浜
遠火事や嬰を孕む妻の隠れをり

   明
沢庵に流るる味覚祖母の樽
火事消えて巷さまよふ又一人
食む音のはずみて軽きセロリかな
塀なして朝日浴びたり干大根
綾とりや恋の通ひ路定まらず

   翠月
遅れ来て呆然と立つ家の火事
襟立てて風聞く夕や懐手
早起きの身を清めんとセロリ噛む
新沢庵最初の味見母にこり
おしやべりの続く綾取り三姉妹