151回原宿句会
平成14年1月9日


   


  東人
富士山頂の縁くれなゐに寒に入る
殿は箱根を越せず絵双六
臘梅や外厠無き東慶寺
太箸で鯛の身くづし母に子に
粋筋の願掛けてゐる初天神

  美穂子
寒入りの駅に刺し子の小座布団
寒に入る屋根に動かぬ風見鶏
寄り道は甘味処へ初天神
膝頭ぐるりと囲み絵双六
太箸に墨色清き旧字の名

  白美
太箸や猫の座に猫留まりて
古書店をのぞいて帰る初天神
二折りで終る戦場絵双六
凧一つ飾りて立てる大木立
寒の入り幣まつ白な社かな

  千恵子
持ち駒にボタンいろいろ絵双六
きゆると鳴る帯の固さや初天神
雲間洩る陽は枯野へと階をなす
竹裂ける音を背に受け寒の入
頭も先も無き太箸のただ白く

  利孟
花占は来るといふ人柳箸
初天神医工法文受験絵馬
寒の入り蟻の巣に似て地下ホーム
賽を振る後は子任せ絵双六
お百度を踏むかに路地の雪掻いて

  希覯子
疎まるる筆墨の文字初天神
絵双六知らぬ宿場を道中す
校門の鉄扉の軋み寒に入る
太箸や使ひ試しに豆抓む
読初は英字新聞辞書欲しき

  筝円
太箸の袋の名前滲みをり
木を透かし低きにあがる冬花火
絵双六季節ちりばめゆく道中
初天神今も変らぬ神だのみ
夢破る未明の地震寒に入る

  正
初天神梅ヶ枝餠を買うて来る
髯剃りて肌荒々し寒の入り
振出に戻るこの世や絵双六
看護婦が笑顔で配る祝箸
なにはさてドンペリニョンに年を祝ぐ

  武甲
親と子の長き祈りや初天神
ヒーローの駒で勝ち抜く絵双六
水の無き児童公園寒に入る
太箸ですぐる老舗の珍味かな
帰省路を滞らせて寒波来る

  翠月
寒の入りごつた煮の鍋辛き味
待ちの忍牛が教へる絵双六
初天神絵馬三枚の願ひかな
歯触りの楽しみもあり鉄皮かな
太箸やにこと目配せ二人膳

  古川
ぬくもりのひときは恋し寒の入り
枝極め晴の舞台や出初式
先端にややのためらひ祝箸
絵双六敗れて父の影薄し
芋賈ぐテープ回して初天神

  和博
上がりまでまだ時ありや絵双六
太箸や問はず語りに日もすがら
まつさらの幟はためき初天神
白鳥のさざなみを連れ遊弋す
寒の入り軋む音する鹿威し