第3回句会 平成8年8月3日
大谷方面吟行@サイクリングセンタ

森利孟
緑陰に入リイーゼルの向き探す
露草や薄き濁りの兎の目
山百合や旧村名の慰霊塔

会田比呂
水の濃き禁漁池や竹煮草
口中の願ぎ事一つ落し文
鐘楼の下堀り通し沢の水

池田孝明
夏の雨慈母観音に母偲ぶ
夏寒や童子の像も冷えにけり
秋近し野草も色を落としけり

伊藤均
香水や走る車窓に小雨降る
山百合や仰ぎ見上げる平和像
蝉鳴けり多気の石段苔生して

小又美恵子
今朝の秋観音やさしく緑抱く
水際や小鳥と子供と蝉のこゑ
山百合や鼓を打つ堂へ足軽し

茅島正男
雑木山空虫カゴに子らねだり
雨しづく頭うたれし杜の杉
夏寒や柄杓置きたる手水鉢

小林美智子
薄日さし苔のむすまま石燈籠
万緑の中人の声吹き抜ける
湿り気を含む岩肌蔦茂る

田中功一
夏の朝岩山の中大谷寺
夏木立水子供養の仏たち
夏の山ダムの水面に鳥の影

田仲晶
草涼し螺鈿びかりの人造湖
家鴨過ぐ水の万緑揺らしつつ
日鼻なきかんばせ涼し千手仏

高島文江
石山に石のゑくばや蔦茂る
磴百段杖借り登る木下闇
夏萩をゆするるほどの風ありき

手塚須美子
緑濃き石段見上げる夏帽子
蝉声や虫追ふ子らに負けぬなり
ハンカチにそつと包みし恋みくじ

手塚一郎
苔清水ささやくままに聞きいりし
時惜しむ鬼となりをり蚊をはらふ
ひぐらしの声に合はせて舞ふ蛾かな

床井憲巳
夏草や風雨に耐へし大谷仏
赤川の釣り子の声や露涼し
二羽の鳥波紋小さき蝉時雨

永松邦文
多気不動太鼓の響き夏の霧
遠目にも足急がせる氷旗
襟足に石段の風心太

福田匡志
湿り香やひかるせせらぎ杉落葉
階のわらじ権現涼しかり
み仏をふわり見つめる百日紅

堀江良人
百日紅雨に洗はれ冴え返る
抹茶色帯びしきざはそ夏木立
石仏の受けては返す蝉の声

三澤郁子
森林の風に乗り来る蝉の声
近道や前をぬめりと蛇進む
涼風に吹かれ登りぬ石の段


『編集後記』
すぎなみき句会はじめての吟行でした。
大谷観音・多気不動・森林公園