すぎ56回

  
第56回 平成13年正月26日
アーバンしもつけ

田中鴻
ネクタイを結ぶ鏡の指の胼胝
庭先をあちこち飾る福寿草
手の胼胝や服の繊維を引張りぬ
どんど焼きまづは炙りて人の顔

三澤郁子
虎落笛時計の音にあるしじま
那須五峰風の国なり虎落笛
星団のごとき街の灯虎落笛
しもつかれ土着の貌の新世紀

片山栄機
浮雲や二十一世紀の初明り
福寿草水辺に光遊ばせて
旅終へし人東国へ水温む
雪解水季節の扉開かせて

川村清二
一椀の若菜を数へ粥啜る
せい一杯黄の色きはめ福寿草
聞き慣れししかし眠れぬ虎落笛
胃のもたれ文句も言はず雑煮かな

とこゐ憲巳
宴果て古町通り雪明り
虎落笛聞きて官舎の独り風呂
蕎麦打ちの腰揺り打つや福寿草
ゆく人の距離のつかめず雪の道

栃木昭雄
金塊のごとくに咲いて福寿草
寝返りて眠る子供よ虎落笛
「歓迎」の湯の宿の札大津らら
寒稽古面紐ぴしと鳴らしけり

永松邦文
横顔のみな美しき弓始め
異常なしてふ当直の初電話
前向きに生きてゐる色福寿草
大寒てふキヤスターの七分袖

福田一構
初稽古初太刀の面を打ち込んで
恙なく子ら賑やかに雑煮餅
金色の日の香ただよふ福寿草
稽古着に着替へいただく七日粥

へんみともこ
福寿草屏風畳みにお品書き
虎落笛しきりに犬の吠えてをり
湯の滾る音の途切れて虎落笛
急かされて喪服縫ふ夜の虎落笛

堀江良人
前髪にからむ風花三姉妹
ストーブの炎を高め居り雪催
金屏風の如く堤に福寿草
風道の逆まく風や虎落笛