第28回原宿句会
平成4年10月23日

   
兼題 蓑虫 花野 唐辛子
席題 小春日


            東 人
樽に浮く種の偏平唐辛子
鮨桶にのこる蝦の尾小六月
雨足を音ではかりて花野かな
蓑虫の蓑口づくり足づくり

            利 孟
道標当てにならざる花野原
蓑虫や勝って背負わせるランドセル
皺伸ばし点ける煙草や小六月
薄き匙ネシアの酢漬唐辛子

            美 子
風を聴く蓑虫蓑を揺らしつつ
唐辛子赤極まれり過疎の村
したたかな蓑虫蓑を侘しくす
振り返る花野に友のいるごとく

            千 恵 子
小春日や部屋いっぱいの仕立物
雲過ぎて花野再び輝けり
蓑虫や空き家に残る女下駄
唐辛子雨音弾いてつやめけり

            健 次
色失せし景色に干さる唐辛子
木道を譲りて眺む花野かな
何処より茎集めたる蓑虫や
小春日に実習田の米児童食む

            希 覯 子
異国種に和種が織りなす花野かな
蓑虫の寝袋をもて鎧ひけり
神を守り農を守りて唐辛子
小春日や歩行者天国減りしまま

            内 人
山鳥の空丸く切る花野かな
水掛ける地蔵の前に唐辛子
蓑虫や昨日の位置で蓑を干す
ただ一人歩む花野の空高く

            玄 髪
窓飾る成都の街や唐辛子

            京 子
陽はあふれ軒端に華やぐとうがらし
小春日や刻は動かずバッハ聴く
みの虫のあやふいブランコ雨あがり
花野ゆき花の名告げしひとのこと

            白 美
蓑虫の蓑並びたる子の小箱
山の端の雲いろむらに花野かな
妖精のオランダ靴か唐辛子

            武 甲
蓑虫や願かけ結ぶ捨て御籤
小春日やあかり障子の影長し
還暦の健脚競ふ花野かな
紅莢の燃えて艶増す唐辛子

            香 里
花野来て銀のバレッタ光りけり
蓑虫や人にゆられし風にゆれ
一粒も赤々辛し唐辛子