第14回 平成9年7月25日
文化センター


森利孟
夏空や空気小出しに風船屋
打ち水の辻より路地へ豆腐売り
フラッシュで和らげる影原爆忌
舟着ける棹の小使ひ菖蒲の実

会田比呂
あつばつぱ女に家事の休みなく
簀を張りて梁瀬の色の変はりけり
頂上に佇つ影短か夏の空
打ち水の一杓足の泥落とす

岩本充弘
尼寺の静かな広さ水打てり
夏空や太古の湖の藍さかな
万葉の夢夏空に三毳山
夏空や遠く延びたる牧の柵

小又美恵子
煩悩と僧より聞きし髪洗ふ
打ち水や風の生まれて畳這ふ
雷鳴や十六ビートの雨来たる
夏空や木綿シーツの糊強し

片山栄機
村の空とよめく祭太鼓かな
ソーダ水開ける音する通学路
終電を乗り越す駅の青簾
梅を干す匂ひ星座にかかりけり

茅島正男
土用干し狭きベランダ風止める
夕立ちや虎刈りの草整へし
打ち水や一気飲みたリアスファルト
たらひ水子供が揺らす夏の空

川村清二
打ち水やホース自在にあやつりて
夏空や行き交ふ顔の尾瀬ケ原
乱舞する源氏ホタルや思川
巴波川源氏平家でホタル狩り

小林美智子
電灯に押しつ押されつ山開き
咲き誇る駒草脇に小休止
歓声もため息もあり夏の空
打水や寝そべる犬の片目開く

田中鴻
打ち水や程なく燥く庭の土
帰宅して飲む一杯の冷酒かな
土燥く庭に打ち水夕涼み
夏の雲積乱雲の峰光る

田仲晶
大利根の水行き渡る青田風
余生かな弧を緩やかに水を打つ
芭蕉行き曽良の行く径夏の空
満天の星座にゆだねる梅筵

高島文江
押花を挟みし旅の書を曝す
水打ちて脇本陣といふ老舗
野兎の飛び出しさうな夏の月
夏の空雲真正面に向かひ立つ

手塚須美子
夏空に糊よく乾き白上布
打ち水や暮るる小道に訪ね人
夏の夜や声駆け廻る肝だめし


永松邦文
夏空や気流のままにグライダー
夏空へ竹刀の響き衝き抜けリ
タ化粧すませしをんな水を打つ
グングンと燐寸箱引く兜虫

福田一構
夜干梅雨遠のかす匂ひかな
木道の泉へとつづく夏の空
夕焼けや打ちたる水を友の踏む
夜干しする梅干の香の家に満つ

堀江良人
子供らの釣り具収めし木下闇
夏空や鉄橋渡る汽車の音
打ち水に気休め程度の風起きる
打ち水や仲居の白きふくらはぎ

三澤郁子
水打ちて辻また辻の城下町
山百合の香りの重し峡の雨
打水に月の光を貰ひけり
夏空を一人占めして旅終る