第74回原宿句会
平成7年10月23日

   
兼題 紫苑 初紅葉 秋寒し
席題 蛇穴に入る

        

            東 人
その下に水漬く象岩初紅葉
秋寒や風呂敷膝に待つ廊下
メドゥーサの髪より抜けて蛇穴へ
花屑をこまめにこぼし紫苑咲く

            利 孟
花紫苑駅に仕切りの無き厠
秋寒や書き込み多き式次第
秋寒し日焼けの色の絆創膏
蛇穴に入るやなびけるアドバルーン

            白 美
公園の埴輪二体に初紅葉
花紫苑映写機まはる児童館
秋寒や残り一掬琥珀酒
穴に入る蛇に今夜の軒を貸す

            翁 莞
音もなく蛇穴に入る旅疲れ
秋寒し引く腰掛けの熱き燗
夕映えに浮きし繁みの紫苑かな

            義 紀
紫苑咲き今日定年の守衛かな
穴惑きのふの夢の続きなど
初紅葉老駅長の大欠伸
うそ寒や工事現場の日曜日

            健 次
紫苑咲き背中はバーを揺り落とす
秋寒し書類の山に埋もれ居り
蛇穴に入り高き枝剪定す


            京 子
山藤のからむに任せ初紅葉
穴惑ひチロと見せたる舌の先
秋寒し訃報を載せて回覧版
主なき庭に紫苑の丈高し

            希 覯 子
継ぎ足しの支柱短し紫苑咲く
秋の蛇「蝮注意」の文字うすれ
秋寒し新車の都電和やかに

            美 子
見ると無く紫をん眺める通夜の席
秋蛇の板塀打ちて逃げにけり
赴任地に腰据ゑて見る初紅葉
御供物のどら焼賜ふ秋寒し

            千 恵 子
秋寒し僧の出てくる骨董屋
美しき人の訪ひ来て紫苑かな
穴に入る蛇の眼の眠たかり
初紅葉拾ひて林ぬけにけり

            法 弘
石置いて渡る谷川初紅葉
ため息の似合ふ女に紫苑咲く
秋寒し花札の字のあかよろし


            博 道
何事もなかりしごとく蛇穴へ
紫苑花も咲き戸惑ふ日よりかな
秋さむしやや足ばやのとおり道