第87回 平成15年9月21日

特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、
以下入選数で配列しています


会田比呂
濃き眉の示す血脈秋彼岸
秋時雨母の介護の匙加減
色鳥やインド舞踊は目で踊る

石塚信子
初紅葉女滝男滝の音和して
虫しぐれ宿打つ雨の音止めば
工事場にときに爆音秋暑し

泉敬子
四阿に主のなき杖法師蝉
石がみな仏に見ゆる秋彼岸
介護車の止まる山路の桔梗かな

大塚登美子
意気込みを筆に伝へて桔梗描く
風に乗る迷子放送青芒
さんざめく通学の子ら芒原

大貫美代子
西日中サイロに詰める風の息
届きたる芋の窪みの紅の濃し
野の風の擦る袖垣ききやう咲く

川島清子
光満つエルミタージュや爽やかに
金縁のイコンに見入る堂の冷え
秋うららマトリョーシカに似た売り子

標幸一
真南に赤星ひとつ秋彼岸
火祭りの炎の争へる富士の裾
朝霧に隠れて里の眠りをり

田中鴻
御料地の奥なる桔梗浄土かな
昏れてよりひときは高鳴くちちろかな
ほほえみの野仏囲む蔓珠沙華


とこゐ憲巳
あれこれと衣装に迷ひ秋彼岸
秋彼岸音立て飯の炊き上がる
見送りのデッキの黙や霧晴るる

栃木昭雄
秋彼岸猫の出入りの障子穴
新調の紺の背広や秋彼岸
花桔梗はやばや灯す母の部屋

福田一構
瀬に踊る姿に焼かれ下り鮎
をみならの串持て食らふ鮎料理
山門に罅割れあまた秋彼岸

へんみともこ
葭原のうねりに揉まる展望台
虫の夜窓辺に猫のうづくまる
漣の消すちぎれ雲秋の湖
石段の日のやはらかき秋彼岸

堀江良人
朝風に揺れのたをやか花ききやう
月に寄る火星を横切る機影の灯
湯治場のうたたねさます蝉しぐれ

三澤郁子
釣舟草水に残れる野のひかり
跳ねるだけはねて消えたる蟋?かな
男体山の嶺より湖へ霧しぐれ

森利孟
花の底までをまさぐり秋の蜂
秋彼岸吹かれてなじむ竈の火
二尾の鯊甘し深川飯の折