第６１回 平成１３年６月２９日
アーバンしもつけ
手甲に木漏れ日遊ぶ袋掛け
鴨足草石を重ねて犬の墓
越した闇抜け黒光る霊柩車
万緑や鍾乳洞の深き闇
とこゐ憲巳
カラカラと風を誘ひてラムネ玉
一人寝の心を乱し牛蛙
大鐔の帽子なびかせ袋掛け
小さめのグラスの冷酒芙美子の忌
三澤郁子
灯台の白は汚れて夏日濃し
からからと音の昔のラムネ玉
鷭の声雨にけむれる葦むぐら
枇杷の実の熟れて一枝たははなる
片山栄機
野ざらしに積まれて温むラムネ瓶
音拾ひ吹くハーモニカ半夏生
中元の折り目正しき包装紙
梅雨晴間作務衣に粉の手打そば
田中鴻
にはか雨待ちて終ひの袋掛け
遠富士の嶺の霞める袋掛け
ラムネ抜く音に手を打ち子供の輪
栃木昭雄
ラムネ玉転がしながら祖母唄ふ
時につま立ちて妻娘の袋掛け
袋掛け地平線まで脚立かけ
新じやがにバターの溶ける日曜日
永松邦文
原色のネオンの明滅夏の月
ローン返済残り三回夏期手当
「一流品」といひて夜店の万年筆
吹きこぼれ手皿に受けてラムネ抜く
ラムネ玉いくさを語る老教師
卒塔婆を小脇にはさみ白日傘
ベランダのまぶしきシーツ梅雨晴間
はまなすに風が風呼ぶ岬かな
堀江良人
蛍火に人の波寄る用水路
袋掛けする果樹園に歌流る
鯉はねる気配も見えず菖蒲池
地に落ちて身丈縮める毛虫かな