第86回 平成15年8月17日(日)
特選句は緑色太字で表示

会田比呂
片蔭やピエタのごとく子と坐して
鬼灯市うらうら抜けし路地小路
敗戦日天水桶に蓮育つ

福田一構
晩学の指もて洗ふ端渓硯
吾亦紅無人売り場に両替機
嬰なれどおはねは家系吾亦紅

川島清子
手付かずの絣一反竹の春
鼻緒擦れして追ふ姉や吾亦紅
ニューヨーク大停電
襲ひ来る闇にごろ寝の街残暑

石塚信子
拍子木の一打の高く祭果つ
折合ひてやはらぐ言葉氷水
県境の山路の橋や吾亦紅

三澤郁子
国宝の塔にかなかな時雨かな
ひぐらしの声のつながる那須郡
廃線の枕木の間の吾亦紅

田中鴻
送り火や将棋の駒の墓灯す
蜩の翅伸びきれず殻を出る
夕風の中蜩の鳴き競ふ

大塚登美子
蜩や廃校囲む杉木立
男体山の風に育ちて吾亦紅
蜩や旅折り返す無人駅

栃木昭雄
遷都論消えて那須野の夕蜩
蜩の鳴き継ぎ那須野雨上がる
夜明け前より蜩の鎮守かな

大垣早織
那須の野の風と遊びて吾亦紅
柿色の益子の壺や吾亦紅
蜩や影濃く落とす御神木

泉敬子
蝦夷富士の裾野男爵薯の花
背負籠のまとふ夕陽や吾亦紅
土用干し父の残せし剣道着

とこゐ憲巳
人の出を見張りて路地の吾亦紅
北鮮に核のシェルター吾亦紅
蜩や精一杯がこれくらい

標幸一
夕映えの光集めて吾亦紅
蜩の渓に鳴き満ち竿納む
風鈴を揺らせる風に日の匂ひ

へんみともこ
吾亦紅風を孕ませ伸子張る
地模様の宝尽しや秋袷
蜩や通夜の家に通る風

大貫美代子
吾亦紅売地に倒る区画札
蜩や夫の代にて閉づ老舗
干瓢をほしたる風の白さかな

森利孟
分け入りしあとは動かず蓮見舟
沓脱の脇を固めて蚊遣香
蜩や原爆ドームに万の鶴

すぎなみき句会に利孟は四街道から宇都宮まで出かけます
新幹線か、車になるのですが、17日はどっちにしても、
帰りがお盆での帰省客のUターンで動けないだろうということで
一泊することにしました。どうせなら温泉でと、一緒してくれる
人を募って、奥日光泊りとしましたが、温泉と酒のつもりが
句会付きのお泊りとなりました、俳人は俳句好きだ!当たり前か?


番外句会:at 日光湯本温泉・ふぉーれすといん実の屋
とりあえず、一風呂浴びて、夕食、句会直前の光景
句会は席を移しての当季雑詠5句出しの通常の形式
撮影:大類匡光(写っていませんが出句してます)
比呂・ともこのご両人、不参加ながら投句してくれました

この「実の屋」は奥日光を訪れるプロ、アマの写真家の基地
言うてみれば、風景、山岳写真家の宿であります・・
ともうしますのも、専務兼番頭の匡光さん、知る人ぞ知るの
本格派カメラマンで、撮影ガイドの相談にも応じてくれます
そこでやがて、実の屋を「写真家と俳句詠みの宿」に変え
てやろうかと目論むほどに、句会にも呑会に手頃な宿です


手術終へし医師の饒舌冷やし酒    一構
箱庭に李杜を配して無学なり     比呂
軒提灯風の梳きたる飾り房      ともこ
芋の葉の面のかけずる鬼ごつこ    鴻
飴色のブローチとして蝉の殻     郁子
上出来と隣に分ける新生姜      鴻
吾亦紅侍塚に隠れ井戸        昭雄
泥濘に敷き込む砂や今朝の秋     ともこ
はんなりと闇受け入れし白芙蓉    比呂
老いてなほ膝やはらかに夏稽古    一構
渡良瀬の二両の電車吾亦紅      匡光
実の屋礼賛
修験者を癒す隠し湯鹿の宿      昭雄
青柿の落ちて正座の足くづす     郁子
特急に空席二つ夏休み        一構
木槿咲く路地寺町の寺境       ともこ
新涼や花舗の灯りのほの青し     郁子
線路錆び果つる辺りの赤のまま    郁子
NHKカメラマンX氏引退
手擦れたる重きカメラや大花野    匡光
廻されて眉いや太き佞武多武者    利孟
朝涼や藍の手甲の野菜売り      利孟