兼題 梅酒 玉葱 蠅 席題 緑蔭 |
東 人 緑蔭や風のもち去る日のかけら 玉葱のふくらみ露は安房は雨 住みついて仔犬離れぬ蝿一匹 ほかほかと梅酒の梅の種の皺 白 美 腹薬なりと貼り紙梅酒瓶 緑蔭やアンの青春回し読む 夜の戸を開けて一匹蝿逃がす 不意の客玉葱晒す竹の笊 美 子 飢餓の子の眼の蝿の動かざる 緑蔭に見え隠れする白き帯 玉葱を厨の軒へ吊るし置く 屑梅で作りし梅酒飲み頃に 利 孟 太梁や湿り気多き蝿の口 手つかずのままの梅酒と転勤す 玉葱の嵩たっぷりとサラダバー 緑蔭や獅子の描かるる警備楯 |
千 尋 古梅酒下戸の大家にふるまへり 緑蔭や予鈴で走る一限目 皮ごろも落とし玉葱透きとほる 尾根づたひ白きケルンに蝿光る 武 甲 玉葱の皮むく父の非番かな 老い知らぬ母の早業蝿を打つ 湯上りの体を冷ます梅酒かな 緑蔭のベンチで息抜く外回り 法 弘 大阪は十三の蝿かまびすし 緑蔭に来て一輪車横倒し 梅酒ソーダ人妻とうちとけてをり 玉葱剥くだんだんどうでもよくなって 千 恵 子 髪冷えるまで緑蔭に憩ひけり 蝿止まるテレビ画面に美男かな 梅酒飲む明日は祖母の墓訪はな 玉葱を刻んで暮しに倦みてをり |
千 里 玉葱の青筋ありて白きこと 夕雲や玉葱刻む男あり 逃げ出よ硝子戸に挟まれし蝿 夕暮れや単身赴任ハエが友 浄 硝子戸に蝿が頭突くや雨上り 緑蔭や二人でごろりウォークマン 嫁姑涙にじむよ梅の酒 カタカタと刻む玉葱塾通ひ 萩 宏 鎮座する流しの奥の梅酒瓶 緑蔭に揺れる陽射しや読後感 手で煽ぎ蝿に逃げ道指し示し しゃりしゃりの玉葱誘ふ透き小鉢 希 覯 子 梅酒棚壜になで肩怒り肩 軒下に玉葱干さる振り分けに 蝿叩きマガジンラックの場所を得て |
健 次 飛ぶ蝿に剣豪真似て箸を出し 玉葱や土を押し退け頭出す 腹這ひて飽きず虫追ふ緑蔭に 実を狙ひ長箸で突く梅酒かな |