第49回 平成12年6月23日
アーバンしもつけ


岩本充弘
豆腐屋の点す朝の灯青簾
夏風に少女の気合い面面胴
次の世も人であれかし端居かな
黒塀の庭にトマソンあやめ咲く

大垣早織
郭公の声の近づく雨の朝
梅雨寒や回転木馬の瞳のうつろ
簾して悠悠自適といふ暮し
よく遊ぶ児の脚すらと端居かな

佐藤美恵子
梅雨空へ伸ばす子の掌の雨掴む
時を打つ音闇に染む端居かな
まどろめば静かに窓を打つ簾
簾揺れ窓から窓へ風走る

田中鴻
体には似合はぬ早さ蟇の舌
昼休みそろそろ終る深昼寝
庭手入れ終へて一服夕端居
脚触れる風に揺られて青簾

栃木昭雄
老母一人端居の歌は子守歌
青簾山また山を深くして
山すその古りし官舎や青すだれ
端居する老母の小学唱歌かな

福田一構
居酒屋の古き簾の風を恋ふ
稽古着の儘の少年氷菓舐む
農道の選挙演説雲の峰
晩学に夕暮はやしビール干す

へんみともこ
幸運の色は紺なり更衣
額の花歩く速さの塵芥車
豆腐屋の槽に灯の揺れ葭簾
巣立鳥路地の電線混み合ひて

三澤郁子
手くらがりほどの夕暮れ白薔薇
竹林に夏鴬の飽かず鳴く
夕端居飯炊きあがる電子音
隠れ沼茅花流しに明るめり

片山栄機
夕立が上がり野良犬出撃す
追肥して雨しみこみて端居かな
垣根越し犬静かなり青簾
あめつちを吸ひ育ちたる立葵

川村清二
戸に隙間なくて守宮の訪れし
端居かないつの間にやら妻が居て
夏暖簾くぐり女将の笑顔かな
縁側に洩るる鼾や古簾

とこゐ憲巳
名物の胡桃饅頭簾茶屋
明日朝の訓示を煉りて端居かな
夏至の日や水で割りたる麦焼酎
蛍火や揺るも揺らるも風任せ

仁平貢一
干渉はしない約束端居かな
端居して心はここにあらざりぬ
烏賊干して海女小屋の窓青すだれ
「入舟町」水辺窓際青簾

永松邦文
神ゐます杜の鎮まり夏至の朝
向日葵や肩組みあって登校児
息継ぎもせずに毛虫の草上る
蕎麦店の肩の高さの夏暖簾

堀江良人
小ぬか雨降りて非番の端居かな
日の落ちて風を引き寄せ青すだれ
街路樹の影のうすずむ朝ぐもり
毛虫這ふ妻の叫びに追はるごと