第182回原宿句会
平成16年8月3日

   
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  白美
水飯や日向訛りの人と添ふ
置き去りにされたる想ひ魂送り
ナイターや声をからして球団歌
わが家はほんに田の字よ渋油団
藻の花やかはるがはるに子の覗く

  美穂子
怪談を聴きし夕べの洗ひ飯
ナイターの影なく動く投手かな
クーラーを出て外界の揺らめきぬ
送り火や母の声して風過ぎる
布袋草波紋に伝ふ風の揺れ

  希覯子
船頭の棹が教へる花藻かな
名水の郷にいただく洗ひ飯
二世帯の連結官舎木槿咲く
地下鉄の地上に現れてナイターへ
急ぐとも送り火跡は踏まず行く

  和博
送り火の先ず大文字の一灯より
延長のナイターの果て児の重し
水飯や母の漬けたる小粒梅
極暑かな眼に力ある不動の図
百日紅平たき屋根の団地群

  武甲
鉄橋のアーチの中の遠花火   
送り火や屯所に残る刀傷
かけ汁を味噌で仕立てる洗ひ飯
ナイターの「清原」コール腑に響く
ボランティアの沼に藻の花よみがへる

  正
凌霄花線路の脇に撒水器
藻の花や誰にもありし浮き沈み
水飯や戦中戦後知らぬ嫁
ナイターの勝敗分ける浜の風
送火のあとのしじまや父母の声

  利孟
足下にへばりつく影灼けるなり
藻の花や置き石伝ひ渉る川
ナイターの風船悲鳴あげて飛ぶ
苧殻火の辻帰る間も無く細る
到来の瓶の菜選り洗ひ飯

  千恵子
風上に立ちて送り火守りをり
暮れ残る空へナイター灯ともせる
濡れてゐる雄牛の瞳雲の峰
正座して寺に水飯いただけり
白絣父の背丈を越えられず

  美子
水飯や山の神から貰ひ水
藻の花や天水桶に飼ふ泥鰌
出先より直接帰宅と言ひてナイターへ
送り火や苧殻の先を墓所に向け
犬塚へ提灯提げて魂送り