第97回原宿句会
平成9年8月4日 赤坂アビタシオンビル

   
兼題 原爆忌 凌霄花 玉蜀黍
席題 羅


  東人
命なきものの影濃し原爆忌
羅や紅うすくひく昼の席
半生は後家を通して凌霄花
唐黍の芯は捨てられ敗戦日
テーブルに並ぶナプキン蝉時雨

  健一
黙祷のサイレン長き原爆忌
たまさかに紗を着こなせり夜の道
夏帽子鏡の前の被り初め
唐黍の穂波の続く村はづれ
凌霄の群がり咲きや寺隠す

  千恵子
抽出に動かぬ時計原爆忌
もぎ取りし玉蜀黍の薄湿り
凌霄や片蔭続く旧街道
羅や女五十の疲れ見せ
愛語聞く眼に蛍光らせて

  希覯子
お手植えの松を縛りて凌霄花
凌霄花物干し男女別
唐黍を食みつつ歩く北の旅
あまたなる友の逝きし日原爆忌
羅や聖像前もはばからず

  正
羅の歌姫に逢ふ楽屋口
夢千代の日記に残る原爆忌
ざはざはと玉蜀黍畑を風渡る
万緑の水に溶け入るドナウ河
楽劇のプリマ思はす凌霄花

  利孟
髭噛みしまま唐黍の茹で上がる
品書きの壁に鋲止め凌霄花
フラッシュで和らげる影原爆忌
羅や赤坂辺り灯の入りて
甲羅干す乳房両手に抱へ込み

  龍堂
石笛を吹きて縄文夏祭
水底の石を棲み家に鮎憩ふ
もぎたてのとうもろこしが馳走かな
十六夜の人の言の葉やわらかき
彷徨す御魂鎮めむ原爆忌

  笙
原爆忌島を二分の滑走路
浜風に顔をそむけて凌霄花
汗取りの薄紅にほう薄衣
大没日墓地は坂道蝉時雨
背伸びして未だ実らず玉蜀黍

  義紀
黙祷の球児のニキビ原爆忌
サングラス女の煙草細きかな
噴水や未来を語る二人居て
とうきびや海は広いな大きいな
凌霄や廃線決まりし無人駅

  白美
嬰児の油團で寝入る昼下り
凌霄花歌舞練場の桟敷拭く
掌を零れる水の原爆忌
とうもろこし皮の隙き間に入りを見る
羅をはおりて闊歩遊歩道