第170回原宿句会
平成15年8月7日

   
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  和博
闇のやや押し退けられて流燈会
大波止に混み合ふ船や流燈会
一葉落つ今生の時を刻みつつ
秋茄子のたつぷり蔵しす日のかけら
色褪せし畳半畳大西日

  希覯子
精霊舟和夫和子の名の多き
秋茄子や富士壺からむ竹支柱
草いきれ乗せ園丁の猫車
桐一葉建仁寺垣新しき

  翠月
矢絣の茶立て女や桐一葉
秋茄子を漬けし話や若女将
懇ろに精霊送る老女かな
若妻の髪を御下げに梅雨晴れ間

  正
秋茄子や女房は夫を尻に敷き
千仞の谷に虹置く大瀑布
桐一葉落ちて政局動き出す
さんざめき果ては闇路の精霊舟
雨上がり蜩しげき夕餉かな
  白美
髪切って夏山やけにむさくるし
寄り道もせで燈篭の流れゆく
秋茄子や調度の入りし婿の部屋
桐一葉落ちて棟割長屋かな
壁を向き復習ふ篠笛藍浴衣

  美穂子
流れ出て精霊星になるばかり
重きドア軋む聖堂一葉落つ
夏の夜やぐるりと長き牛の舌
ひつそりと色漲らせ秋の茄子
朝顔の中に魂五分の虫

  利孟
短夜やアイスペールに溜まる水
木となりて葉には疲れの秋茄子
桐一葉常は灯の無き葬祭場
数灯し暗き精霊流しかな
須弥壇の涼しき闇を焼く護摩火

  筝円
表札の文字に生き様桐一葉
ゆつくりと生きて精霊流しかな
河童忌や家族に見せぬ仕事の目
虫喰ひの葉に秋茄子の深き艶
勘三郎せんべいのこげ雷雨過ぐ
比呂史
古漬けに歳足し燈籠流しかな
桐一葉刻を従がへ落ちにけり
秋茄子の紫紺の水を弾きけり
陽に絡み合ひて煌めき黒揚羽
秋空や十字架に浮く青き錆