第271回四天句会
平成24年3月21日

   
兼題 鶯 チューリップ 春の風邪


  利孟
雛の夜のシャンパン音をひそめ抜く
鳴き捨ての初音二声ばかりにて
おしやべりのはづみ剥く貝浅蜊売り
春の風邪乳を離さぬ児を抱いて
畝続きかぎり一色チューリップ

  義春
青空に溢る丶辛夷着任す
丘に吹く風を招きてチューリップ
枕頭に冷めたるお粥春の風邪
三河路の海辺の朝や浅蜊汁
うぐひすの澄みしテノール村渉る

  武甲
どの絵にも大きはなまるチューリップ
春彼岸墓銘に明治震災記
稿債の催促メール春の風邪
鶯や三渓園の池に塔


  比呂志
鍋底を鳴らし浅蜊の開く口
テレビ付け放し蛙の目借時
一日をただ何となく春の風邪
鶯の声に集ひて御苑かな
はちきれんばかりに膨れチューリップ

  恵一
アオザイの女組む足春の風邪
鶯や門に駆け入るランドセル
手渡しに回転寿司の浅蜊汁
仁和寺に風闇花の降りしきる
花すべて捨てて球根用チューリップ

  あやの
ひと掴みおまけをくはへ浅蜊売り
明日期末考査てふ夢春の風邪
うぐひすやひとり売り子の直売所
春暁や廂をたたく雨の音
病棟の庭それぞれのチューリップ

  雨竜
チューリップ花杯の茜色
鶯の声のひねもす城の跡
春の風邪靴を濡らして小糠雨
春の雨濡らし袴の裾模様
潮干狩り浅蜊ひとつで終りけり