第65回 平成13年11月18日
栃木市吟行


利孟
山車の出て山車蔵番の懐手
灯をかかげをる間の釣瓶落としかな
山車留守の山車蔵に満ち秋灯し
弁慶の山車が静の道ふさぐ
小々濁りして秋水の鯉の川

信子
行く秋の夜店の灯り山車囃子
小春日や声八方に警護官
秋の川越え響き来る山車囃子
秋光に組み百年の矢倉山車
手古舞の鳴らす錫杖露けしや


軒内の静まり返り干し大根
ランドセル投げ出し光の氷割る
茣蓙に置く荷物弁当りんご狩り

ミヨ
頭領の皮の半天まつり酒
赤き実の風に磨かれ山法師
ライトアツプされ金色の老いちやう
秋昏れていよよ高まる山車囃子
包絡をとび出て栗の一人言

登美子
山車進む緋の龍舞はせ下げ幕に
先陣の山車より紅白餅撒かれ
白鷺のほうけ立ちする刈田かな
メロデイをアルトが唄ひ石蕗日和

清二
菊の香を抱き出陣の菊の武者
逆光にいよいよ燃えて紅葉山
飛ばしたる下駄は晴れてふ天高し

清子
町衆の登龍浮く秋袷
秋祭りの迷子をあやし警備員
夕暮れて山車の関羽も冷纏ふ
手古舞ひの鹿子で飾る祭髪
祭笠背中に稚児の馳け回る

ともこ
箸先を逃れて遊び出せる芋
干し上げて自縄自縛の芋茎かな
昼下がりの部屋にラジオと冬の蜂

芳子
手古舞のまなじりに紅秋祭り
蔵の街秋空飾る人形山車
江戸よりの山車絢爛と秋祭り
人を待つ駅前広場冬ぬくし
人に酔ひ祭りに酔ひてとろろ汁

栄機
長老の法被丈長秋祭り
打ち揃ふ人形山車の秋灯し
島覆ひ隠せる松や寒の雨
人魂の混じるかに揺れ流星群
浜焼きの牡蠣の煙の島めぐり

郁子
競たるお囃子秋の空へかな
秋うらら江戸の煌めく人形山車
名人の手なる「仁徳」木の葉髪
祭りの灯神武の鳶に届かざる
若衆のからだ斜めに曳ける山車
母の齢越えたる朝の霜柱

敬子
桜紅葉古老唱へる般若経
狛犬の眉根の苔や黄葉晴れ
秋の声茶店の軸の茶十訓
爽籟やすりよりてきし神の鹿
四阿に一人の娘秋澄めり
炯々と天狗の眼秋の峰
秋天や天狗の顔の鬼瓦

敬子
有三の故郷吾一の菊人形
仁王立ちして弁慶の祭山車
山車蔵に飾り提灯秋祭り
金の幣背に舞ふ静御前山車の秋
諫鼓鳥山車の太鼓に鬨告げる
仁徳帝山車より市勢ご覧なる
青い目の手古舞嬉々と山車をひく