第15回 平成9年8月22日
文化センター


会田比呂
白杖の音からからと夏果つる
日ぐらしや観音厨子の片開き
天の川子の三尺の皺伸ばし
かなかなや夕勤行の堂つつむ

岩本充弘
一村の竹の細工や鹿の声
蜩や昔鍛冶屋の鞴小屋
蜩や大権現の門潜る
天の川亡父の行先聞かざりし

小又美恵子
天の川軒へとなだれ峡の宿
廃山の墓石に小さき草の花
蜩や飯の香りの家に満つ
階全部大安売りの盆提灯

片山栄機
朝顔や下駄で散歩の湯治客
カラス鳴くねぐらは広し天の川
コスモスの一本残る宅地かな
蜩の声遠ざかる登山道

茅島正男
小振りでも威張って見える初サンマ
かなかなや球児の夢の終りけり
爪立てて柿の熟しを計りけり
竹の先どこへ流るる天の川

川村清二
天の川ブラツクホールの記事があり
城山の三角点や赤蜻蛉
蜩の抜け殻残し声となり
のの字書くことを教へて蜻蛉採り

田仲鴻
天の川ヘールボツプの先にあり
かなかなの声を目がけて走る子ら
山小屋の夜空を飾る天の川
木の幹に蜩見つけて忍び足

田仲晶
閑日のリフト涼風掬ひ行く
天の川土に還せる余り乳
ひぐらしや無人駅舎に灯の入りて
峡の空袈裟懸けにして銀河濃し

高島文江
蜩や摺粉木回す滑らかに
天の川欅の影のくろぐろと
蜩や八雲尋ねる旅プラン
秋涼し和菓子きれいに蔵の店

永松邦文
昼酒を舐めつつ手繰る走り蕎麦
かなかなや塾より子供あふれ出て
かなかなのかなかなと鳴く破璃の酒
風の来て蜩の森暮れ残る

仁平貢一
天の川見ぬ夜の旅路思はるる
蜩の声で始まる厨事
叱りたる我子と見上げる天の川
蜩や村に一樹の大欅

福田一構
蜩やしづけさありて散髪す
風にのる囃子銀河に合流す
台風の余波しづまりて父忌日
蜩や剣の師匠の座り胼胝

堀江良人
蜩や独りで食する夕御飯
山峡の細き流れや天の川
天の川那須連山をまたぎけり
蜩やカノンの節で鳴き頻る

三澤郁子
瀬の音の聞こゆるごとき天の川
蜩の調べが好きなだけのこと
ひぐらしや径湿原へ岐れけり
蜩やコーヒーの香の広がれり